公認心理師国家試験の出題傾向分析
公認心理師国家試験は、心理学の基礎理論から精神医学、法制度、多職種連携まで、心理職に求められる知識を横断的に問う全154問の試験です。一般問題1問1点・事例問題1問3点という配点構造が最大の特徴で、事例問題の出来が総得点を大きく左右します。直近の第9回は受験者2,400人・合格者1,441人で合格率60.0%と、第7回の76.2%、第8回の66.9%から2回連続で低下しました。現任者経過措置(Gルート)の受験が第5回で終了して以降、受験者は2,000人台で推移し、試験としての性格も安定期に入っています。合格基準は総得点の60%程度を基準に難易度で補正され、第9回は230点満点中136点以上でした。
合格率と合格基準
| 回次 | 実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 第9回 | 2026年 | 2,400 | 1,441 | 60% | |
| 第8回 | 2025年 | 2,174 | 1,454 | 66.9% | |
| 第7回 | 2024年 | 2,089 | 1,592 | 76.2% | |
| 第6回 | 2023年 | 2,020 | 1,491 | 73.8% | |
| 第5回 | 2022年 | 33,296 | 16,084 | 48.3% | |
| 第4回 | 2021年 | 21,055 | 12,329 | 58.6% | |
| 第3回 | 2020年 | 13,629 | 7,282 | 53.4% | |
| 第2回 | 2019年 | 16,949 | 7,864 | 46.4% | |
| 第1回 | 2018年 | 35,020 | 27,876 | 79.6% |
受験者数・合格者数・合格率は各実施機関の公式発表値(出典)。合格基準の詳細・最新情報は必ず公式発表をご確認ください。
直近回(第7回)で出題が変化した分野
直近回(第7回)の総評
頻出分野ランキングと分野別対策
- 心理学基礎毎回平均 25.3問(全体の16%)
第7回20問→第8回24問→第9回32問と急増している最重要分野で、直近3回で計76問と全分野の中で最多です。知覚・記憶・学習・動機づけ・感情・社会心理まで基礎心理学の全域から出題され、頻出テーマとしては動機づけ(自己決定理論・フローなど、7PM105ほか9問)、注意・実行機能・ワーキングメモリ(8AM9ほか8問)、偏見・スティグマなど集団の心理(7問)が挙げられます。記憶や感覚・知覚も各6問と満遍なく問われています。範囲が広いぶん、実験パラダイムや理論の提唱内容を「誰の・何の理論か」まで正確に区別する学習が必要です。増加傾向が続く以上、この分野を後回しにする戦略は成立しません。学習時間の最大配分先と考えてください。
- 精神疾患とその治療毎回平均 18.7問(全体の12%)
直近3回で計56問と第2位の分野ですが、第7回20問・第8回23問から第9回は13問へと出題数が大きく動きました。それでも毎回2桁は維持しており、主要疾患の症状・診断・治療の知識は不可欠です。頻出は統合失調症など精神病症(7AM32ほか8問)、ASD・ADHD・LDなどの神経発達症(7問)、うつ病・双極症などの気分症(7問)で、この3系統だけで20問以上の蓄積があります。各疾患について、中核症状、経過、薬物療法と心理社会的支援の位置づけをセットで整理してください。事例問題では症状記述から疾患を推定させる形式が定番のため、診断基準の要点を事例文の表現と対応づけられるレベルまで具体化しておくことが3点問題の得点につながります。
- 発達心理学毎回平均 13.7問(全体の9%)
直近3回で計41問(16問→11問→14問)の主要分野です。特筆すべきは老年期・喪失・悲嘆のテーマが17問と、全テーマ中最多である点です(7AM17、7AM24など)。乳幼児期の発達理論だけでなく、生涯発達の視点、とりわけ高齢期の心理的変化・喪失体験への支援が重視されています。愛着理論や発達段階説といった古典は前提知識として押さえたうえで、老年期の認知変化、悲嘆のプロセス、高齢者への心理的支援を重点的に学習してください。高齢者関連は医療・保健領域や福祉領域の事例とも接続するため、ここへの投資は分野横断で回収できます。発達検査・発達支援の知識は心理アセスメント分野とも重なるので、相互参照しながら整理すると効率的です。
- 公認心理師の職責・倫理毎回平均 12問(全体の8%)
毎回11〜13問と安定して出題される、この試験の性格を象徴する分野です。多重関係の回避や秘密保持といった倫理原則に加え、コンピテンシーと反省的実践(7AM34ほか6問)、緩和ケア・産業・児童・危機対応など領域横断の倫理的連携(7AM42ほか6問)が繰り返し問われています。知識としては比較的短期間で仕上がる一方、事例形式で「このときどう動くべきか」を問われると、原則の理解が浅いと選択肢を絞れません。公認心理師法の義務規定を正確に押さえ、連携・紹介・報告の判断基準を事例で運用できるようにしておくこと。配点3点の事例問題に組み込まれやすい分野であり、得点効率は全分野でも屈指です。
- 心理アセスメント毎回平均 11.3問(全体の7%)
毎回11〜12問で計34問と、出題数が最も安定している分野のひとつです。頻出はWISC・WAIS・WPPSIなどの知能検査(7AM61ほか6問)と、不安・抑うつ・パニックなどの症状評価尺度(7AM19ほか7問)です。各検査について、対象年齢・測定内容・結果の解釈枠組みを正確に区別することが第一歩で、名称の暗記だけでは事例問題に対応できません。事例では「この主訴・年齢にどの検査を選ぶか」「この結果をどう解釈するか」という運用力が問われます。テストバッテリーの組み方や、検査結果のフィードバックの原則まで含めて整理してください。精神疾患分野の症状知識と組み合わせて出題されることが多く、両分野を並行して学ぶと相乗効果があります。
- 心理療法・心理支援毎回平均 11.3問(全体の7%)
毎回10〜12問で計34問の分野です。認知行動療法をはじめとする主要な心理療法の理論的立場・技法・適応を横断的に問われます。学習のポイントは、各療法を「創始者・理論的前提・代表技法・主な適応」の4点セットで整理し、混同しやすい技法名を確実に区別することです。事例問題では、クライエントの状態像に対してどの支援方針が適切かを選ばせる形式が中心のため、理論の知識を支援場面の言葉に翻訳する練習が欠かせません。精神疾患とその治療の分野で学ぶ各疾患への標準的な心理社会的支援と重ねて学習すると、知識が立体化します。過去3回分の該当問題を療法別に分類し直すと、問われ方の型が見えてきます。
- 教育領域毎回平均 10.3問(全体の7%)
毎回9〜11問で計31問と、5領域の中では最も出題数が多い領域です。頻出は学校制度・教育法規(7AM46ほか6問)と、いじめ・重大事態・学校危機への対応(7AM51ほか6問)です。スクールカウンセラーとしての実務を想定した事例が多く、チーム学校の考え方のもとで教員・管理職・外部機関とどう連携するかが問われます。法規系は、いじめ防止対策推進法や教育相談体制の枠組みなど、根拠となる制度の正確な理解が必須です。不登校・いじめ・虐待が絡む事例では、福祉領域の児童相談所関連の知識と接続して出題されることもあるため、児童福祉との連携の流れまで含めて一体的に学習してください。
- 福祉領域毎回平均 9.7問(全体の6%)
毎回8〜12問で計29問の領域です。最大の頻出テーマは児童相談所・児童福祉法・一時保護(7AM39ほか13問)で、単一テーマとしては全分野を通じて2番目の出題数を誇ります。虐待通告から一時保護、措置までの流れ、児童相談所と市町村・学校の役割分担を制度に即して正確に押さえることが最優先です。加えて高齢者福祉・障害者福祉の制度も出題され、発達心理学で頻出の老年期テーマと重なる部分があります。事例問題では通告義務や連携先の判断を問われるため、「誰が・どこへ・どの法律に基づいて」動くのかを具体的な場面で答えられるようにしてください。制度改正の多い領域だけに、知識は体系として整理しておくことが大切です。
分野別の出題数(全収録回の合計)
分野×回次のクロス集計
| 分野 | 第7回 | 第8回 | 第9回 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 心理学基礎 | 20 | 24 | 32 | 76 |
| 精神疾患とその治療 | 20 | 23 | 13 | 56 |
| 発達心理学 | 16 | 11 | 14 | 41 |
| 公認心理師の職責・倫理 | 13 | 12 | 11 | 36 |
| 心理アセスメント | 12 | 11 | 11 | 34 |
| 心理療法・心理支援 | 10 | 12 | 12 | 34 |
| 教育領域 | 11 | 11 | 9 | 31 |
| 福祉領域 | 12 | 9 | 8 | 29 |
| 神経・生理心理学 | 9 | 8 | 11 | 28 |
| 医療・保健領域 | 7 | 8 | 9 | 24 |
| 産業・労働領域 | 8 | 9 | 7 | 24 |
| 心理統計・研究法 | 7 | 7 | 8 | 22 |
| 司法・犯罪領域 | 7 | 6 | 8 | 21 |
| 関係行政論・法規 | 2 | 3 | 1 | 6 |
頻出テーマ TOP10
- 発達心理学-07 老年期・喪失・悲嘆17問
- 福祉領域-01 児童相談所・児童福祉法・一時保護13問
- 医療・保健領域-03 身体疾患:糖尿病・COPD・SLE・頭痛10問
- 心理学基礎-11 動機づけ:自己決定・フロー・達成動機9問
- 精神疾患とその治療-07 精神病症:統合失調症・短期精神病・幻覚妄想8問
- 司法・犯罪領域-01 少年司法・少年院・家庭裁判所8問
- 心理学基礎-07 注意・実行機能・ワーキングメモリ8問
- 心理学基礎-13 偏見・スティグマ・差別・集団7問
- 心理アセスメント-04 症状評価:不安・抑うつ・パニック・社交不安7問
- 精神疾患とその治療-01 ASD・ADHD・LDなど神経発達症7問
出題形式の統計(回次別)
| 回次 | 問題数 | 画像・図表つき | 4択 | 5択 | 複数選択 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第7回 | 154 | 0問 (0%) | 16 | 138 | 21 |
| 第8回 | 154 | 0問 (0%) | 11 | 143 | 15 |
| 第9回 | 154 | 0問 (0%) | 15 | 139 | 13 |
画像・図表つき問題や複数選択形式の比率は、実際の解き味と時間配分に直結します。 比率が高い回次が続く場合は、画像問題への慣れを演習に組み込んでおくのが安全です。
合格から逆算する学習戦略
よくある質問
公認心理師国家試験の合格率はどのくらいですか?
直近の第9回は受験者2,400人・合格者1,441人で合格率60.0%でした。第7回76.2%→第8回66.9%→第9回60.0%と2回連続で低下しています。なお第5回までは現任者経過措置(Gルート)の受験者を含み、第5回は受験者33,296人・合格率48.3%でした。Gルート終了後の第6回以降は受験者2,000人台の体制となり、合格率の水準もこの新体制下の数値で見るのが実態に合っています。
合格基準・ボーダーラインはどうなっていますか?
総得点の60%程度以上を基準とし、問題の難易度で補正して決定されます。第9回は230点満点中136点以上でした。配点は一般問題が1問1点、事例問題が1問3点で、事例問題の出来が総得点に大きく影響する構造です。ボーダーは回によって動き得るため、演習段階では6割ちょうどではなく7割の得点を安定して取れる状態を目標にすることをお勧めします。
過去問は何年分解くべきですか?
現行体制の第7回〜第9回の3回分・計462問が基本セットです。この3回は受験者層・出題傾向が現在と地続きで、演習価値が最も高い問題群です。1周目は分野別に解いて弱点を特定し、2周目は通しで解いて時間配分を確認してください。特に事例問題(1問3点)は、正解の根拠と他選択肢の除外理由まで言語化して復習することで、初見の事例への応用力が身につきます。
最も配点が大きい分野はどこですか?
直近3回の合計では心理学基礎が76問で最大、しかも第7回20問→第8回24問→第9回32問と増加を続けています。第2位は精神疾患とその治療の56問ですが、こちらは第9回に13問へ減少しました。発達心理学41問、職責・倫理36問、心理アセスメントと心理療法・心理支援が各34問と続きます。増加中の心理学基礎を最優先に据えつつ、変動があっても2桁を維持する精神疾患・アセスメント系を並行して固めるのが合理的です。
事例問題はどう対策すればよいですか?
事例問題は1問3点と一般問題の3倍の配点があり、合否を実質的に決める存在です。問われるのは知識の有無ではなく、症状記述から疾患やアセスメント方針を推定し、職責・倫理や制度に沿った対応を選ぶ運用力です。対策は、精神疾患・アセスメント・職責の知識を「事例文ではどう表現されるか」と対応づけながら学ぶこと、そして過去3回分の事例問題で選択肢の採否理由を言語化する練習を積むことです。複数選択形式の問題も第9回で13問出ており、消去法に頼らない正確な知識が求められます。
回次ごとの収録問題数
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