臨床工学技士国家試験の出題傾向分析

臨床工学技士国家試験は、午前・午後あわせて180問で、医学と工学の両方を深く問う点が最大の特徴です。解剖生理や臨床医学と、電気電子工学・情報工学が同じ試験に同居し、その上に人工心肺・血液透析・ME安全管理といった臨床工学の専門領域が積み上がります。直近の第39回は受験者2,396人に対し合格者1,573人、合格率65.7%と、掲載されている過去10回で最も低い結果となり、78%台だった第37回・第38回から一気に13ポイント以上下落しました。合格基準は180点満点中108点以上(6割)の絶対基準です。本記事では直近3回(第37〜39回)の全540問の分析から、分野別の出題実態と、難化局面を乗り切るための対策を解説します。

この試験を演習する

合格率と合格基準

直近の合格率65.7%第39回・受験2,396人/合格1,573
合格基準1問1点・180点満点で、総得点108点以上(6割)で合格する絶対基準。
回次実施年受験者数合格者数合格率
第39回20262,3961,57365.7%
第38回20252,5982,04978.9%
第37回20242,6302,06878.6%
第36回20232,7062,31185.4%
第35回20222,6032,09680.5%
第34回20212,6522,23284.2%
第33回20202,6422,16882.1%
第32回20192,8282,19377.5%
第31回20182,7372,01773.7%
第30回20172,9472,41381.9%

受験者数・合格者数・合格率は各実施機関の公式発表値(出典)。合格基準の詳細・最新情報は必ず公式発表をご確認ください。

直近回(39回)で出題が変化した分野

▲ 増加人体の構造と機能39回: 36(それ以前の平均 25.5問)
▲ 増加医療安全・公衆衛生39回: 24(それ以前の平均 13.5問)
▼ 減少医用治療機器学39回: 4(それ以前の平均 10問)
▼ 減少呼吸療法39回: 0(それ以前の平均 6問)

直近回(39回)の総評

第39回の合格率は65.7%(受験者2,396人・合格者1,573人)で、過去10回の最低値を更新しました。それまでの最低は第31回の73.7%であり、第38回78.9%・第37回78.6%から見ても急激な難化です。出題構成の変化を見ると、二つの動きが目立ちます。第一に、医療安全・公衆衛生が第37回12問→第38回15問→第39回24問と2倍に増加し、分野別で第39回の3位に浮上しました。第二に、人体の構造と機能が23問→28問→36問と大きく増え、第39回では最大の出題分野になっています。この2分野の膨張により、医学系・安全管理系の比重が明確に高まりました。一方、電気電子工学は20〜23問、生体計測装置学は15〜16問、体外循環・補助循環は9〜11問、血液浄化療法は8〜10問と安定しており、専門・工学系の骨格は維持されています。形式面では、画像や図を含む問題が第37回20問→第38回26問→第39回29問と増加を続けており、波形や回路図、装置の構成図を読み取らせる出題が確実に増えています。複数選択形式は直近3回で0問であり、全問が単一解答型です。総評すると、第39回は「医学系の増量+図表問題の増加」が重なった難化回であり、工学系だけで稼ぐ戦略や、暗記中心の学習では対応しきれない試験に変わりつつあります。

頻出分野ランキングと分野別対策

  1. 人体の構造と機能毎回平均 29問(全体の16%)

    直近3回合計87問で最大の分野であり、第37回23問→第38回28問→第39回36問と急増しています。テーマ別では細胞・代謝・薬理(26問)と解剖生理(25問)が2本柱で、血液・免疫・凝固(19問)、呼吸循環生理(17問)が続きます。第37回AM2〜5のように試験の冒頭から連続して出題されるのが通例です。臨床工学技士国家試験の医学問題は、人工心肺・透析・呼吸療法といった専門分野の前提知識として問われる色彩が強く、特に呼吸・循環・腎の生理は専門科目と直結します。増加傾向が続く以上、工学系が得意な受験生ほどこの分野への時間配分を意識的に増やすべきです。細胞レベルの代謝や薬理は暗記要素が多いので、早期に着手して反復回数を確保しましょう。

  2. 病理・臨床医学毎回平均 23.3問(全体の13%)

    3回合計70問、毎回23〜24問と極めて安定した第2の柱です。頻出テーマは循環器疾患(20問)、救急・集中治療・周術期(18問)、呼吸器疾患(13問)で、第37回AM15のような循環器の出題が目立ちます。出題される疾患は、体外循環・血液浄化・呼吸療法など臨床工学技士が関与する治療領域と強く結びついており、虚血性心疾患・不整脈・腎不全・呼吸不全といった「装置につながる疾患」が中心です。疾患を単独で暗記するのではなく、「この病態にどの生命維持管理装置が使われ、何をモニタリングするか」という形で専門分野とセットで整理すると、両方の分野の得点が同時に伸びます。人体の構造と機能とあわせると医学系だけで毎回50問前後に達するため、ここを苦手のまま残すと合格ラインの108点が一気に遠のきます。

  3. 電気電子工学毎回平均 21.3問(全体の12%)

    3回合計64問、毎回20〜23問で安定する工学系最大の分野です。テーマは直流・交流回路(24問)が最多で、半導体・電源・モータ(16問)が続きます。第37回AM46・48のように、回路図を与えて電流・電圧・インピーダンスを計算させる問題が典型で、図を含む問題が増えている近年の傾向(第39回29問)を支える分野でもあります。対策の要点は、オームの法則、合成抵抗、RC・RL回路の過渡現象と周波数特性、オペアンプの基本回路といった頻出パターンの計算を、手が自動的に動くレベルまで反復することです。計算問題は本番での時間消費が大きいため、解法の型を持っているかどうかが差になります。ME安全管理学の漏れ電流計算や生体計測の信号処理の土台でもあり、投資効果の高い分野です。

  4. 医療安全・公衆衛生毎回平均 17問(全体の9%)

    3回合計51問ですが、第37回12問→第38回15問→第39回24問と3回で倍増しており、直近の伸びが全分野中で最も急です。頻出テーマは医療安全・感染対策(22問)で、第37回AM1のように試験の最初の問題として出題されることもあります。医療法や臨床工学技士法などの関係法規、医療事故防止の考え方、標準予防策をはじめとする感染対策、公衆衛生の基本指標が主な内容です。暗記中心で対応できるため、出題増に対して得点を積み上げやすいコストパフォーマンスの高い分野と言えます。第39回の難化局面でもここは確実に取りたい領域です。法規は数値(人員配置・届出など)を問われやすいので、直前期にも見直せる一覧を作っておくと効率的です。

  5. 生体計測装置学毎回平均 15.7問(全体の9%)

    3回合計47問、毎回15〜16問と安定しています。テーマは生体電気信号・雑音(20問)、画像・光・超音波計測(13問)、呼吸・循環・体温計測(12問)にきれいに分かれ、第37回AM26・27のように心電図や脳波の計測原理と雑音対策を問う出題が定番です。学習の軸は、各生体信号の振幅・周波数帯域と、それに応じた増幅器の仕様(入力インピーダンス・CMRR・時定数)の対応関係です。雑音の種類と除去方法(交流障害・筋電図混入・基線動揺)は繰り返し問われます。超音波・パルスオキシメータ・血圧計などは測定原理と誤差要因をセットで整理しましょう。電気電子工学の知識がそのまま前提になる分野なので、回路の学習を終えてから取り組むと理解が速く、計測機器の波形や構成図を使った出題増にも対応できます。

  6. 医用基礎工学毎回平均 14.7問(全体の8%)

    3回合計44問、第37回17問・第38回14問・第39回13問と毎回13問以上が出題される分野です。力学・流体・熱・波動といった物理の基礎と、それを人体や医療機器に応用する内容が中心で、電気電子工学と並ぶ工学系の土台です。数式を使った計算問題の比率が高く、単位の換算や次元の理解が正答率を左右します。対策としては、頻出の公式を丸暗記するのではなく、圧力・流量・抵抗の関係のように「電気回路とのアナロジー」で理解すると、血液浄化や体外循環の原理問題にも応用が利きます。出題数自体は最上位ではありませんが、この分野の理解度が専門科目の学習速度を決めるため、学習序盤に電気電子工学とあわせて固めておくことを推奨します。計算演習は時間を計って行い、本番でのペース感覚を作りましょう。

  7. 情報通信・制御工学毎回平均 13.3問(全体の7%)

    3回合計40問、毎回11〜15問が出題されます。テーマは情報表現・論理・ソフトウェア(18問)と通信・ネットワーク(17問)の2本柱で、第37回AM57のような情報表現の問題、AM56のような通信・ネットワークの問題が典型です。2進数・論理回路・データ量の計算、ネットワークの基礎、医療情報システムやセキュリティの知識が問われます。範囲が明確で出題パターンの再現性が高いため、過去問ベースの対策が特に有効な分野です。論理回路や進数変換は手を動かせば確実に取れる計算問題であり、失点がもったいない領域と言えます。制御工学はブロック線図やフィードバックの基本概念を押さえておきましょう。医療機器のネットワーク化を背景に実務との接点も増えている分野なので、用語は最新の過去問で確認するのが安全です。

  8. ME安全管理学毎回平均 10.3問(全体の6%)

    3回合計31問、毎回9〜12問と一定数が必ず出題されます。頻出テーマは電撃・漏れ電流・医用電気設備(23問)にほぼ集中しており、第37回AM39〜42のように連続出題されるのが通例です。ミクロショック・マクロショックの閾値、装着部の分類(B・BF・CF)、漏れ電流の種類と許容値、保護接地やEPRシステムなどの医用電気設備、そして漏れ電流測定の方法が中核です。数値の暗記と、測定回路(MD)を使った計算問題の両方が出るため、「許容値の表を正確に覚える」ことと「等価回路で漏れ電流を計算できる」ことの2段構えで仕上げてください。出題範囲が狭く深いため、一度完成させれば安定した得点源になります。臨床工学技士の職務の核心である安全管理は、医療安全・公衆衛生の増加傾向とあわせて重要度が上がっています。

分野別の出題数(全収録回の合計)

人体の構造と機能87(16%)
病理・臨床医学70(13%)
電気電子工学64(12%)
医療安全・公衆衛生51(9%)
生体計測装置学47(9%)
医用基礎工学44(8%)
情報通信・制御工学40(7%)
ME安全管理学31(6%)
体外循環・補助循環30(6%)
血液浄化療法27(5%)
医用治療機器学24(4%)
生体物性・医用材料13(2%)
呼吸療法12(2%)

分野×回次のクロス集計

分野39回38回37回合計
人体の構造と機能36282387
病理・臨床医学23242370
電気電子工学23212064
医療安全・公衆衛生24151251
生体計測装置学16161547
医用基礎工学13141744
情報通信・制御工学11151440
ME安全管理学1012931
体外循環・補助循環9101130
血液浄化療法891027
医用治療機器学491124
生体物性・医用材料35513
呼吸療法21012

頻出テーマ TOP10

  1. 人体の構造と機能細胞・代謝・薬理26
  2. 人体の構造と機能解剖生理25
  3. 電気電子工学直流・交流回路24
  4. 体外循環・補助循環人工心肺24
  5. ME安全管理学電撃・漏れ電流・医用電気設備23
  6. 医療安全・公衆衛生医療安全・感染対策22
  7. 血液浄化療法血液透析・HDF21
  8. 病理・臨床医学循環器疾患20
  9. 生体計測装置学生体電気信号・雑音20
  10. 人体の構造と機能血液・免疫・凝固19

出題形式の統計(回次別)

回次問題数画像・図表つき5複数選択
39回18029(16%)180
38回18026(14%)180
37回18020(11%)180

画像・図表つき問題や複数選択形式の比率は、実際の解き味と時間配分に直結します。 比率が高い回次が続く場合は、画像問題への慣れを演習に組み込んでおくのが安全です。

合格から逆算する学習戦略

合格基準は180点満点中108点以上(6割)の絶対基準です。学習戦略を考える上でまず押さえるべきは、直近3回の分野構成の変化です。人体の構造と機能(第39回36問)と病理・臨床医学(毎回23〜24問)の医学系2分野で第39回は約60問に達し、医療安全・公衆衛生も12問→24問と倍増しました。一方、電気電子工学(20〜23問)・医用基礎工学(13〜17問)・情報通信・制御工学(11〜15問)の工学基礎も毎回50問前後あり、医学と工学のどちらかに偏った学習では6割の安定確保が難しい構造です。学習の順序としては、序盤に土台となる4分野、すなわち人体の構造と機能、電気電子工学、医用基礎工学、そして病理・臨床医学を固めます。ここは専門分野の前提知識であり、先に仕上げるほど後半が速くなります。中盤は生体計測装置学、ME安全管理学、体外循環・補助循環(毎回9〜11問)、血液浄化療法(毎回8〜10問)などの専門各論に進み、疾患と装置を結びつけて整理します。医療安全・公衆衛生は暗記で得点しやすいため、隙間時間で継続的に積み上げましょう。終盤は過去問の通し演習です。この試験は複数選択形式が直近3回で0問と全問単一解答型である一方、図表を含む問題が20問→29問と増えているため、波形・回路図・構成図を読む練習と、計算問題の時間配分の訓練が直前期の得点を左右します。第39回のような難化回でも108点は絶対基準として動かないので、「どの回に当たっても6割」を目標に、苦手分野の底上げを最後まで続けてください。このサイトでは分野別に過去問を演習できるので、弱点の特定と反復に活用できます。

よくある質問

合格率はどのくらいですか?

直近の第39回は受験者2,396人・合格者1,573人で合格率65.7%と、掲載されている過去10回で最低でした。それ以前は第37回78.6%・第38回78.9%、さらに遡ると第36回85.4%など、おおむね73〜85%の範囲で推移していたため、第39回の下落は際立っています。年による変動が大きい試験として、難化回に当たっても耐えられる得点力を目指すべきです。

合格基準・ボーダーは?

1問1点・180点満点で、総得点108点以上(6割)で合格となる絶対基準です。科目別の足切りはなく、合計で6割に届くかどうかがすべてです。相対評価ではないため、第39回のように合格率が65.7%まで下がった回でも基準自体は変わりません。逆に言えば、難化した回では6割の確保自体が難しくなるということなので、目標は6割ちょうどではなく、上振れの余地を持った水準に置くのが安全です。

過去問は何年分解くべきですか?

直近3回(第37〜39回)の540問の分析では、電気電子工学が毎回20〜23問、病理・臨床医学が毎回23〜24問など多くの分野の出題数が安定しており、過去問演習の効果が高い試験です。まず直近3回分を完全に仕上げることを優先してください。ただし医療安全・公衆衛生が12問→24問、人体の構造と機能が23問→36問と直近で急増した分野もあるため、古い回の配分イメージのまま学習比率を決めないよう注意が必要です。

最も配点が大きい分野は?

直近3回の合計では人体の構造と機能が87問で最大、病理・臨床医学が70問、電気電子工学が64問と続きます。特に人体の構造と機能は第37回23問→第39回36問と急増しており、医学系の比重が高まっています。テーマ単位では細胞・代謝・薬理(26問)、解剖生理(25問)、直流・交流回路(24問)、人工心肺(24問)、電撃・漏れ電流・医用電気設備(23問)が上位です。

複数選択の問題はありますか?

直近3回(第37〜39回)では複数選択形式の出題は0問で、すべて単一解答型です。その意味では解答形式は素直ですが、代わりに画像や図を含む問題が第37回20問→第38回26問→第39回29問と増加しており、回路図・波形・装置構成図の読み取りや計算を要する出題が増えています。単純な用語暗記だけでなく、図表から情報を読み取って計算・判断する練習を演習に組み込むことが重要です。

回次ごとの収録問題数

回次問題数一覧
39回180問題一覧へ
38回180問題一覧へ
37回180問題一覧へ

本ページはコクシメイク収録の全問題データから自動集計しています。分野の分類は編集部の整理に基づくもので、 公式の出題基準とは異なる場合があります。演習は学習アプリから、問題の閲覧は臨床工学技士国家試験のページからどうぞ。