111Q269|第111回 薬剤師国家試験 過去問
32 歳女性。身長 158 cm、体重 55 kg。第2 子を自然分娩で出産した。産後 7 日目より左ふくらはぎに違和感を覚え、腫脹と痛みが増強した。下肢静脈エコー で左腓腹静脈から膝窩静脈にかけて血栓を認め、深部静脈血栓症と診断され、ヘパ リンナトリウムの静脈内投与が開始された。医師は退院後の抗凝固療法について内 服への切り替えを検討している。医師は授乳への影響を踏まえ、適切な薬剤につい て薬剤師に相談した。診断時の身体・検査所見は以下のとおりであった。 (身体所見) 血圧 112/68 mmHg、脈拍 92 拍/分、体温 36.8 ℃、左下腿に腫脹と圧痛を認め、 軽度の発赤あり、呼吸苦や胸痛はなし (検査所見) D-ダイマー 3.8 μg/mL、PT-INR 1.0、APTT 33 秒、血小板 27.5 × 10 4/μL、 血清クレアチニン 0.58 mg/dL、eGFR 95 mL/min/1.73 m 2 薬剤師が提案した薬物の乳汁移行性が低い理由として正しいのはどれか。2つ選 べ。
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正解: 1・5
正答
1・5
この問題のポイント
薬物の母乳移行を左右する酸塩基性、分子量、脂溶性、血漿タンパク結合を、ワルファリンの物性へ当てはめます。
解説
母乳は母体血漿よりやや酸性であるため、弱塩基性薬物は母乳側でイオン化して戻りにくくなるイオントラッピングを受けやすい一方、弱酸性薬物はそのように濃縮されにくい性質があります。ワルファリンは弱酸性薬物です。さらに血漿アルブミンとの結合率が非常に高く、膜を通過できる遊離形の割合が小さいため、乳汁への移行が抑えられます。分子量は約308で、高分子薬物ではありません。水溶性が高いこと自体は本薬の低移行を説明する主要因ではなく、一般に脂溶性の高い非結合形ほど生体膜を通りやすいと考えます。
選択肢の確認
1.弱酸性薬物であるため。:正答。酸性の乳汁中でイオントラッピングを受けにくい性質です。
2.弱塩基性薬物であるため。:誤り。弱塩基は母乳側でイオン化し、濃縮されやすい方向です。
3.高分子薬物であるため。:誤り。ワルファリンは低分子化合物です。
4.水溶性が高い薬物であるため。:誤り。低乳汁移行の主要な説明ではありません。
5.血漿タンパク結合率が高い薬物であるため。:正答。遊離形が少なく、乳腺上皮を通過しにくくなります。
覚えるポイント
乳汁移行は「遊離形・非イオン形・脂溶性・低分子」で増えます。弱塩基は酸性の母乳中でイオントラッピングされやすい点が頻出です。