111PM053|第111回 看護師国家試験 過去問

結晶性知能はどれか。

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正解: 1

正答

1.よく利用するスーパーマーケットから自宅までの近道を考える。

この問題のポイント

知能を流動性知能と結晶性知能に分ける考え方を、日常の行動に当てはめられるかを問う問題です。見分ける鍵は、その行動が「新しい情報を取り込んで処理する」ものか、「経験の中で蓄えてきた知識を使って判断する」ものかです。選択肢1の「よく利用する」という言葉が、長年の経験で身につけた土地勘を使うことを示す手がかりになります。

解説

2つの知能の違い

知能を流動性知能と結晶性知能に分ける考え方は、キャッテル(Cattell, R.B.)が提唱し、ホーン(Horn, J.L.)とともに発展させた理論です。

  • 流動性知能は、新しい場面に適応する力です。情報をすばやく取り込み、記憶し、処理し、推論します。記銘力、情報処理の速さ、図形や空間の認識、初めての課題を解く力などが含まれます。神経系の働きに左右されやすく、青年期から成人前期にピークを迎えます。その後は加齢とともに低下しやすくなります。
  • 結晶性知能は、教育や生活経験を通じて蓄積された知識や技能を活用する力です。語彙、一般常識、言語理解、社会的な判断力、職業上の熟練などが含まれます。高齢期まで比較的よく保たれ、経験を重ねることで伸びることもあります。かなりの高齢になると緩やかに低下することはありますが、流動性知能に比べて低下は遅いとされます。

知能検査でも同じ傾向がみられます。語彙や知識を問う課題は高齢期まで保たれやすく、速さや新しい処理を求められる課題は低下しやすい傾向があります。

問題文への当てはめ

判断のコツは、その行動が「過去に蓄えたものを引き出して使う」のか、「今、新しく取り込む」のかを見ることです。

  • 選択肢1は、何度も通った経験から得た道の知識(どの道が近いか、歩きやすいかなど)をもとに判断する行為です。したがって結晶性知能です。
  • 選択肢2〜4は、いずれも持っていなかった情報や手順を新たに覚え込み、処理する行為です。したがって流動性知能です。

特に紛らわしいのが「言葉」に関する能力です。すでに身につけている母語の語彙や言葉の使い方は結晶性知能です。一方、見慣れない外国語の単語を新しく暗記するのは流動性知能です。「言葉=結晶性」と短絡しないことが大切です。

看護での活かし方

高齢者は新しいことを覚えるのに時間がかかりますが、経験に基づく知識や判断力は保たれています。この特徴を踏まえると、関わり方は次のようになります。

  • 新しい機器の操作や服薬手順を指導するとき:一度に伝える量を絞ります。ゆっくり、繰り返し説明し、書面や図を用います。本人がこれまでの生活で慣れている習慣と結び付けると定着しやすくなります。
  • 日頃の関わり:その人の職業経験や生活の知恵を尊重し、役割を担ってもらいます。人生経験を語ってもらう関わりも、保たれた能力を発揮する場となり、自尊感情や自己効力感の維持につながります。

選択肢の確認

1.よく利用するスーパーマーケットから自宅までの近道を考える。:正答。「よく利用する」という条件から、何度も通って身につけた土地勘や道の知識を引き出し、効率のよい道筋を判断していることが分かります。経験によって蓄積された知識を問題解決に活用する働きなので、結晶性知能にあたります。なお、初めて訪れた土地で地図を見ながら道順を考える場合は、新しい情報を処理する要素が強くなり、流動性知能の働きが大きくなります。

2.パソコン教室で操作方法を覚える。:初めて接する機器の操作手順を新しく記憶し、画面の変化に合わせて処理していく学習なので、流動性知能の働きです。新しい環境への適応力は加齢の影響を受けやすく、高齢者がパソコンやスマートフォンの操作の習得に時間がかかりやすいのはこのためです。一方、長年使い慣れた道具を熟練した手つきで扱う場合は、蓄えた技能を使う結晶性知能や手続き記憶の要素が強くなります。

3.携帯電話に電話番号を登録する。:初めて扱う番号という新しい情報を一時的に頭の中に保持しながら、機器の手順に沿って入力する行為なので、流動性知能が使われます。数字の並びを覚えて操作に移す過程では、情報を保ちながら処理する作業記憶(ワーキングメモリ)が関わります。これも加齢で低下しやすい能力です。

4.外国語の単語を暗記する。:これまで知らなかった単語を新たに記銘する機械的な暗記なので、流動性知能の働きです。語彙力は結晶性知能の代表ですが、それはすでに習得して使いこなしている言葉の知識を指します。言葉に関する課題だからといって結晶性知能と判断すると取り違えやすい選択肢です。

覚えるポイント

  • 流動性知能:新しい情報の記銘・処理・推論・新しい場面への適応です。若年期にピークを迎え、加齢とともに低下しやすくなります。
  • 結晶性知能:経験や学習で蓄積された知識、語彙、判断力、常識です。高齢期まで保たれやすく、伸びることもあります。
  • 見分け方は、「初めて・新しく覚える」なら流動性、「慣れた・蓄えた知識を使う」なら結晶性です。既習の語彙は結晶性、新しい単語の暗記は流動性です。
  • 記憶の加齢変化では、新しい情報の記銘、エピソード記憶、作業記憶が低下しやすく、意味記憶(知識)と手続き記憶(体で覚えた技能)は保たれやすいです。
  • 高齢者への指導では、少量ずつ、ゆっくり、繰り返し、書面を併用し、本人の経験と結び付けます。保たれている能力を生かして役割を持てるよう支援します。

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