111PM054|第111回 看護師国家試験 過去問

令和元年度(2019年度)「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」の結果において、養護者による高齢者虐待に関する説明で正しいのはどれか。

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正解: 4

正答

4.被虐待者の認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡが最も多い。

この問題のポイント

高齢者虐待防止法に基づく国の年次調査から、養護者(家族など)による虐待の実態を問う統計問題です。「誰が虐待するか(続柄)」「誰が虐待されるか(性別・認知症の程度)」「どのような虐待か(種別)」の3つの切り口で、最も多い項目とおおよその割合を覚えているかが解く鍵です。

解説

法律と調査の枠組み

高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律、2006年施行)は、65歳以上の高齢者への虐待を、次の2つに分けて定義しています。

  • 養護者による虐待:家族、親族、同居人など、高齢者を現に養護している人(施設・事業所の職員以外)による虐待です。
  • 養介護施設従事者等による虐待:介護施設や介護サービス事業所の職員による虐待です。

虐待の種別は、身体的虐待、介護・世話の放棄・放任(介護等放棄、ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5類型です。厚生労働省は毎年度、市町村と都道府県の対応状況を調査して公表しています。この問題は、そのうち養護者による虐待だけを問うています。

令和元年度調査の主な結果(養護者による虐待)

  • 市町村が虐待と判断した件数は約1万7千件です。
  • 虐待者の続柄は、息子が約4割で最も多く、次いで夫が約2割、娘が2割弱です。
  • 被虐待者は、女性が約4分の3を占めます。
  • 虐待の種別は、身体的虐待が約7割で最も多く、次いで心理的虐待が約4割、介護等放棄が約2割、経済的虐待が2割弱です。1人が複数の種別の虐待を受けていることがあるため、合計は100%を超えます。
  • 要介護認定を受けている被虐待者を認知症高齢者の日常生活自立度でみると、ランクⅡ以上が約7割を占め、ランク別ではランクⅡが最も多いです。

これらの傾向は、その後の年度の調査でも大きくは変わっていません。選択肢をこの結果と照らし合わせると、続柄・性別・種別に関する記述は、いずれも最多の項目や割合を取り違えています。事実と一致するのは、認知症の自立度に関する記述だけです。

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準

要介護認定の認定調査や主治医意見書で用いられる指標で、認知症の程度を日常生活の自立の度合いで示します。

  • ランクⅠ:何らかの認知症はあるものの、日常生活は家庭内・社会的にほぼ自立している状態です。
  • ランクⅡ:日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる状態です。家庭外でみられる場合をⅡa、家庭内でもみられる場合をⅡbとします。
  • ランクⅢ:日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さがみられ、介護を必要とする状態です。日中を中心にみられる場合をⅢa、夜間を中心にみられる場合をⅢbとします。
  • ランクⅣ:同様の症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、常に介護を必要とする状態です。
  • ランクM:著しい精神症状や周辺症状、あるいは重篤な身体疾患がみられ、専門医療を必要とする状態です。

ランクⅡは、見守りがあれば日常生活をおおむね自立して送れる段階です。そのため、在宅で生活を続けている人が多くなります。一方で、たびたび道に迷う、金銭管理にミスが目立つ、服薬管理ができないといった状態がみられるようになります。外見上は自立しているように見えるため、症状として周囲に理解されにくい時期です。その結果、介護者の負担やいらだちが募りやすいと考えられます。

実践とのつながり

虐待の発生要因としては、虐待者の介護疲れ・介護ストレスが上位に挙げられています。この法律は、名称のとおり、虐待を受けた高齢者の保護だけでなく養護者への支援も目的としています。また、病院などの団体や、医師・保健師など高齢者の福祉に職務上関係のある者には、虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、早期発見に努めることが求められています。看護師は、受診時や訪問時に不自然なあざ、低栄養、介護者の強い疲労などに気づける立場にあります。

養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、市町村(通報の受理を委託された地域包括支援センターなどを含む)へ通報します。高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合は通報の義務があり、それ以外の場合は努力義務です。看護師の守秘義務を含め、守秘義務に関する法律の規定は、この通報を妨げるものと解釈してはならないとされています。

選択肢の確認

1.夫による虐待が最も多い。:虐待者の続柄で最も多いのは息子で約4割を占め、夫は約2割で2番目にとどまるため、正しくありません。息子と夫をあわせると虐待者の約6割になるので、男性の虐待者が多いという理解は合っています。ただし、最多は夫ではなく息子です。息子が最多という傾向は、この調査で長く続いています。

2.被虐待者の9割が女性である。:被虐待者の女性の割合は約4分の3であり、9割には達しないため、正しくありません。「女性が多い」という方向は合っていますが、割合が過大です。女性は平均寿命が長く、高齢者人口に占める割合が大きいことが、背景の一つと考えられます。数値の程度まで正確に押さえておく必要があります。

3.心理的虐待が全体の6割を占めている。:虐待の種別では身体的虐待が約7割で最も多く、心理的虐待は約4割で2番目にとどまるため、正しくありません。6割を超えるような大きな割合は、心理的虐待(約4割)ではなく身体的虐待(約7割)にあてはまります。なお、児童相談所が対応した児童虐待相談(福祉行政報告例)では心理的虐待が最も多く、令和元年度も半数以上を占めていました。高齢者虐待の統計と取り違えないようにします。種別は複数回答で集計されるため、合計が100%を超える点にも注意します。

4.被虐待者の認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡが最も多い。:正答。要介護認定を受けている被虐待者のうち、自立度Ⅱ以上が約7割を占め、ランク別ではランクⅡが最も多くなっています。ランクⅡは見守りがあれば自立できる段階なので、在宅での介護が続きやすくなります。その中で介護者の負担が増していくことが、背景にあると考えられます。

覚えるポイント

  • 養護者による高齢者虐待の虐待者は**息子が最多(約4割)**で、次いで夫(約2割)、娘の順です。
  • 被虐待者は女性が約4分の3です(9割ではありません)。
  • 種別は**身体的虐待が最多(約7割)**で、次いで心理的虐待(約4割)、介護等放棄、経済的虐待の順です。複数回答のため、合計は100%を超えます。児童虐待(児童相談所の相談対応件数)では心理的虐待が最多なので、混同しないようにします。
  • 被虐待者の認知症高齢者の日常生活自立度はランクⅡが最多で、Ⅱ以上が約7割を占めます。寝たきり度を示す「障害高齢者の日常生活自立度(J・A・B・C)」と混同しないようにします。
  • 虐待は、身体的、介護等放棄(ネグレクト)、心理的、性的、経済的の5類型です。養護者による虐待の通報先は市町村(委託を受けた地域包括支援センターを含む)です。生命・身体に重大な危険がある場合は通報義務、それ以外は努力義務です。

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