L4/5の傍正中型ヘルニアでは、その高さを下へ通過するL5神経根が障害されやすくなります。一方、L4神経根はL4/5の椎間孔から外へ出るため、椎間孔内・外側のヘルニアではL4が障害され得ます。椎間の番号だけでなく、突出の方向をそろえて読むと、「一つずれた暗記」に理由が生まれます。[4, 5]
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同じ L4/5でも、 通過中の L5と 出口の L4がある
L4/5は、第4腰椎と第5腰椎の間という椎間板の位置です。この高さの椎間孔から外へ出るのはL4神経根で、L5神経根は脊柱管の中をもう一段下へ進み、L5/S1の椎間孔から出ます。[4]
椎間板が後方の中央から少し左右へずれた場所へ突出する傍正中型では、L4/5の高さを通過中のL5神経根に当たりやすくなります。突出がさらに外側の椎間孔内・椎間孔外へ及ぶと、その高さから出るL4神経根が障害され得ます。「どの椎間か」と「どちらへ突出したか」の二つをそろえて読む理由です。[4, 5]
| 椎間板の高さ | 傍正中の突出で障害されやすい根 | 椎間孔内・外で障害され得る根 |
|---|---|---|
| L3/4 | 通過中のL4 | 出口のL3 |
| L4/5 | 通過中のL5 | 出口のL4 |
| L5/S1 | 通過中のS1 | 出口のL5 |
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代表的な位置関係の整理です。大きな中央の突出や広範な病変では複数の根へ影響し、移動したヘルニアや解剖学的な違いもあるため、この表だけで診断しません。[4, 5]
中央へ 大きく 突出した 場合は、 馬尾にも 目を 向ける
突出の方向によって、影響する神経の範囲も変わります。傍正中に突出して一つの神経根へ影響する場合、片側の脚の症状が目立つことがあります。一方、大きな中央のヘルニアでは複数の神経根からなる馬尾が圧迫され、両脚の症状や排尿・排便、会陰部の感覚に異常が現れ得ます。椎間板ヘルニアでも馬尾症候群は起こるため、「典型例で少ない」と「起こらない」は区別します。[1, 8]
新たな排尿困難・尿閉、会陰部やサドルに触れる範囲の感覚低下、急速な筋力低下などがあれば、通常の経過観察から緊急評価へ判断を切り替えます。全ての症状がそろうまで待つのではありません。疑われる場合は速やかな専門的評価と画像検査が必要で、重い麻痺や馬尾症候群では早期の手術を検討します。[8, 9]
L5と S1は、 足首を 動かす 向きから 区別する
緊急性を確認したうえで、どの神経根の働きが弱っているかを、運動・感覚・腱反射から絞っていきます。
| 神経根 | 注目する運動 | 感覚の目安 | 腱反射の目安 |
|---|---|---|---|
| L4 | 膝を伸ばす力など | 下腿内側〜内くるぶし | 膝蓋腱反射の低下 |
| L5 | 足関節の背屈・母趾の伸展など | 下腿外側〜足背など | 膝蓋腱・アキレス腱反射だけでは捉えにくい |
| S1 | 足関節の底屈。つま先立ちなど | 下腿後外側〜足外側など | アキレス腱反射の低下 |
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足首を上へ向ける背屈には前脛骨筋など、下へ押す底屈には下腿三頭筋などが関わります。L5障害では背屈や母趾伸展が弱くなり、下垂足を生じ得ます。S1障害では底屈の弱さとアキレス腱反射の低下が手掛かりになります。ただし、筋は複数の神経根から支配を受け、感覚領域にも重なりがあります。表の一項目だけで局在を確定しません。[4, 6, 7]
同じ下垂足でも、 L5神経根と 総腓骨神経は 別の 場所
L5神経根から来る線維は、脚へ向かう途中で複数の末梢神経に分かれます。その一部が総腓骨神経を通り、足首を上げる筋へ届きます。そのため背屈の弱さだけでは、枝分かれ前のL5神経根と、枝分かれ後の総腓骨神経のどちらが傷んだか決められません。[6]
そこで、L5が関わる別の枝の動きもみます。足の裏を内側へ向ける内反を担う後脛骨筋は、総腓骨神経ではなく脛骨神経の支配です。背屈とともに内反や股関節を外へ開く力も弱ければ、総腓骨神経だけの障害では説明しにくくなります。内反が保たれることは総腓骨神経障害の手掛かりですが、痛みのために力が出ない可能性も含め、感覚・経過・必要な電気生理検査と合わせて判断します。[6, 7]
SLRと FSTでは、 痛みが 再現する 場所を 確かめる
MRIの 突出だけでは、 症状の 原因と 決まらない
症状のない人でも、画像に椎間板の突出が見つかることがあります。したがって、痛み・筋力・感覚・腱反射から想定した神経根と、MRIでの突出の高さ・方向が合うかを照合します。画像だけ、診察所見一つだけで決めないことが、番号の暗記を診断につなげる最後の一段です。[4]
確認問題: 理由まで 説明できるか
問1 同じL4/5なら、外側型でもL5?
問2 足首が上がらない。それだけでL5神経根障害?
補足: 発症の 背景と、 経過を 見て治療を 見直す意味
椎間板は、中心の髄核を外側の線維輪などが囲む構造です。内部の組織が本来の位置から突出すると、近くの神経根に機械的な圧迫や炎症の影響が及び、腰痛だけでなく脚の痛み・しびれ・筋力低下につながります。重い物を持った後に症状が出ることはありますが、一度の強い圧力だけで全ての発症を説明できません。変性や様々な背景が関わります。[1, 2]
L4/5とL5/S1は代表的な好発部位です。年齢や発症の経過に加えて、どの神経機能が障害され、画像のどの位置と合うかを確かめます。[2, 3]
緊急性がなければ、痛みや機能を評価しながら保存的治療を選ぶのが基本です。時間とともに症状が改善し、突出した組織が吸収される例もあります。国内2021年指針の要点では約3か月が一つの目安として示されていますが、全員をその期間まで待たせる規則ではありません。改善しない痛みや進行する麻痺などを再評価し、治療方針を見直します。[3, 8]
ここまでの診察所見は、画像を見る前に、ヘルニア以外の原因を考える手掛かりにもなります。腰部脊柱管狭窄症では、歩くと脚がつらくなり、前かがみや座位で軽くなる神経性間欠性跛行などが手掛かりです。狭窄症にも神経根型があり、症状の左右だけでは区別できません。今どの神経機能が障害されているかを先に調べる点は、ヘルニアと共通します。[10]
参考文献
記事の根拠や詳しい内容を確認できる資料です。
- AAOS OrthoInfo. Herniated Disk in the Lower Back.
- Ohba T. The Essence of Clinical Practice Guidelines for Lumbar Disc Herniation, 2021: 2. Pathological Condition. Spine Surg Relat Res. 2022;6:322–324.
- Shiga Y. The Essence of Clinical Practice Guidelines for Lumbar Disc Herniation, 2021: 1. Epidemiology and Natural Course. Spine Surg Relat Res. 2022;6:319–321.
- Kaito T, Yamato Y. The Essence of Clinical Practice Guidelines for Lumbar Disc Herniation, 2021: 3. Diagnosis. Spine Surg Relat Res. 2022;6:325–328.
- Epstein NE. Foraminal and far lateral lumbar disc herniations: surgical alternatives and outcome measures. Spinal Cord. 2002;40:491–500. 抄録。
- Robblee J, Katzberg H. Distinguishing Radiculopathies from Mononeuropathies. Front Neurol. 2016;7:111.
- Suri P, et al. The Accuracy of the Physical Examination for the Diagnosis of Midlumbar and Low Lumbar Nerve Root Impingement. Spine. 2011;36:63–73.
- Sakai D. The Essence of Clinical Practice Guidelines for Lumbar Disc Herniation, 2021: 4. Treatment. Spine Surg Relat Res. 2022;6:329–332.
- NICE. NG127: Suspected neurological conditions: recognition and referral. Recommendation 1.7.3.
- 日本整形外科学会. 腰部脊柱管狭窄症.