115A086|第115回 歯科医師国家試験 過去問
81 歳の女性。口腔内に食物が残留することを主訴として来院した。 3か月前に 脳梗塞で救急搬送され、 2週前に退院したという。後遺障害として、右手にしびれ 感があり、カ行の発音が不明瞭であるが、開鼻声は認めない。咬頭嵌合位での咬合 接触状態を印記した義歯の写真 (別冊No. 32A と食物の残留部位を示す写真 (別冊 No. 32B を別に示す。 主訴を改善するために適用するのはどれか。 1つ選べ。

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正解: b
正答
b
この問題のポイント
脳梗塞後に舌運動が低下し、食物残留とカ行の構音障害がある一方、開鼻声を認めません。必要なのは、舌と口蓋の接触を補助する舌接触補助床です。
解説
症例は脳梗塞後で、口腔内に食物が残留し、カ行の発音が不明瞭です。カ行の発音では舌背後方を口蓋後方へ接触させる必要があります。また、食塊を口腔から咽頭へ送り込む口腔期でも、舌が口蓋へ接触して十分な舌圧を作ることが重要です。
脳梗塞後の舌運動低下により舌が口蓋へ届きにくくなると、次の問題が生じます。
- 食塊を後方へ送り込みにくい
- 口蓋や歯列周囲に食物が残留する
- 舌と口蓋の接触を必要とする子音が不明瞭になる
舌接触補助床は、義歯の口蓋面を適切に厚くして口蓋側を舌へ近づける装置です。舌の可動域が低下していても接触しやすくなり、食塊移送、嚥下口腔期、構音の改善を図ります。
本症例では開鼻声がありません。これは鼻咽腔閉鎖不全を積極的に示す所見がないことを意味し、スピーチエイドや軟口蓋挙上装置よりも舌接触の補助が適しています。
症例問題の解き方
食物残留+舌音・軟口蓋音の構音障害では舌運動を考えます。開鼻声があれば鼻咽腔閉鎖不全を考え、軟口蓋や咽頭部を補助する装置を検討します。
画像の確認
実画像では、上下全部床義歯の咬合接触が確認され、上顎義歯の口蓋側後方には調整対象となる範囲が囲って示されている。義歯床の脱離や鼻腔への交通を示す欠損像ではなく、舌と口蓋の接触を補う部位が焦点になっているため、舌接触補助床を選ぶ根拠になる。
選択肢の確認
a.金属床義歯
誤り。
金属床義歯は義歯床を薄くでき、強度、熱伝導性、装着感などに利点があります。しかし、舌と口蓋の距離を機能的に調整して舌接触を補助することが主目的ではありません。
b.舌接触補助床
正答。最も適切です。
口蓋面の形態を舌が接触しやすいように形成し、低下した舌圧を補います。食塊の送り込み、口腔内残留、カ行などの構音障害の改善に適しています。
c.スピーチエイド
誤り。
スピーチエイドは、口蓋裂や鼻咽腔閉鎖不全などで咽頭部の閉鎖を補助し、開鼻声を改善する目的で用います。本症例では開鼻声を認めず、主病態は舌接触不良です。
d.軟口蓋挙上装置
誤り。
軟口蓋挙上装置は、軟口蓋麻痺などで軟口蓋を持ち上げ、鼻咽腔閉鎖を補助する装置です。開鼻声を認めない本症例の第一選択ではありません。
e.オブチュレーター
誤り。
オブチュレーターは顎切除後や口蓋欠損などの実質欠損を閉鎖し、口腔と鼻腔の交通を遮断する装置です。本症例には口蓋欠損が示されていません。
覚えるポイント
- 舌接触補助床は、舌と口蓋の距離を短くして舌圧を補う装置です。
- 食物の口腔内残留と構音障害の両方を改善できます。
- 開鼻声がある場合は、スピーチエイドや軟口蓋挙上装置の適応を考えます。