第108回

108PM001|第108回 保健師国家試験 過去問

保健師が行うアウトリーチはどれか。

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正解4

正答

4.4か月児健康診査未受診者の家庭訪問

この問題のポイント

アウトリーチの定義を理解しているかを問う問題です。アウトリーチとは、支援が必要なのに自ら支援を求めない人や、サービスに結び付いていない人に対して、支援者の側から出向いて働きかける活動です。選択肢の中から、サービスから漏れている人(未受診者)のもとへ支援者が出向く(家庭訪問)という組み合わせを見抜くことが鍵になります。

解説

アウトリーチとは

英語の outreach は「手を伸ばして届かせる」という意味です。保健・福祉の分野では、窓口で相談に来るのを待つのではなく、支援者が地域や家庭に出向いて支援の必要な人を見つけ出し、必要なサービスにつなぐ活動を指します。見分けるときの軸は次の2点です。

  • 対象:支援が必要なのに、自分から相談に来ない人、サービスを利用していない人、支援があることを知らない人、支援を拒んでいる人
  • 方法:支援者の側から出向いて働きかける(訪問、電話、地域での声かけなど)

窓口で待つだけの支援は、相談に来る力や意欲、情報をもっている人にしか届きません。健康課題が深刻な人ほど、疾病、障害、経済的困窮、社会的孤立、支援者への不信などのために、自分から支援を求めないことが多くあります。こうした人に手を届かせることは公衆衛生看護の重要な役割です。保健師活動で地区担当制や家庭訪問が重視されてきた理由の一つもここにあります。

乳児健診未受診者への家庭訪問の意味

母子保健法で市町村に実施が義務付けられている乳幼児健診は、1歳6か月児健診と3歳児健診です。これに加えて、多くの市町村は乳児期(3〜4か月頃など)の健診を、必要に応じて行う健診として実施しています。乳児健診には、児の発育・発達の確認、疾病や障害の早期発見、保護者の育児相談という役割があり、養育環境を把握する機会にもなっています。

健診を受けていない家庭には、日程が合わなかっただけの家庭もあります。一方で、保護者の疾病や育児困難、経済的困窮、孤立、さらには児童虐待が背景にある場合も含まれます。子ども虐待による死亡事例の検証でも、乳幼児健診の未受診は注意すべき特徴として繰り返し指摘されています。

そこで市町村は、未受診者を把握すると通知や電話で受診を勧めます。連絡がつかない場合や気がかりな情報がある場合には、保健師が家庭を訪問します。訪問では子どもの姿を直接確認し、養育状況を把握して、必要な支援につなげます。これは、サービスから漏れた人のもとへ支援者が出向く典型的なアウトリーチです。

なお、家庭訪問であれば何でもアウトリーチになるわけではありません。本人から依頼を受けて行う訪問よりも、未把握・未受診・支援拒否の人に支援者の側から出向く訪問こそが、アウトリーチの本質です。この問題では「未受診者」という語が決め手になっています。

実践での広がり

アウトリーチの考え方は、母子保健以外でも広く用いられています。

  • 乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業):生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、孤立を防ぎ、支援が必要な家庭を把握します。
  • 認知症初期集中支援チーム:医療・介護の専門職が、認知症が疑われる人やその家族を訪問し、初期の支援を集中的に行います。
  • 精神保健分野の訪問支援:未治療や治療中断の精神障害者などに多職種チームが訪問し、医療や地域生活につなぎます。ACT(包括型地域生活支援プログラム)が代表例です。
  • 特定健康診査の未受診者への受診勧奨や、ひきこもりの人への訪問支援も同じ発想に立つ活動です。

選択肢の確認

1.吃音がある幼児の言葉の相談:保護者が心配ごとを抱えて窓口や健診会場で申し出る、あるいは予約して来所するといった、対象者側からの求めに応じる個別相談です。そのためアウトリーチには当たりません。相談への対応は保健師の基本的な活動で、吃音や言葉の心配については発達の経過をみながら、必要に応じて言語聴覚士などの専門職や療育機関につなぎます。健診で言葉の課題を把握したのに相談に来ない家庭へ保健師から出向くのであればアウトリーチの性格をもちますが、「相談」だけでは待つ形の支援と考えます。

2.ダウン症児の家族会の設立支援:同じ課題をもつ家族同士が体験を分かち合い支え合う、セルフヘルプグループ(自助グループ)の育成を支援する活動で、グループ支援・地区組織活動に当たります。保健師は立ち上げの時期に会場や情報を提供し、家族同士をつなぎ、やがて当事者による自主運営へ移れるよう支えます。エンパワメントやピアサポートの視点が大切な活動ですが、支援に結び付いていない人へ出向くことを目的としていないため、アウトリーチとは区別します。

3.前期高齢者への認知症予防教室の開催:参加者を募集して会場で行う集団健康教育で、ポピュレーションアプローチによる一次予防の活動です。介護予防の普及啓発として意義は大きいものの、申し込んで来場した人にしか届きません。閉じこもりがちな人や関心の低い人ほど参加しにくいという限界もあります。教室に来ない高齢者を訪問して状態を把握したり参加を勧めたりする活動であればアウトリーチになりますが、教室の開催そのものは「来てもらう」形の事業です。

4.4か月児健康診査未受診者の家庭訪問:正答。健診という既存のサービスを利用していない家庭に保健師の側から出向き、児の発育・発達と養育環境を確認して、受診勧奨や必要な支援につなぐ活動で、アウトリーチの典型です。未受診の背景に育児困難や虐待が隠れている可能性もあるため、連絡がとれない家庭では訪問して子どもの姿を直接確認することが重視されます。

覚えるポイント

  • アウトリーチは、支援が必要なのに届いていない人へ、支援者の側から出向いて働きかける活動です。「待つ支援」ではなく「出向く支援」と覚えます。
  • 見分ける手がかりになる語は「未受診」「未把握」「未治療・治療中断」「支援拒否」「閉じこもり」「孤立」で、これに「訪問」などの働きかけが組み合わさります。
  • 来所相談、参加者を募る教室、家族会・自助グループの育成支援は、いずれも重要な保健師活動ですが、アウトリーチとは区別します。
  • 乳幼児健診の未受診は育児困難や児童虐待の手がかりになりうるため、未受診者の状況把握と家庭訪問が重要です。
  • 母子保健法で市町村に義務付けられている健診は1歳6か月児健診と3歳児健診です。乳児健診は、市町村が必要に応じて実施しています。
  • アウトリーチの例として、乳児家庭全戸訪問事業(生後4か月までの全戸訪問)、認知症初期集中支援チーム、精神障害者への訪問支援(ACT)、健診未受診者への受診勧奨を押さえておきます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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