第108回

108AM055|第108回 保健師国家試験 過去問

2つ選択

次の文を読み55の問いに答えよ。A市在住のBさん(45歳、女性)は夫と長男(14歳)、長女(9歳)との4人暮らし。週に4日間のパート勤務をしている。これまで職場で健康診査を受けたことはなかった。A市から届いた受診案内をみて、初めて市の特定健康診査を受診した。結果は、身長160 cm、体重70 kg、腹囲90 cm、血圧140/90 mmHg、HbA1c 5.0%、中性脂肪300 mg/dL、LDLコレステロール120 mg/dL、HDLコレステロール73 mg/dL、血清尿酸値5.5 mg/dL、血清クレアチニン1.0 mg/dL、推定糸球体濾過量〈eGFR〉48.1 mL/分/1.73 m2、尿蛋白(+)であった。A市の保健センターの結果説明会に参加したBさんは「検査結果がこんなに悪いとは思っていなかった。食べ盛りの子どもたちに合わせた食生活が悪かったのだと思う。これからどのような食事をすればよいのか知りたい」と話した。摂取量についてBさんに指導する必要があるのはどれか。2つ選べ。

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正解1・3

正答

1.塩分
3.蛋白質

この問題のポイント

特定健康診査の結果から、Bさんの健康課題の中心を見極め、摂取量の指導が必要なものを選ぶ問題です。判断の手がかりは、eGFR 48.1 mL/分/1.73 m2と尿蛋白(+)の組み合わせです。ここから慢性腎臓病(CKD)のG3a相当が強く疑われます。血圧140/90 mmHgの高血圧もあるため、食事療法の柱は減塩とたんぱく質の適正化です。

解説

検査結果の整理

まず、各項目を基準と照らし合わせます。

  • 体格:BMIは70÷(1.60×1.60)=約27.3で、肥満(BMI 25以上)です。
  • メタボリックシンドローム:腹囲90 cmは女性の基準(90 cm以上)に該当します。さらに血圧(収縮期130 mmHg以上または拡張期85 mmHg以上)と脂質(中性脂肪150 mg/dL以上またはHDLコレステロール40 mg/dL未満)の2項目を満たすため、診断基準に当てはまります。
  • 血圧:140/90 mmHgは、診察室血圧で高血圧とする基準(140/90 mmHg以上)に達しています。
  • 脂質:中性脂肪300 mg/dLは高値です。HDLコレステロール73 mg/dLは良好です。LDLコレステロール120 mg/dLは、高LDLコレステロール血症の基準(140 mg/dL以上)は下回りますが、境界域(120〜139 mg/dL)に当たります。
  • 糖代謝:HbA1c 5.0%で異常はありません。
  • 尿酸:5.5 mg/dLで、高尿酸血症の基準(7.0 mg/dLを超える)に達していません。
  • 腎機能:血清クレアチニン1.0 mg/dLは、成人女性の基準範囲を上回ります。eGFRは48.1で60を下回り、尿蛋白も陽性です。

最も重要な所見は腎機能の低下

eGFRは、血清クレアチニン値・年齢・性別から推算する値です。同じクレアチニン値でも、女性のほうが低く算出されます。CKDは、「eGFR 60 mL/分/1.73 m2未満」または「蛋白尿など腎障害を示す所見」のいずれか(または両方)が3か月以上続く状態と定義されます。今回は1回の健診結果なので確定はできません。ただし両方の所見がそろっており、CKDが強く疑われます。GFR区分では、45〜59のG3aに相当します。

CKDは自覚症状が乏しいまま進行します。末期腎不全だけでなく、心血管疾患の重要な危険因子でもあります。高血圧・肥満・脂質異常はCKDの発症と進展を促し、CKDがさらに血圧を上げるという悪循環があります。HbA1cは正常なので、糖尿病性腎症は考えにくいです。高血圧による腎硬化症や慢性糸球体腎炎なども含めて、医療機関で原因を調べる必要があります。保健師はまず受診勧奨を行います。食事の具体的な量は、医師の指示のもとで管理栄養士とも連携して決めていきます。

CKDの食事療法の基本

日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」の要点は次のとおりです。

  • 食塩:病期にかかわらず、3 g以上6 g未満/日です。
  • たんぱく質:G1・G2では過剰な摂取を避けます。G3aでは0.8〜1.0 g/kg標準体重/日、G3b〜G5では0.6〜0.8 g/kg標準体重/日とします。
  • カリウム:G3aまでは制限しません。G3bで2,000 mg/日以下、G4・G5で1,500 mg/日以下とします。
  • エネルギー:25〜35 kcal/kg標準体重/日を基本とし、性別・年齢・身体活動量や、肥満などの合併症に応じて調整します。

Bさんの標準体重(BMI 22となる体重)は、1.60×1.60×22で約56 kgです。G3aの目安に当てはめると、たんぱく質は1日およそ45〜56 gとなります。

減塩の目安も比べておきます。出題当時の日本人の食事摂取基準(2020年版)では、食塩相当量の目標量は成人男性7.5 g未満、女性6.5 g未満です。これに対し、高血圧とCKDの重症化予防のためには男女とも6.0 g未満とされています。Bさんには、一般の目標量より厳しい減塩が求められます。

Bさんへの支援の実際

Bさんは「どのような食事をすればよいのか知りたい」と話しており、行動を変える意欲が高まっている好機です。ただし、14歳と9歳の子どもは成長期で、たんぱく質やエネルギーを十分にとる必要があります。家族全員を同じ制限にするのではなく、次のような工夫を具体的に提案します。

  • 主菜はBさんの分だけ量を控えめに取り分けます。
  • 減塩は家族全体の健康にも役立ちます。薄味や加工食品の見直しは、家族ぐるみで取り組みます。

肥満と高中性脂肪に対しては、エネルギー・脂質・糖質・飲酒の見直しも併せて支援します。受診後は、医療機関での診断や指示の内容を確認し、食生活の改善を続けられるよう継続して関わります。

選択肢の確認

1.塩分:正答。食塩を過剰にとると体液量が増えて血圧が上がり、糸球体にかかる圧が高まります。その結果、蛋白尿の増加と腎機能の低下を招きます。Bさんは高血圧とCKDの疑いを併せもつため、減塩は最優先の指導内容です。CKDでは病期を問わず3 g以上6 g未満/日が目標で、高血圧の治療でも6 g未満/日が推奨されます。子どもに合わせて味付けが濃くなっていないか確認します。そのうえで、汁物・麺類の汁・加工食品のとり方などを具体的に見直します。

2.水分:CKDでは飲水量を一律に制限することはありません。脱水はむしろ腎血流を減らし、腎機能を悪化させます。制限が必要になるのは、腎不全が進んで尿量が減り、浮腫や心不全を伴う場合や、透析療法中などです。問題文には浮腫や尿量減少などの所見は示されていないため、指導の必要はありません。一方で、腎臓によいと考えて意図的に多く飲む必要もありません。「腎臓病なら水を控える」と取り違えやすいので注意します。

3.蛋白質:正答。たんぱく質が代謝されると尿素などの窒素代謝物が生じ、腎臓から排泄されます。過剰にとると排泄の負担が増え、糸球体の過剰濾過(糸球体内圧の上昇)を招いて腎障害の進行を早めます。G3a相当では0.8〜1.0 g/kg標準体重/日が目安です。食べ盛りの子どもに合わせた食事で、肉・魚などの主菜が多くなっていた可能性があり、量の見直しが必要です。ただし、過度に制限すると低栄養や筋肉量の減少を招きます。医師の指示と管理栄養士の指導のもとで調整します。

4.カリウム:この電解質の制限は、腎機能の低下が進んで排泄が追いつかなくなり、高K血症の危険が出てきてから行います。食事療法基準ではG3aまでは制限せず、G3bから2,000 mg/日以下とします。BさんはG3a相当です。検査結果に血清K値はなく、高K血症を示す情報もありません。そのため、現時点で制限を指導する根拠はありません。今後、腎機能がさらに低下した場合や、ACE阻害薬・ARBなどの降圧薬で血清K値が上がった場合には、制限が必要になります。

5.プリン体:血清尿酸値5.5 mg/dLは、高尿酸血症の基準(7.0 mg/dLを超える)を下回っています。そのため、尿酸のもとになる成分を多く含む食品の制限を指導する根拠はありません。レバー・白子・干物・カツオ・イワシ・エビなどが、その成分を多く含む食品です。なお、白子は魚の精巣で、魚卵とは別の食品です。魚卵はコレステロールを多く含む食品です。一方、尿酸のもとになる成分の含有量(100 gあたり)は、イクラが約4 mg、数の子が約22 mgです。これは高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインの区分で「極めて少ない」(50 mg未満)に当たります。たらこは約120 mgで、肉類の多くと同じ「中程度」(100〜200 mg)です。高尿酸血症や痛風がある場合には、尿酸のもとになる成分を多く含む食品に加えて、アルコールや果糖のとりすぎも控えるよう指導します。尿酸は腎臓から排泄されます。今後腎機能が低下すれば上昇する可能性があるため、経過を確認していきます。

覚えるポイント

  • CKDは、「eGFR 60 mL/分/1.73 m2未満」または「蛋白尿などの腎障害」が3か月以上続く状態です。重症度は原因(C)・GFR区分(G)・蛋白尿区分(A)で評価し、G3aはeGFR 45〜59です。
  • CKDの食事療法の柱は、食塩3 g以上6 g未満/日(全病期)と、たんぱく質の調整(G3aで0.8〜1.0、G3b〜G5で0.6〜0.8 g/kg標準体重/日)です。カリウムはG3bから制限し(G3bで2,000 mg/日以下、G4・G5で1,500 mg/日以下)、水分は原則として制限しません。
  • 食塩相当量の目標量は、日本人の食事摂取基準(2020年版)で成人男性7.5 g未満・女性6.5 g未満です。高血圧とCKDの重症化予防では、男女とも6.0 g未満です。
  • 高尿酸血症は、血清尿酸値が7.0 mg/dLを超える状態です。プリン体を多く含むのはレバー・白子・干物・カツオ・イワシ・エビなどです。魚卵はコレステロールが多い食品です。一方、プリン体はイクラ・数の子では極めて少なく(100 gあたり50 mg未満)、たらこも中程度にとどまります。
  • メタボリックシンドロームは、腹囲(男性85 cm以上・女性90 cm以上)に加え、血圧・脂質・血糖のうち2項目以上を満たすものです。血圧の基準は、メタボリックシンドロームでは130/85 mmHg以上、高血圧の診断では診察室血圧140/90 mmHg以上と異なります。
  • 家族の食事を作る人への指導では、本人に必要な制限と、成長期の子どもなど家族の栄養ニーズを両立させる工夫(取り分け、家族ぐるみの減塩)を提案します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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