第109回

109AM017|第109回 保健師国家試験 過去問

保健師のプリセプターシップで最も適切なのはどれか。

解答・解説を見る

正解3

正答

3.新人保健師のリアリティショックの軽減につながる。

この問題のポイント

新人育成の方法であるプリセプターシップについて、目的・担い手・学習の進め方・期間を理解しているかを問う問題です。基本の形は「新人期に、決まった先輩が、一定期間、1対1で支える」ことです。最大のねらいは、新人のリアリティショックを和らげ、職場への適応と定着を助けることにあります。この2点を押さえれば正答を選べます。

解説

プリセプターシップは、新人(プリセプティ)1人に特定の先輩(プリセプター)が一定期間つく教育体制です。プリセプターは、日々の実践を通した指導と精神的な支えを一貫して行います。病院の看護職員の新人教育で広く用いられてきた方法で、自治体などに所属する保健師の新人育成にも取り入れられています。基本の形は次のとおりです。

  • 対象:就職直後の新人期
  • 担い手:実務に習熟し、新人と経験の差が大きすぎない先輩
  • 関係:1対1で、同じ人が継続して担当する
  • 期間:あらかじめ決めた一定期間で終了する

リアリティショックは、看護職の分野ではクレイマー(Kramer, M.)が提唱した概念として知られています。基礎教育で思い描いていた職業像や期待と、就職後に直面する現実とのずれによって生じる、心理的・身体的な衝撃反応を指します。自信の喪失、無力感、心身の不調を招き、放置すると燃え尽きや早期離職につながります。保健師は、次のような理由から学生時代の実習とのギャップを感じやすい職種です。

  • 家庭訪問や健康相談を一人で行う場面が多い
  • 地区担当として住民の生活に踏み込む支援には、正解が一つではない
  • 関係機関との調整や事務手続きが多い

プリセプターは、次のような関わりを通して、理想と現実のずれを少しずつ埋めていきます。

  • 同行訪問で実際の関わり方を見せる
  • 訪問後に判断の根拠を一緒に振り返る
  • 不安や困りごとを気軽に話せる相手になる

いつでも相談できる決まった相手がいること自体が新人の安心につながり、できることが増えていく実感が自信を支えます。これがリアリティショックの軽減と定着につながる点が、プリセプターシップの中心的な意義です。

組織としての位置づけも押さえておきましょう。2009年の法改正により、2010年4月から新人看護職員研修が努力義務となりました。厚生労働省の新人看護職員研修ガイドライン(保健師編も作成されています)では、研修責任者・教育担当者・実地指導者という役割分担が示されています。日々新人に寄り添うプリセプターは実地指導者にあたる立場です。管理期の保健師は、研修体制を整え、プリセプター自身の負担や悩みを支え、育成全体を評価する側に回ります。プリセプターは教える経験を通して自らも成長しますが、一人に抱え込ませず、職場全体で新人を育てる体制が欠かせません。

学習の進め方では、新人も成人学習者であることが前提です。ノールズが示した成人学習(アンドラゴジー)の考え方では、学習者が自分の経験を土台に、自ら課題を見いだして主体的に学ぶことが重視されます。プリセプターシップでも、新人が自分の目標やつまずきを言葉にし、プリセプターがそれを一緒に確認して助言する形が基本です。

プリセプターシップは期間を区切った新人期の支援です。病院の看護職では1年程度とすることが多く、終了後は職場全体の育成体制に引き継がれます。混同しやすい方法には次のものがあります。

  • メンターシップ:経験豊かな先輩(メンター)が長期にわたり、キャリア形成を含めて支える関係
  • チューターシップ(エルダー制):新人ごとに決まった相談役がつき、仕事の進め方や悩みの相談にのる
  • チーム支援型:チーム全体で新人を育てる

保健師の人材育成は、新任期・中堅期・管理期というキャリアの段階に応じて進められます。各段階で求められる能力を示すキャリアラダーも用いられています。

選択肢の確認

1.学習方法はプリセプターが提案する。:新人は成人学習者であり、自分の課題や学び方を自ら考えて選ぶ主体的な学習が基本です。プリセプターは、新人が目標やつまずきを言葉にできるよう問いかけ、一緒に計画を確認して助言する支援者の立場です。先輩が学習方法を決めて示す形では、新人が自分で考えて判断する力が育ちにくくなります。場面によって助言として方法を提案することはありますが、プリセプターシップの本質を表すものではありません。プリセプターシップの主要な効果を示す選択肢3と比べると、最も適切とはいえません。

2.管理期にある保健師がプリセプターを担う。:プリセプターは新人に日々寄り添う実地指導の担い手です。実務に習熟しつつ、新人と経験の差が大きすぎない先輩や中堅期の保健師が務めるのが一般的です。経験や立場の差が大きいと新人が気軽に相談しにくく、管理業務と日常的な1対1の指導を両立するのも難しくなります。管理期の保健師は、研修体制の整備、プリセプターへの支援、育成全体の評価を担う立場として関わります。

3.新人保健師のリアリティショックの軽減につながる。:正答。決まった先輩が同行訪問や振り返りを通して実践を支え、相談相手として不安を受け止めます。これにより、基礎教育で描いた理想と職場の現実とのずれが段階的に埋まります。自信の回復と職場への適応が進み、早期離職の防止にもつながることが、プリセプターシップの中心的な意義です。

4.プリセプティが中堅期になっても同じプリセプターが担当する。:プリセプターシップは、新人期に期間を限って行う支援です。あらかじめ定めた期間(病院看護では1年程度が多い)が終われば関係は終了し、職場全体の育成体制へ移ります。中堅期には、後輩の指導や地域の課題に取り組む活動の推進など、自らが育成や組織を支える側の役割を担うようになります。長期にわたり同じ先輩がキャリア全体を支える関係はメンターシップの特徴なので、取り違えないようにします。

覚えるポイント

  • プリセプターシップは、新人期に決まった先輩が一定期間、1対1で実践指導と精神的支援を行う方法です。
  • 最大のねらいは、リアリティショックの軽減による職場適応と早期離職の防止です。
  • リアリティショックは、基礎教育での理想・期待と就職後の現実とのずれで生じる衝撃反応です(看護職ではクレイマーの概念として有名)。
  • 担い手は新人に近い先輩や中堅期の保健師です。管理期の保健師は研修体制づくり、プリセプター支援、評価を担います。
  • 学習は新人主体の成人学習が基本で、プリセプターは一緒に目標を確認し助言する支援者です。
  • 混同に注意します。メンターシップは長期・キャリア全体の支援、チューターシップ(エルダー制)は決まった相談役、チーム支援型は職場全体で育てる方法です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。

解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。

学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。