111AM049|第111回 看護師国家試験 過去問
幻肢痛について正しいのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 4
正答
4.切断し喪失した部位に生じる。
この問題のポイント
四肢切断後に生じる痛みのうち、幻肢痛について、痛む場所、発症時期、原因、治療を問う知識問題です。幻肢痛は、すでに失われて存在しない部位に感じる痛みで、神経障害性疼痛として扱われます。切断端そのものの痛みである断端痛と区別できるかが鍵です。
解説
幻肢・幻肢痛・断端痛の区別
四肢を切断した後に、失ったはずの手足がまだあるように感じることを幻肢(幻肢感覚)といいます。切断後の多くの人が経験します。この幻肢に痛みを伴うものが幻肢痛です。焼けるような痛み、締めつけられるような痛み、電気が走るような痛みとして訴えられます。
一方、残っている切断端(断端)そのものに生じる痛みは断端痛です。手術創の痛み、創感染、血腫、切断された神経の端にできる腫瘤(ニューローマ)、義肢の不適合などが原因になります。
「幻肢痛」という語は「幻の肢の痛み」を意味します。痛む場所が「存在しない部位」である点が、正答を選ぶ最大の手がかりです。
発症時期と原因
幻肢痛は、切断によって部位を失った後に生じます。術後早期に出現することが多いものの、時間がたってから出現することもあります。経過とともに頻度や強さが軽くなることが多い一方で、長く続く例もあります。切断前から強い痛みがあった人は幻肢痛を生じやすく、切断前と似た痛みを幻肢に感じることもあります。
機序は完全には解明されていませんが、次のような神経系の変化が重なって生じると考えられています。
- 末梢:切断された神経の端にできる腫瘤(ニューローマ)が、異常な興奮を発する
- 脊髄:痛みの信号が伝わりやすくなる(中枢性感作)
- 大脳:失った部位を担当していた感覚野・運動野が再編成される(可塑的変化)
つまり、幻肢痛は細菌感染ではなく、神経系の変化による痛みです。心理的ストレスで悪化することはありますが、「気のせい」や「心因性」と片づけてよい痛みではありません。
治療と看護
薬物療法では、神経障害性疼痛に用いる鎮痛補助薬を使います。三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)や、プレガバリンなどのガバペンチノイドが代表です。必要に応じてオピオイドなどを併用します。
非薬物療法には次のようなものがあります。
- 鏡療法(ミラーセラピー):鏡に映した健側の手足を、失った側に見立てて動かす
- 経皮的電気神経刺激(TENS)
- 断端の脱感作
- 義肢の早期装着とリハビリテーション
看護では、まず術前に「切断後も手足があるように感じたり、痛んだりすることがある」と説明しておきます。これにより、術後の不安や混乱を軽くできます。術後に訴えがあれば、実在する痛みとして受けとめ、部位・性状・強さ・誘因を具体的に評価します。あわせて、断端の発赤・腫脹・熱感など、断端痛や感染を示す所見がないかも観察します。四肢の喪失はボディイメージの変化や喪失体験を伴うため、痛みへの対応と並行して心理的な支援も行います。
選択肢の確認
1.術前から発症する。:幻肢痛は、切断によって部位を失った後に、その存在しない部位に感じる痛みです。そのため、切断前に発症することはありません。ただし、切断前から続く強い痛みは幻肢痛の危険因子です。「術前の痛みが関係する」ことと「術前から発症する」ことを取り違えないようにします。
2.抗うつ薬は禁忌である。:三環系抗うつ薬は、痛みを抑える下行性の経路を強めることで神経障害性疼痛を和らげるため、幻肢痛の薬物療法の選択肢の一つです。うつ病の治療とは別に、鎮痛補助薬として使われています。幻肢痛があることで抗うつ薬が禁忌になるわけではありません。
3.細菌感染が原因である。:幻肢痛の原因は、切断された神経の端の異常な興奮や、脊髄・大脳の神経系の変化であり、細菌感染ではありません。断端に発赤・腫脹・熱感・排膿や発熱を伴う痛みがあれば、創感染による断端痛を疑い、幻肢痛とは区別して対応します。
4.切断し喪失した部位に生じる。:正答。幻肢痛は、切断によってすでに存在しない部位(失った手足の指先や足底など)に感じる痛みです。四肢切断のほか、乳房切除後など、身体の一部を失った後にも同じような現象が起こることがあります。
覚えるポイント
- 3つの用語を区別します。幻肢は失った部位がまだあるように感じる感覚、幻肢痛はその存在しない部位の痛み、断端痛は残った切断端そのものの痛み(創痛、感染、神経の端の腫瘤、義肢の不適合など)です。
- 幻肢痛は切断後に生じる神経障害性疼痛です。切断前の強い痛みは危険因子です。
- 治療は、三環系抗うつ薬・ガバペンチノイドなどの鎮痛補助薬、鏡療法、TENS、義肢の早期装着とリハビリテーションです。抗うつ薬は禁忌ではなく、治療薬の一つです。
- 看護では、術前から幻肢が起こりうることを説明し、術後は実在する痛みとして受けとめて評価します。ボディイメージの変化への支援も行います。
- 関連する断端管理も押さえます。弾性包帯は末梢から中枢へ巻いて断端の浮腫を防ぎます。大腿切断後は断端の下に枕を入れず、股関節の屈曲拘縮を防ぎます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。