111AM048|第111回 看護師国家試験 過去問
Aさん(32歳、男性)は慢性副鼻腔炎と診断され経過観察をしていたが、症状が改善せず手術を受けることになった。Aさんへの術後の生活についての説明で適切なのはどれか。
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正解: 2
正答
2.物が二重に見えるときは看護師に伝える。
この問題のポイント
慢性副鼻腔炎の手術後に守ってもらう生活上の注意と、自覚したらすぐ知らせてもらうべき合併症の症状を問う問題です。鍵は、副鼻腔が薄い骨を隔てて眼窩や頭蓋底に接しているという解剖です。そのうえで、術後出血を防ぎ、早く見つけるという視点から、分泌物の扱い・体位・入浴を判断します。
解説
慢性副鼻腔炎と手術
慢性副鼻腔炎は、副鼻腔の炎症が3か月以上続く状態です。鼻閉、膿性鼻漏、後鼻漏、嗅覚障害、頭重感などがみられます。治療は鼻処置、鼻洗浄、マクロライド少量長期療法などの保存療法から始めます。本問のAさんのように改善しない場合は手術を行います。現在の標準は内視鏡下鼻副鼻腔手術で、副鼻腔の自然口を広げ、病的な粘膜を取り除いて、換気と排泄の通り道を回復させます。
解剖から考える合併症
副鼻腔の周囲には重要な構造が集まっています。
- 篩骨洞と眼窩は、紙様板と呼ばれるきわめて薄い骨で隔てられています。上顎洞の上壁は眼窩の底です。
- 篩骨洞の天井は前頭蓋底にあたります。蝶形骨洞の近くには視神経と内頸動脈が走っています。
このため手術で眼窩の壁が損傷されると、次のような症状が出ることがあります。
- 内直筋が傷つくと、眼球運動障害による複視が起こります。
- 眼窩内に出血(眼窩内血腫)が起こると、眼瞼の腫脹、眼球突出、眼痛、視力低下が現れます。
眼窩内血腫が視神経を圧迫すると、失明につながるおそれがあります。早期発見と減圧処置が必要な緊急事態です。頭蓋底が損傷されると髄液漏が起こり、水のようにさらさらした鼻漏が出ます。髄液漏は髄膜炎の原因にもなります。
これらの異常は、患者本人にしか分からない自覚症状から見つかることが多いものです。そのため術前・術後の説明で、「物が二重に見える、見えにくい、目の周りが腫れる・痛む、水のような鼻水が止まらない、といったときはすぐ知らせてください」と具体的に伝えておきます。看護師は、術後の観察項目として眼症状と鼻漏の性状を確認します。
術後の生活上の注意(出血予防と観察)
術後は鼻腔にタンポン(パッキング)が入るため口呼吸になり、口腔が乾燥します。含嗽で乾燥を和らげます。そのほかの注意は次のとおりです。
- 咽頭に流れてきた分泌物は飲み込まずに吐き出してもらいます。出血の量と性状を観察するため、また血液を飲み込んで悪心・嘔吐が起こるのを防ぐためです。
- 臥床時は頭部を挙上し、頭頸部のうっ血を減らして出血と腫脹を抑えます。
- 鼻を強くかまない、いきまない、くしゃみは口を開けて逃がす、と説明します。いずれも鼻腔内の圧が上がって再出血するのを防ぐためです。
- 入浴、飲酒、激しい運動は血管を拡張させ、血圧を上げるため、医師の許可が出るまで控えます。
- 退院後も、鼻内処置や鼻洗浄のための通院が続くことを伝え、再発予防につなげます。
選択肢の確認
1.咽頭にたまった分泌物は飲み込んでも良い。:術後の咽頭の分泌物には、術創からの血液が混じります。飲み込むと出血の量や性状を観察できず、飲んだ血液が胃を刺激して悪心・嘔吐を招きます。嘔吐による静脈圧・腹圧の上昇は再出血の誘因にもなります。そのため、ガーグルベースンやティッシュを手元に置き、吐き出すよう説明します。口蓋扁桃摘出術後も同じ理由で吐き出してもらうので、あわせて覚えておきましょう。
2.物が二重に見えるときは看護師に伝える。:正答。複視は、紙様板の損傷に伴う内直筋の障害や眼窩内血腫など、眼窩内合併症のサインです。眼窩内血腫は視力障害や失明に進むおそれがあるため、早期の診察(眼科診察、CTなど)につなげる必要があります。自覚症状として患者から報告してもらうことが最も早い発見の手段になるため、説明として適切です。
3.手術当日から入浴が可能である。:入浴で温まると全身の血管が拡張して血流が増え、術創からの出血を招きます。手術当日は麻酔の影響もあり、安静が優先です。入浴は術後経過が安定し、医師の許可が出てから再開します。シャワーや洗髪も、許可された範囲で始めるよう説明します。
4.臥床時は頭部を低く保つ。:頭部を低くすると頭頸部の静脈圧が上がり、鼻・副鼻腔のうっ血、出血、腫脹が強まります。副鼻腔手術後は頭部を挙上した体位(セミファウラー位など)をとるのが基本です。ショック時の下肢挙上のように、脳や重要臓器への血流を保つための体位とは目的が異なるので、取り違えないようにしましょう。
覚えるポイント
- 副鼻腔は薄い骨を隔てて眼窩(紙様板・眼窩底)と頭蓋底に接しています。術後の「複視・視力低下・眼瞼腫脹」は眼窩内合併症、「水のような鼻漏」は髄液漏を疑い、すぐに報告してもらいます。
- 鼻・咽頭の術後に咽頭へ流れた分泌物や血液は、飲み込まずに吐き出してもらいます(出血の観察と嘔吐予防のため)。扁桃摘出術後も同じです。
- 頭頸部の術後は頭部挙上でうっ血・出血・腫脹を抑えます。
- 鼻をかまない、いきまない、くしゃみは口を開けて逃がす。いずれも鼻腔内圧の上昇による出血を防ぐためです。
- 入浴・飲酒・激しい運動は血管拡張で出血を招くため、医師の許可が出るまで控えます。
- 鼻腔パッキング中は口呼吸で口腔が乾燥するため、含嗽などの口腔ケアを行います。
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