111PM111|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。Aさん(35歳、男性、会社員)は妻(32歳、主婦)と子ども(2歳)と3人暮らし。5年前にうつ病 depression と診断された。半年前に営業部門に異動し、帰宅後も深夜まで仕事をする日が続いていた。「仕事のことが気になってしまい、焦りと不安ばかりが増して眠れない。会社に行くのが苦しい、入院させてもらえないか」と訴えがあり、休養と薬物の調整を目的として精神科病院に入院となった。入院後、Aさんから「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていたんです。薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と看護師に相談があった。Aさんのうつ症状は改善し、多職種で退院に向けた話し合いを始めた。会社の休職制度を利用し休んでいるAさんは、「薬が効いたので、今後も薬を飲み続けることが大切だと思っている。異動したばかりなので仕事に早く戻らなければと思うが、休職してからずっと入院しているので、すぐに働ける自信がない」と看護師に話した。退院に向けてAさんが利用する社会資源で適切なのはどれか。

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正解: 2

正答

2.リワーク支援

この問題のポイント

精神疾患で休職している会社員が、職場へ戻る準備のために使う社会資源を選ぶ問題です。判断の鍵は次の3点です。「会社の休職制度を利用し休んでいる」ので、雇用関係が続いています。「仕事に早く戻らなければ」と、復職の意欲があります。「すぐに働ける自信がない」ので、段階的な準備が必要です。各社会資源の対象者と目的を区別できれば、復職準備を目的とするリワーク支援を選べます。

解説

事例の整理

Aさんは35歳の会社員で、5年前にうつ病と診断されています。営業部門への異動後に深夜まで働く日が続き、不眠と不安が強まって入院しました。入院中に、服薬を自己中断していたことを打ち明けています。現在はうつ症状が改善し、「薬が効いたので飲み続けることが大切」と、服薬の必要性を自分で理解できるようになりました。多職種で退院に向けた話し合いを始めている段階です。

社会資源を選ぶうえで重要な情報は次のとおりです。

  • 退職しておらず、休職制度を利用しているため、会社との雇用関係が続いている
  • 異動したばかりの職場へ早く戻りたいという、復職の意欲がある
  • 休職後ずっと入院していたため、生活リズム・集中力・体力に不安があり、「すぐに働ける自信がない」

したがってAさんに必要なのは、新しい仕事を探す支援ではありません。一般就労が難しい人のための働く場でもありません。必要なのは、元の職場に戻るための段階的な準備です。

リワーク支援とは

リワーク支援(return to work)は、うつ病などの精神疾患で休職している人を対象とするプログラムです。目的は、職場復帰と復職後の再発予防です。主な実施主体は次の3つです。

  • 地域障害者職業センター:本人・事業主・主治医の三者の合意のもとで復職を支援し、事業主にも受け入れについて助言する
  • 医療機関:精神科デイケアなどの枠組みで行う、いわゆる医療リワーク
  • 企業:産業保健スタッフなどによる、自社での職場復帰支援

プログラムには次のような内容があります。

  • 決まった時間に通所して、生活リズムを整える
  • 事務作業などで、集中力と持久力を取り戻す
  • 集団での認知行動療法や心理教育で、ストレスへの対処や病気・薬についての理解を深める

リワーク支援では、実際の勤務に近い負荷を少しずつかけながら、「働ける」という自信を取り戻していけます。この点が、Aさんの不安に直接応えます。服薬継続を含む再発予防を学ぶ場にもなるため、服薬を自己中断した経緯があるAさんには特に意味があります。

なお、休職中の人が就労系の障害福祉サービスを使うのは例外的な扱いです。企業や医療機関によるリワーク支援を受けにくい場合などに、市町村が必要性を認めたときに限られます。この点からも、休職者の復職準備はリワーク支援が基本だと分かります。

職場復帰の流れと看護の視点

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、職場復帰までを5つのステップで示しています。

  • 第1:病気休業開始と休業中のケア
  • 第2:主治医による職場復帰可能の判断
  • 第3:職場復帰の可否の判断と職場復帰支援プランの作成
  • 第4:最終的な職場復帰の決定
  • 第5:職場復帰後のフォローアップ

リワーク支援は、主に休業中に、職場で働ける状態に近づける役割を担います。うつ病では、焦って早く復職すると再発しやすくなります。看護師は、「早く戻らなければ」という焦りと「自信がない」という不安の両方を受け止めることが大切です。そのうえで、準備を段階的に進められる社会資源につなぎ、主治医や職場と連携して復職の時期を判断していきます。

選択肢の確認

1.就労継続支援:障害者総合支援法に基づく訓練等給付の一つです。通常の事業所に雇用されることが難しい障害のある人に、働く機会や生産活動の場を提供し、能力向上のための訓練を行います。雇用契約を結ぶA型と、結ばないB型があります。Aさんは会社に籍があり、元の職場への復帰を目指しているので、対象にも目的にも合いません。一般就労を目指して訓練する就労移行支援(標準利用期間2年)と取り違えやすいので、「当面は一般就労が難しい人の働く場」と整理しておきましょう。

2.リワーク支援:正答。精神疾患で休職中の人が、元の職場への復帰と再発予防を目的に利用するプログラムです。生活リズムの安定、作業能力の回復、ストレス対処の習得を段階的に進められます。雇用関係を保ったまま休職し、「すぐに働ける自信がない」と話すAさんに最も適しています。

3.障害者社会適応訓練事業:精神障害のある人向けの事業です。かつては精神保健福祉法に規定されていました。いわゆる地域主権改革の第2次一括法(2011年成立)により、2012年度からは法律上の規定がなくなりました。現在は一般財源化され、都道府県が任意で実施する事業です。出題当時も、この法的位置づけでした。事業の内容は、通常の事業所に雇用されることが難しい精神障害のある人が、協力事業所(いわゆる職親)に一定期間通って作業をするものです。集中力、対人関係、職場の規律への適応など、社会生活への適応力を高めることを目的とします。雇用されていない人が社会参加や就労への足がかりを得るための事業なので、雇用関係を保ったまま元の職場への復帰を準備するAさんの状況には合いません。

4.ジョブコーチによる支援:ジョブコーチ(職場適応援助者)は、障害者雇用促進法に基づく職業リハビリテーションの一つです。支援者が実際の職場に出向き、本人には作業の進め方を指導し、事業主や同僚には障害特性や接し方を助言して、職場への定着を図ります。配置型・訪問型・企業在籍型があり、新しく就職するときだけでなく、在職中の職場適応にも使われます。ただし支援の場は職場そのもので、実際に働き始めてから行うものです。Aさんは退院前で、まず生活リズムや作業能力を整える段階にあります。そのため、最初に利用する資源とはいえません。

覚えるポイント

  • 雇用関係を保ったまま休職し、元の職場への復帰を目指す人には、リワーク支援が適しています。実施主体は、地域障害者職業センター、医療機関(医療リワーク)、企業です。
  • 就労継続支援は、通常の事業所での雇用が難しい人に働く場を提供するものです。A型は雇用契約あり、B型は雇用契約なしです。一般就労を目指して訓練する就労移行支援(標準2年)と区別しましょう。
  • ジョブコーチは、職場に出向いて本人・事業主・同僚を支援し、職場への定着を図る制度です。支援の場は「実際の職場」です。
  • 精神障害者の社会適応訓練事業は、協力事業所(職親)での訓練によって、社会生活への適応力を高める事業です。かつては精神保健福祉法に規定されていましたが、2012年度からは法律上の規定がなく、都道府県の任意事業です。
  • 職場復帰支援の手引きは5ステップです。休業中のケア → 主治医の判断 → 可否判断と支援プラン作成 → 最終決定 → 復帰後フォローアップ、の順に進みます。
  • 社会資源は、「雇用関係の有無」「本人の目標(復職か、新規就労か、福祉的就労か)」「現在の準備段階」の3点から選びます。

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