111PM112|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。Aさん(65歳、女性、要支援1)は1人暮らし。慢性心不全 chronic heart failure で定期的に外来受診していた。下肢の浮腫と息切れを自覚し、心不全の増悪があると診断されて入院となった。入院治療によって、両下肢に軽度の浮腫はあるが歩行による息切れは消失し、退院することになった。Aさんは退院後の生活について「近くのスーパーに歩いて買い物に行くのが楽しみですが、息切れが心配です。何に気をつけたらよいですか」と病棟看護師に話した。買い物についてAさんに助言する内容で最も適切なのはどれか。

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正解: 4

正答

4.途中で息切れを感じたら座って休む。

この問題のポイント

慢性心不全の増悪から回復して退院する人に、楽しみにしている徒歩での買い物を安全に続ける方法を助言する問題です。判断の手がかりは「歩行による息切れは消失」「歩いて買い物に行くのが楽しみ」「息切れが心配」の3点です。活動を取り上げるのではなく、症状を目安に自分で負荷を調節する方法を伝えるのが最も適切です。あわせて、重い荷物を持つ動作が心臓の負担になることも押さえておきます。

解説

まず、判断に必要な情報を整理します。

  • 65歳の女性で、要支援1、1人暮らしです。
  • 慢性心不全が増悪して入院しました。治療後、両下肢の軽度の浮腫は残っていますが、歩行による息切れは消失しています。
  • 本人は、近くのスーパーへ歩いて買い物に行くことを楽しみにしています。
  • 本人は、外出中に息切れが起こることを心配しています。

慢性心不全と身体活動の考え方
かつて心不全では安静が重視されていました。現在は、病状が安定していれば、歩行などの適度な有酸素運動が運動耐容能と生活の質(QOL)を改善すると考えられており、心臓リハビリテーションとして推奨されています。過度な安静を続けると下肢の筋力や運動耐容能が落ち、少しの動作でも息切れしやすくなります。その結果、活動がさらに減るという悪循環に陥ります。一方で、過度な負荷は心不全増悪の誘因になります。そのため、患者自身が体の反応を見ながら**「息切れが出ない範囲」で活動を続ける**ことが、退院後の自己管理の中心になります。

活動中の自己モニタリング
運動強度の目安としてよく用いられるのは、会話をしながら歩ける程度、または自覚的運動強度(ボルグスケール)で「楽である〜ややきつい」(11〜13程度)です。息切れ、動悸、胸痛、めまい、強い疲労感が出たら、活動を中止する合図です。その場で休み、呼吸が落ち着いてから再開するよう指導します。

座って休むことには、次の利点があります。

  • 立位よりも酸素消費量が少なく、心臓の仕事量を減らせます。
  • 上体を起こした姿勢のため、臥位と比べて静脈還流が増えにくく、肺うっ血を強めにくい姿勢です。
  • 息切れに伴うふらつきから転倒するのを防げます。1人暮らしのAさんにとって、外出先での転倒予防は特に重要です。

実践では、道中のベンチや店内の休憩場所を事前に確認しておく、ゆっくりしたペースで歩く、食後すぐの外出を避ける、といった工夫も一緒に伝えると具体的になります。また、休んでも治まらない息切れや胸痛があるときは、ためらわず受診や救急要請をするよう伝えることも欠かせません。

荷物の持ち方
重い物を持ち続ける動作は、筋肉の長さを変えずに力を入れ続ける等尺性運動です。息こらえを伴いやすく、血圧が急に上がって心臓の後負荷が増えます。心不全の人には、重い荷物を持つことそのものを減らす助言が適しています。たとえば、一度に買う量を減らして回数を分ける、キャリーカート(押し車)を使う、重い物だけ配達を利用する、といった方法です。

退院指導の全体像
本問は買い物に限った設問ですが、退院指導では次の内容も併せて伝えます。

  • 毎日同じ条件で体重を測ります。
  • 塩分を控え、内服を継続します。
  • 増悪のサインがあれば早めに受診します。サインは、短期間での体重増加、浮腫の悪化、労作時の息切れの悪化、夜間の呼吸困難や起座呼吸などです。

Aさんは要支援1のため、地域包括支援センターを通じた介護予防サービスなどの活用も視野に入ります。本人の楽しみと自己決定を尊重しながら、安全に生活を続けられるよう支えることが看護の役割です。

選択肢の確認

1.宅配サービスを利用する。:歩いて買い物に行くことを楽しみにしているAさんの希望に応えておらず、外出と歩行の機会そのものを減らしてしまいます。1人暮らしの高齢者にとって、買い物は日常の身体活動であり、社会とつながる機会でもあります。買い物をすべて宅配に置き換えると、活動量の低下や閉じこもりにつながります。米や飲料など重い物だけを配達してもらう部分的な併用なら有用ですが、「何に気をつけたらよいか」という質問への答えとして最も適切ではありません。

2.移動には車椅子を利用する。:治療によって歩行による息切れは消失しており、歩行を補助具で置き換える必要はない状態です。車椅子に頼ると下肢筋力と運動耐容能が低下し、かえって少しの動作で息切れしやすくなります。安静時にも症状があるなど、心機能が高度に低下している場合なら移動手段として検討されますが、Aさんには当てはまりません。

3.荷物は両手に分散して持つ。:荷物を両手に分けても、持つ重さの合計は変わりません。重い物を持つことは等尺性運動であり、血圧上昇と後負荷の増大を招く点に変わりはありません。左右のバランスは取れますが、両手がふさがるため、息切れやふらつきが起きたときに手すりにつかまったり手をついたりできず、転倒の危険が高まります。心不全の人には、買う量を減らす、カートを使うなど、持つ重さそのものを減らす助言が適しています。

4.途中で息切れを感じたら座って休む。:正答。息切れという自覚症状を目安に活動を中断し、心臓への負荷を自分で調節する方法です。楽しみである徒歩での買い物を続けながら、増悪と転倒を防げます。座位は立位より酸素消費が少なく、ふらつきによる転倒も防げるため、休む姿勢として適しています。「息切れが心配」というAさんの不安に対して、具体的な対処法を示す助言でもあります。

覚えるポイント

  • 安定した慢性心不全では、過度の安静よりも歩行などの適度な有酸素運動が勧められます。目安は、会話しながら続けられる程度、ボルグスケールで11〜13(楽である〜ややきつい)です。
  • 活動中の息切れ・動悸・胸痛・めまいは中止の合図です。座って休み、落ち着いてから再開します。休んでも改善しない場合は受診や救急要請をします。
  • 重い荷物を持つ、いきむなどの等尺性運動と息こらえは、血圧上昇と後負荷の増大を招きます。荷物は分散させるのではなく、量を減らしたりカートを使ったりします。
  • 増悪のサインは、短期間での体重増加(数日で2kg程度が目安)、浮腫の増強、労作時の息切れの悪化、夜間の呼吸困難、起座呼吸です。毎日同じ条件で体重を測ります。
  • NYHA分類は次のとおりです。I度は日常の身体活動で症状が出ません。II度は日常の活動で症状が出ます(軽度の制限)。III度は日常より軽い活動で症状が出ます(高度の制限)。IV度は安静時にも症状があります。
  • 退院指導では、本人の楽しみや希望を取り上げず、安全に続けるための具体的な方法を示すことが最も適切な助言になりやすいです。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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