111PM114|第111回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。Aさん(65歳、女性、要支援1)は1人暮らし。慢性心不全 chronic heart failure で定期的に外来受診していた。下肢の浮腫と息切れを自覚し、心不全の増悪があると診断されて入院となった。入院治療によって、両下肢に軽度の浮腫はあるが歩行による息切れは消失し、退院することになった。Aさんは退院後の生活について「近くのスーパーに歩いて買い物に行くのが楽しみですが、息切れが心配です。何に気をつけたらよいですか」と病棟看護師に話した。退院後3週、Aさんの浮腫は改善し心不全 heart failure の増悪もなかった。Aさんは「同年代の人との交流を広げたいと思っています。利用できるサービスはありますか」と訪問看護師に質問した。訪問看護師が地域包括支援センターに相談してAさんに提案する社会資源はどれか。
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正解: 1
正答
1.高齢者サロン
この問題のポイント
退院後に心不全が安定した要支援1の高齢者が「同年代の人との交流を広げたい」と希望したときに、その目的に合う社会資源を選ぶ問題です。Aさんが求めているのは医療的管理や機能訓練、住まいではなく、社会参加と交流です。この点を読み取り、各資源の対象者・目的・根拠となる制度を区別できるかが鍵になります。
解説
事例の整理
- 65歳の女性で、要支援1、1人暮らしです。介護保険の第1号被保険者で、要支援認定を受けています。
- 慢性心不全の増悪で入院しましたが、歩行による息切れは入院中に消失しました。退院後3週の時点で、浮腫は改善し、増悪もありません。
- 近くのスーパーまで歩いて買い物に行くことを楽しみにしており、歩行と外出は自立しています。
- 本人から「同年代の人との交流を広げたい」という希望が出ています。
この時点のAさんは、常に医療的な観察が必要な状態ではなく、日常生活に介助が必要な状態でもありません。1人暮らしの高齢者は外出の機会が減ると閉じこもりや社会的孤立に陥りやすく、それがフレイルや認知機能低下の要因にもなります。本人が自分から交流を望んでいることは大きな強みです。その意欲を地域とのつながりに結びつける資源を提案することが、訪問看護師に求められている役割です。
高齢者サロンとは
高齢者サロン(ふれあい・いきいきサロンなどとも呼ばれます)は、地域の住民やボランティアが主体となって公民館や集会所などに定期的に集まる通いの場です。お茶を飲みながらの会話、体操、趣味活動、季節の行事などを行います。立ち上げや運営は社会福祉協議会などが支援してきました。介護保険の地域支援事業である介護予防・日常生活支援総合事業の一般介護予防事業で、住民主体の通いの場として支援されることもあります。介護保険の給付サービスではないため、要介護認定の有無にかかわらず地域の高齢者が参加でき、交流、生きがいづくり、介護予防の場になります。
地域包括支援センターに相談する意味
地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置する機関で、運営の委託もできます。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置され、次の業務を担います。
- 総合相談支援
- 介護予防ケアマネジメント
- 権利擁護
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援
要支援者の介護予防支援も行っており、地域のサロンや通いの場など、制度外のインフォーマルな資源も含めた情報をもっています。訪問看護師がここに相談するのは、Aさんの住む地域で参加しやすい場を具体的に紹介してもらうためです。
心不全のある人の社会参加
心不全の再入院を防ぐには、服薬、塩分と水分の管理、体重測定、症状のセルフモニタリングを続けることが欠かせません。サロンへの参加は外出と適度な身体活動の機会になり、仲間との交流はセルフケアを続ける意欲にもつながります。一方で、体重が急に増えたり、浮腫や息切れが悪化したりしたときは、無理をせず受診する必要があります。退院前に病棟で確認した注意点を外出時にも守れるよう支援することが、在宅看護の大切な視点です。
選択肢の確認
1.高齢者サロン:正答。地域住民やボランティアが主体となって運営する通いの場で、会話や体操、趣味活動を通じて同年代の人と交流できます。認定の有無を問わず参加できるため、病状が安定し歩いて外出できるAさんの「交流を広げたい」という希望に最も直接応えられます。閉じこもりの予防や介護予防の効果も期待できます。
2.療養通所介護:難病などを有する重度の要介護者やがん末期の人など、常に看護師による観察を必要とする人を対象にした通所サービスで、看護師を中心に医療的な観察とケアを行います。出題当時は介護保険の地域密着型通所介護の一類型で、要介護者向けのサービスです。要支援1で病状も安定しているAさんは対象になりません。「看護師がいる通所サービスだから心不全の人に向いている」と考えないよう注意します。
3.通所リハビリテーション:医師の指示のもと、介護老人保健施設や病院・診療所などで、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が心身機能の維持・回復のための訓練を行うサービス(デイケア)です。要支援者も介護予防版を利用できますが、主な目的は機能訓練です。Aさんは歩いて買い物に行けるほど回復しており、機能訓練の必要性が高いとはいえません。交流を広げたいという希望に対して提案する資源としては適切ではありません。日常生活上の世話やレクリエーションを中心とする通所介護(デイサービス)との違いも押さえておきます。
4.共同生活援助〈グループホーム〉:障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(訓練等給付)で、障害のある人が共同生活を営む住居において、主に夜間に相談や日常生活上の援助を行う住まいの場です。Aさんは障害福祉サービスの対象として示されていません。また、1人暮らしを続けながら交流を広げたいと望んでいるので、住まいを移すサービスは希望に合いません。介護保険の認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者のグループホーム)と名称が似ているため、混同しないようにします。
覚えるポイント
- 社会資源は、本人のニーズ(交流、機能訓練、医療的観察、住まい)と、資源の目的・対象者を一致させて選びます。
- 高齢者サロンは住民主体の通いの場です。介護保険の給付ではなく認定の有無を問わず参加でき、社会的孤立の予防と介護予防に役立ちます。
- 療養通所介護は、常時看護師の観察が必要な重度の要介護者(難病、がん末期など)が対象で、要支援者は利用できません。
- 通所リハビリテーション(デイケア)は医師の指示による機能訓練が中心で、通所介護(デイサービス)は日常生活上の世話が中心です。
- 共同生活援助は障害者総合支援法のグループホーム、認知症対応型共同生活介護は介護保険の認知症グループホームです。
- 地域包括支援センターは市町村が設置し、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員が配置されています。介護予防と地域資源の相談窓口です。
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