111PM113|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。Aさん(65歳、女性、要支援1)は1人暮らし。慢性心不全 chronic heart failure で定期的に外来受診していた。下肢の浮腫と息切れを自覚し、心不全の増悪があると診断されて入院となった。入院治療によって、両下肢に軽度の浮腫はあるが歩行による息切れは消失し、退院することになった。Aさんは退院後の生活について「近くのスーパーに歩いて買い物に行くのが楽しみですが、息切れが心配です。何に気をつけたらよいですか」と病棟看護師に話した。退院後、心不全 heart failure の増悪を予防する目的で訪問看護を週に1回利用することになった。Aさんは夕方に下肢の浮腫が悪化するのを気にしており、訪問看護師に助言を求めた。訪問看護師のAさんへの助言で適切なのはどれか。

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正解: 2

正答

2.「外出時は弾性ストッキングを履きましょう」

この問題のポイント

慢性心不全で退院した在宅療養者に残る下肢の浮腫について、日常生活での対処法を助言する問題です。手がかりは「夕方に悪化する」「両下肢に軽度の浮腫」「歩いて買い物に行くのが楽しみ」の3点です。重力で下肢にたまった水分が心臓へ戻るのを助けながら、浮腫で傷つきやすくなった皮膚を守る方法を選びます。弾性ストッキングの原理、マッサージの方向、靴の選び方、湯たんぽによる低温熱傷の知識を組み合わせて判断します。

解説

事例から読み取ること

  • 65歳の女性で、1人暮らし、要支援1です。慢性心不全の増悪で入院しました。治療により歩行時の息切れは消えましたが、両下肢に軽度の浮腫が残っています。
  • 退院後は、心不全の増悪予防を目的に週1回の訪問看護を利用しています。
  • 夕方に下肢の浮腫が悪化することを気にしています。近くのスーパーへ歩いて買い物に行くことを楽しみにしています。

設問の時点では、息切れの再燃や急な体重増加は示されていません。心不全が落ち着いた状態で自宅生活を送っていると読み取れます。したがって、ここで求められているのは急変への対応ではありません。活動を制限せずに浮腫を悪化させない生活上の工夫が問われています。

夕方に浮腫が強くなる機序

心不全では心臓のポンプ機能が低下します。特に右心系にうっ血が生じると静脈圧が上がり、毛細血管の静水圧も上昇して、血管内の水分が間質へ漏れ出します。これが浮腫です。立位や座位では重力のため水分が下肢にたまりやすく、日中に活動するほど夕方に浮腫が強くなります。夜間に臥床すると水分は循環に戻るため、朝には軽くなります。このような日内変動があるため、対策の中心は「日中、下肢の静脈血が心臓へ戻るのを助けること」になります。

弾性ストッキングの効果と注意点

弾性ストッキングは段階的圧迫のしくみを持っています。足関節部の圧が最も高く、中枢に向かうほど低くなるように作られています。表在静脈の拡張を抑えることで、静脈血を深部静脈から心臓へ送り出しやすくします。歩行時には下腿の筋ポンプ作用も補強されるため、立ったり歩いたりする外出時に着用すると特に効果的です。

使用上の要点は次のとおりです。

  • 浮腫が最も軽い朝(起床時)に履きます。
  • しわ・たるみ・上端の折り返しは部分的な締め付けになるため、作らないようにします。
  • 皮膚の発赤、かぶれ、食い込み、しびれ、冷感を毎日観察します。
  • 重度の末梢動脈疾患、皮膚潰瘍や皮膚炎がある場合は禁忌または慎重使用です。コントロールされていない心不全でも同様で、静脈還流が急に増えて心臓への前負荷が増すためです。導入時は圧の強さも含めて医師に確認します。

Aさんは入院治療で状態が安定して退院に至っており、浮腫も軽度です。医師の了承のもとで外出時に着用すれば、楽しみにしている歩いての買い物を続けながら夕方の浮腫を抑えられます。一方、弾性ストッキングの着脱にはかなりの力が要ります。1人暮らしで要支援1のAさんが自分で着脱できるかを訪問看護師が確認し、必要に応じて着脱補助具の紹介も検討します。

浮腫のある皮膚を守る視点と在宅での支援

浮腫のある皮膚は引き伸ばされて薄く、組織の血流も乏しい状態です。そのため、摩擦や圧迫で傷つきやすく、治りにくく、感染も起こしやすくなっています。感覚も鈍くなりやすく、熱さや痛みに気づくのが遅れます。靴の選び方や湯たんぽの使い方は、この「皮膚の脆弱性」と「感覚の低下」を踏まえて判断します。

あわせて訪問看護では、次のような増悪予防の支援を行います。

  • 毎日同じ条件での体重測定
  • 塩分制限と服薬の継続
  • 浮腫・息切れ・夜間の呼吸苦の観察
  • 休息時に下肢を少し高くすること

急な体重増加や浮腫の急速な悪化があれば、早めに受診するよう伝えます。

選択肢の確認

1.「靴は大きめのサイズを選びましょう」:大きすぎる靴では歩くたびに足が靴の中で動き、摩擦による靴ずれや水疱が起こりやすくなります。浮腫のある皮膚は損傷しやすく治りにくいため、小さな傷でも潰瘍や感染につながるおそれがあります。脱げやすくつまずきの原因にもなり、転倒の危険も高まります。浮腫による足の大きさの変化には、足に合ったサイズで、面ファスナーや紐で締め具合を調節できる靴を勧めるのが適切です。「むくむから大きめに」と考えやすい点がひっかけです。

2.「外出時は弾性ストッキングを履きましょう」:正答。段階的圧迫で下肢の静脈還流を促し、重力によって日中に下肢へたまる浮腫を軽減します。歩行中は筋ポンプ作用も高まるため、Aさんが楽しみにしている買い物の外出時に着用するのは理にかなっています。朝に履くこと、しわを作らないこと、皮膚を観察すること、医師に確認して導入することもあわせて伝えます。

3.「下肢の中枢から末梢にマッサージしましょう」:還流を促すマッサージは、末梢(足先)から中枢(心臓側)へ向かってなでるように行います。中枢から末梢へ向かうと、組織の水分や血液を足先側へ押し戻すことになり、浮腫の軽減につながりません。清拭で末梢から中枢へ拭くのと同じ考え方で、方向を逆にしたひっかけです。浮腫の皮膚は傷つきやすいため、強くもまずにやさしく行うことも大切です。

4.「就寝時には湯たんぽを身体から2、3cm離して置きましょう」:浮腫のある下肢は感覚が鈍く、血流が乏しいため熱が組織から運び去られにくくなっています。そのため、比較的低い温度でも長時間接触すると低温熱傷を起こしやすい状態です。湯たんぽは身体から10cm程度離すのが基本で、2、3cmでは近すぎます。就寝中は寝返りで触れても気づきにくいため、就寝前に寝床を温めておき、寝るときには取り出す方法が最も安全です。

覚えるポイント

  • 心不全による下肢の浮腫は、重力の影響で夕方に強く、朝に軽くなります。日中は静脈還流を助け、休息時は下肢を挙上します。
  • 弾性ストッキングは足関節部が最も強い段階的圧迫です。浮腫の少ない朝に履き、しわや折り返しを作らず、皮膚を毎日観察します。重度の末梢動脈疾患や不安定な心不全では禁忌または慎重使用です。
  • 浮腫の皮膚は薄く脆弱で感覚も低下しており、摩擦・圧迫・熱に弱い状態です。靴は大きめではなく、足に合い締め具合を調節できるものを選びます。
  • マッサージや清拭は末梢から中枢へ向かって行います。
  • 湯たんぽは身体から10cm程度離します。感覚低下や浮腫がある人には、就寝前に寝床を温めて就寝時は取り出すよう助言します。
  • 在宅での心不全管理は、毎日の体重測定、塩分制限、服薬継続が柱です。急な体重増加、浮腫の悪化、息切れの出現は早めに受診するサインです。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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