111PM034|第111回 看護師国家試験 過去問
クリティカル・シンキングで適切なのはどれか。
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正解: 2
正答
2.根拠に基づいて考える。
この問題のポイント
看護の思考の基本であるクリティカル・シンキング(批判的思考)の意味を問う問題です。「批判的」という訳語から「否定する」と連想させる選択肢が置かれています。本来は「根拠を吟味し、筋道を立てて合理的に判断する思考」であると理解していれば、迷わず解けます。あわせて、主観的情報や直感が看護判断の中でどう位置づけられるかを押さえると、類題にも対応できます。
解説
クリティカル・シンキングとは
クリティカル・シンキングは、情報や主張をそのまま受け入れない思考です。例えば次のような問いを意識的に立てながら、論理的・合理的に結論を導きます。
- 根拠は何か
- その根拠は信頼できるか
- 前提に思い込みはないか
- ほかの解釈や可能性はないか
何を信じ、何を行うかを決めるための「合理的で省察的な思考」と説明されることもあります。英語のcriticalは「見分ける・判断する」を意味するギリシャ語に由来し、「よく吟味して評価する」という意味合いを持ちます。ここでいう批判は相手を否定することではなく、根拠に照らして妥当性を検討することを指します。吟味する対象は他人の意見だけではありません。自分自身の考えや判断の過程も含まれる点が重要です。
クリティカル・シンキングの構成要素は、論者によって整理の仕方が異なり、決まった数の項目があるわけではありません。看護で特に重視される姿勢・技能としては、次のようなものが挙げられます。
- 事実(観察したデータ)と推論・解釈を区別する
- 情報の出どころと信頼性を確かめる
- 自分の前提や先入観に気づく
- 複数の可能性を挙げて比較検討する
- 結論と根拠のつながりが論理的かを確かめる
- 判断を振り返り、新しい情報が得られれば修正する
看護実践との関係
クリティカル・シンキングは、看護過程のアセスメント、看護問題の明確化、計画立案、実施、評価のすべての段階で求められます。
例えば、夜間に落ち着かない高齢患者を見て「認知症の症状だろう」と即断するのは適切ではありません。まず可能性を幅広く挙げます。疼痛、低酸素、発熱や感染、脱水、排泄の欲求、薬剤の影響、環境の変化などで、これらはせん妄の引き金にもなりえます。そのうえで、バイタルサイン、表情、本人の訴え、検査データを確かめて原因を絞り込みます。これがクリティカル・シンキングの実践です。思い込みによる見落としを防ぎ、患者の安全を守ることに直結します。
根拠に基づく看護(EBN)も、この思考を土台にしています。EBNでは、研究などから得られる最良のエビデンス、看護師の臨床的な専門性、患者の価値観や意向を統合して判断します。エビデンスの質を吟味し、目の前の患者に適用できるかを検討する過程そのものが、クリティカル・シンキングです。
主観的情報と直感の位置づけ
主観的情報(S:患者の訴えや感じ方)と客観的情報(O:観察・測定・検査の結果)は、どちらもアセスメントに欠かせません。クリティカル・シンキングでは、どちらか一方に偏らず、両者を突き合わせて整合性を確かめます。
直感については、ベナーがドレイファスの技能習得モデルを看護に当てはめ、看護師の臨床実践能力を5段階(初心者・新人・一人前・中堅・達人)で示しました。達人は豊富な経験を背景に、直観的に状況を把握するとされます。これは単なる思いつきとは異なります。看護判断では、直感を「何かおかしい」と気づく入口として生かします。そこで判断を終えず、観察やデータで根拠を確かめる過程へつなげることが求められます。
このように、クリティカル・シンキングの核心は根拠の吟味にあります。初めから否定的に構える、主観的な情報を優先する、直感だけで結論を出す、といった考え方は、いずれも先入観や偏りに左右されやすいものです。根拠を吟味する過程を欠くため、クリティカル・シンキングの説明としては適切ではありません。
選択肢の確認
1.物事を否定的にみる。:「批判的思考」という訳語から連想しやすい誤解で、クリティカル・シンキングは対象を否定したり、あら探しをしたりする思考ではありません。求められるのは、うのみにせず根拠を確かめる「健全な懐疑心」です。根拠が確かであれば、その主張を肯定的に受け入れます。初めから否定的に構えることは、それ自体が先入観による偏った見方であり、根拠に基づく判断とは相いれません。
2.根拠に基づいて考える。:正答。根拠は何か、その根拠は信頼できるか、ほかの可能性はないかを吟味しながら、筋道を立てて結論を導くことがクリティカル・シンキングの本質です。事実と解釈を区別し、自分の前提も問い直すことが含まれます。看護過程のすべての段階での判断や、EBNの実践を支える思考です。
3.主観的な情報を重視する。:クリティカル・シンキングは特定の種類の情報を優先する考え方ではなく、主観的情報と客観的情報の両方を集めて突き合わせ、矛盾がないかを確かめる思考です。患者の訴えは重要なデータであり、軽視してはいけません。しかし、例えば「痛くない」という訴えがあっても、表情のゆがみ、頻脈、体動の制限などの所見と食い違えば、その理由を検討する必要があります。本人の訴えを尊重することと、一方の情報だけに頼って判断することは、区別して考えます。看護師自身の印象や感情といった主観に頼って判断することも、同様に避けるべきです。
4.直感的に状況を判断する。:直感だけで結論を出すことは、根拠を意識的に吟味するクリティカル・シンキングとは異なる判断の仕方です。熟練した看護師の直感は、異変に早く気づくのに役立つことがあります。一方で直感は、最初の印象に引きずられる思い込みや、自分の考えに合う情報だけを集めてしまう偏り(確証バイアス)の影響を受けやすいものです。直感で気づいたことは、観察やデータで裏づけを取ってから判断につなげます。
覚えるポイント
- クリティカル・シンキングは、根拠を吟味して論理的・合理的に考える思考です。「批判的」は「否定的」という意味ではありません。
- 吟味の代表的な問いには「根拠は何か」「その根拠は信頼できるか」「前提に思い込みはないか」「ほかの可能性はないか」などがあります。他人の意見だけでなく、自分自身の考えや判断も吟味の対象になります(省察)。
- 主観的情報(S)と客観的情報(O)はどちらも重要です。一方に偏らず、突き合わせて整合性を確かめます。
- 直感は気づきの入口として生かし、必ず根拠で確かめます。ベナーの5段階(初心者・新人・一人前・中堅・達人)では、達人は豊富な経験を背景に、直観的に状況を把握できるとされます。
- クリティカル・シンキングは、看護過程のすべての段階と、根拠に基づく看護(EBN)の基盤となる思考です。
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