111PM038|第111回 看護師国家試験 過去問
点眼薬の投与について正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.眼から溢れた薬液は拭き取る。
この問題のポイント
点眼の基本手技を問う問題です。「どこに落とすか(下結膜嚢)」「容器をどう扱うか(どこにも触れさせない)」「落とした後に何をするか(閉眼・涙嚢部の圧迫・溢れた薬液の除去)」の3つの場面に分けて考えると、各選択肢の正誤を根拠をもって判断できます。どの手順も、薬効を確保することと、感染や副作用を防ぐことの2つの目的から説明できます。
解説
滴下の位置と容器の扱い
点眼の前には手指衛生を行い、患者氏名、薬剤名、左右どちらの眼か、使用期限と開封後の期間を確認します。眼脂があれば、清潔な綿やガーゼで目頭から目尻へ拭き取ります。
滴下の手順は次のとおりです。
- 患者に頭部を軽く後ろに傾けてもらいます。
- 下眼瞼を指で軽く下方に引き、上方を見てもらいます。
- 露出した袋状のくぼみ(下結膜嚢)に1滴落とします。
角膜は知覚神経が密に分布していて非常に敏感です。角膜に直接落とすと、刺激で瞬目反射(まばたき)や流涙が起こり、薬液がすぐに押し出されてしまいます。上方を見てもらうのは、角膜を上に逃がして直接の滴下を避けるためでもあります。結膜嚢が保持できる量はごくわずかで、1滴でほぼ満たされます。そのため通常は1滴で足り、何滴も落としても溢れるだけです。
容器の先端は、睫毛・眼瞼・結膜・角膜のいずれにも触れさせません。先端が触れると、涙液や眼表面の細菌が容器内に入り込み、残りの薬液が汚染されます。その結果、次回以降の点眼で感染を起こすおそれがあります。先端で眼表面を傷つける危険もあります。容器を持つ手を患者の額に軽く添えると、先端が眼に触れるのを防ぎやすくなります。
点眼後の処置
点眼した薬液は、涙点から涙小管・涙嚢・鼻涙管を経て鼻腔へ流れ、鼻粘膜から吸収されて全身循環に入ります。そこで点眼後は静かに眼を閉じてもらい、目頭(涙嚢部)を1〜5分程度軽く押さえます。こうして鼻涙管への流出を抑えると、薬液が眼にとどまって効果が高まり、全身性の副作用も減らせます。まばたきを繰り返すと薬液が鼻涙管へ送り出されやすくなるため、点眼後にまばたきをする必要はありません。
全身性の副作用の代表例は、緑内障に用いるβ遮断薬の点眼です。点眼薬であっても全身に吸収されると徐脈や気管支喘息の悪化を起こすことがあり、気管支喘息のある人には禁忌とされています。
溢れた薬液は、清潔なティッシュやガーゼで軽く拭き取ります。薬液が眼瞼の皮膚に残ると、かぶれ(接触皮膚炎)の原因になります。緑内障治療薬のプロスタグランジン関連薬では、眼の周囲に付着したままにすると眼瞼の色素沈着などが起こることがあります。拭くときは眼球を押さないよう、眼瞼の周囲をそっと押さえるようにします。
複数の点眼薬を使うとき
先に点眼した薬が後の薬で洗い流されないよう、5分以上の間隔をあけます。順序は、水溶性の点眼薬を先に、懸濁性の点眼薬を後にし、眼軟膏は最後にします。両眼に点眼し、片眼だけに感染がある場合は、健側から先に行って感染の拡大を防ぎます。
これらの手順は、看護師が行う点眼だけでなく、緑内障などで長期に自己点眼を続ける患者、特に高齢者への指導内容そのものです。
選択肢の確認
1.点眼時は上眼瞼を上げる。:点眼では、下眼瞼を軽く下方に引いて下結膜嚢を露出させ、そこに滴下するのが正しい方法です。上眼瞼を上げると滴下位置が角膜上になりやすくなります。敏感な角膜が刺激されると瞬目や流涙が起こり、薬液が流れ出てしまいます。上下の眼瞼を指で開くのは洗眼の場面、上眼瞼を持ち上げて裏返すのは上眼瞼結膜の観察(眼瞼翻転)の場面です。点眼の手技と混同しないようにします。
2.点眼容器の先端は眼瞼結膜に当てる。:点眼容器の先端は、睫毛・眼瞼・結膜・角膜のどこにも触れさせないのが原則です。先端が眼瞼結膜に触れると、涙液や細菌が容器内に入り込んで薬液が汚染され、以後の点眼で感染を起こす原因になります。眼表面を傷つけるおそれもあります。「下眼瞼結膜(下結膜嚢)に落とす」という滴下位置の知識を、「先端を当てる」と取り違えないことが大切です。
3.点眼後は眼球を圧迫する。:点眼後に軽く押さえるのは目頭の涙嚢部であり、眼球ではありません。涙嚢部を押さえるのは、鼻涙管への流出を防いで薬効を保ち、全身吸収による副作用を減らすためです。眼球を圧迫すると眼圧が上がり、眼疾患や眼の手術後では損傷や出血につながるおそれがあります。また、眼球心臓反射(アシュネル反射)による徐脈を起こすこともあるため、眼球は押さえません。
4.眼から溢れた薬液は拭き取る。:正答。溢れた薬液は、清潔なティッシュやガーゼで軽く拭き取ります。皮膚に残った薬液は接触皮膚炎の原因となり、プロスタグランジン関連薬では眼瞼の色素沈着を起こすことがあるためです。拭くときは眼球を押さず、眼瞼の周囲をそっと押さえるように行います。
覚えるポイント
- 点眼は「下眼瞼を下に引き、上を見てもらい、下結膜嚢に1滴」です。敏感な角膜には直接落としません。
- 容器の先端はどこにも触れさせません。目的は薬液の汚染と感染、眼の外傷を防ぐことです。
- 点眼後は閉眼し、目頭の涙嚢部を1〜5分程度軽く押さえます。眼球は圧迫せず、まばたきも繰り返させません。
- 溢れた薬液は拭き取ります。プロスタグランジン関連薬は色素沈着に注意します。β遮断薬は全身に吸収されると徐脈や喘息悪化を起こすことがあります。
- 複数の点眼薬は5分以上あけ、水溶性、懸濁性、眼軟膏の順に使います。片眼だけ感染している場合は健側から点眼します。
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