111PM039|第111回 看護師国家試験 過去問

52歳の女性が上腹部痛と吐血を主訴に受診し輸血を行うこととなった。輸血時の対応で正しいのはどれか。

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正解: 3

正答

3.クロスマッチ検査の結果を医師と看護師で確認する。

この問題のポイント

吐血による消化管出血で輸血を行う事例です。ただし問われているのは疾患の知識ではなく、輸血療法の基本手順です。判断の鍵は次の2点です。

  • 輸血で最も重大な事故であるABO不適合輸血を、「取り違えを防ぐ照合」と「開始直後の観察」で防ぐという考え方
  • 製剤ごとに異なる保存方法と準備方法

解説

輸血事故の多くは「取り違え」から起こる

輸血で最も重大な事故はABO不適合輸血です。患者がもともと持っている抗A・抗B抗体(規則抗体)が、輸血された赤血球と反応して血管内溶血を起こします。そこからショック、DIC、急性腎障害に進み、死亡することもあります。

原因の多くは検査技術の誤りではなく、患者・検体・製剤の取り違えという人為的ミスです。そのため厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」では、複数の段階で確認を重ねる手順が示されています。

  • 検体採取:血液型は、同じ患者から異なる時点で採血した2検体で確認します。交差適合試験(クロスマッチ)の検体も、血液型検査の検体とは別に採血します。
  • 照合:製剤を受け取るときと、ベッドサイドで輸血を始める直前に照合します。医師と看護師など2名で、交付伝票・製剤ラベル・患者のリストバンドを突き合わせ、声に出して読み合わせます。確認する項目は、患者氏名、血液型、製剤の種類、製造番号、有効期限、交差適合試験の結果、放射線照射の有無などです。バーコードによる電子照合を併用する施設も増えています。
  • 投与経路:ろ過装置の付いた専用の輸血セットを使い、他の薬剤とは混注しません。

交差適合試験の結果は「この製剤をこの患者に輸血してよい」ことを示す最終的な根拠です。そのため、1人の確認ではなく2名で確認することが求められます。

観察は開始直後から始める

ABO不適合輸血による急性溶血反応やアナフィラキシーは、少量の輸血でも数分以内に起こりえます。そのため、次のように進めます。

  • 成人では、開始から10〜15分間は1分間に1 mL程度の遅い速度で滴下し、その後は1分間に5 mL程度にします。
  • 開始後5分間はベッドサイドを離れずに観察します。
  • 15分程度たった時点で再び観察し、その後も適宜観察します。
  • 終了時と終了後にも観察し、記録を残します。

観察項目は、発熱、悪寒・戦慄、血管痛、胸痛・腹痛・腰背部痛、呼吸困難、じんま疹、血圧低下、頻脈、ヘモグロビン尿などです。異常があればただちに輸血を中止し、静脈路は確保したまま医師に報告します。

遅れて出る副反応にも注意が必要です。

  • 輸血関連急性肺障害(TRALI):輸血後6時間以内に呼吸困難や低酸素血症が起こります。
  • 遅発性溶血反応:輸血後24時間以降に起こります。
  • 輸血後GVHD:放射線照射製剤の使用で予防します。

製剤ごとの保存と準備

  • 赤血球製剤:2〜6 ℃で血液専用保冷庫に保存します。凍結していないので融解は不要で、原則として加温もしません。
  • 新鮮凍結血漿:−20 ℃以下で凍結保存します。使うときに30〜37 ℃の恒温槽などで融解し、融解後は速やかに使用します。
  • 濃厚血小板:20〜24 ℃で振とうしながら保存し、冷蔵はしません。

この事例での実践

吐血を伴う上部消化管出血では、出血量によって循環血液量減少性ショックに急速に進むことがあります。輸血中は副反応に加えて、次のような出血が続いている徴候もあわせて観察します。

  • バイタルサインの変化
  • 意識状態
  • 再吐血や下血

危機的出血で交差適合試験の結果を待てない場合は、O型の赤血球製剤を用いることがあります。その場合も、照合と開始直後の観察という原則は変わりません。

選択肢の確認

1.赤血球製剤を30〜37 ℃で融解する。:赤血球製剤は凍結されておらず、2〜6 ℃で冷蔵保存される製剤なので、融解という操作はありません。30〜37 ℃の温度で融かして使うのは、−20 ℃以下で凍結保存されている新鮮凍結血漿です。製剤の種類を取り違えやすい選択肢です。また、赤血球製剤をお湯などで不適切に温めると溶血の原因になります。急速大量輸血などで加温が必要な場合は、専用の輸血用加温器を使います。

2.血液型検査とクロスマッチ検査用の採血を同時に行う。:1回の採血で両方の検体をとると、その採血で患者を取り違えたときに、両方の検査が同じ誤った検体で行われてしまいます。その結果、血液型とクロスマッチの結果が矛盾なく一致し、誤りに気づけません。指針では、クロスマッチ用の検体は血液型検査の検体とは別の時点で採血することとされています。血液型そのものも、異なる時点の2検体で確認します。

3.クロスマッチ検査の結果を医師と看護師で確認する。:正答。交差適合試験の結果は、輸血してよい製剤かどうかを判断する最終的な根拠です。医師と看護師など2名で、この結果とあわせて患者氏名、血液型、製剤の種類・製造番号・有効期限などを、伝票・製剤・患者と突き合わせて確認します。1人の見落としを互いに補うことで、取り違えによる不適合輸血を防ぎます。

4.輸血開始から15分後にアレルギー反応の初回観察を行う。:急性溶血反応やアナフィラキシーは開始から数分以内に起こりうるため、観察は開始直後から始めなければなりません。開始後5分間はベッドサイドで観察を続け、開始から15分後は2回目の観察にあたります。15分後を初回にすると、最も危険な時間帯を見逃してしまいます。

覚えるポイント

  • 血液型は異なる時点の2検体で確認し、クロスマッチ用の検体も血液型検査とは別の時点で採血する。
  • 照合は医師と看護師など2名で行い、受け取り時とベッドサイドの開始直前に、患者・伝票・製剤を声に出して読み合わせる。
  • 観察は開始直後から行う。開始後5分間はベッドサイドを離れず、15分後に再び観察する。最初の10〜15分は1 mL/分程度でゆっくり滴下する。
  • 保存温度は、赤血球2〜6 ℃(融解不要)、新鮮凍結血漿−20 ℃以下(30〜37 ℃で融解)、血小板20〜24 ℃で振とう(冷蔵しない)。
  • 輸血後GVHDは放射線照射製剤で予防する。TRALIは輸血後6時間以内の呼吸困難・低酸素血症に注意する。
  • 副反応を疑ったら、ただちに輸血を中止し、静脈路を確保して医師に報告する。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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