111PM079|第111回 看護師国家試験 過去問

採血時に操作を誤ったため溶血し、採血管内の血漿が暗赤色になってしまった。この血漿の電解質濃度を測定したときに、本来の値よりも高くなるのはどれか。

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正解: 3

正答

3.カリウムイオン

この問題のポイント

溶血とは赤血球が壊れて内容物が血漿中に出てくることで、血漿が暗赤色になるのは遊離したヘモグロビンの色です。問われているのは「赤血球の中に、血漿よりはるかに高い濃度で存在する電解質はどれか」、つまり細胞内液と細胞外液の組成の違いです。細胞内液の主な陽イオンはカリウムイオン、細胞外液の主な陽イオンはナトリウムイオン、という基本が判断の鍵になります。

解説

問題文の手がかり

「採血時に操作を誤った」「溶血」「血漿が暗赤色」の3点から、採血の手技によって赤血球膜が壊れ、赤血球内の成分が血漿に出てきた状況だと読み取れます。通常の血漿は淡黄色ですが、ヘモグロビンが漏れ出ると赤色から暗赤色に着色します。

このとき測定値は次のように変化します。

  • 赤血球内の濃度が血漿より高い物質は、血漿中の値を押し上げます。
  • 赤血球内の濃度が血漿より低い物質は、上昇せず、むしろ薄められる方向に働きます。

細胞内液と細胞外液の電解質組成

  • 細胞外液(血漿・間質液):主な陽イオンはナトリウムイオン、主な陰イオンは塩化物イオンと重炭酸イオンです。カリウムイオンは血清で3.5〜5.0 mEq/L程度と低く保たれています。
  • 細胞内液:主な陽イオンはカリウムイオンで、マグネシウムイオンも多く含まれます。主な陰イオンはリン酸イオンとたんぱく質です。

赤血球も同様で、細胞内のカリウムイオン濃度は血漿の20倍以上あります。一方、ナトリウムイオン、塩化物イオン、重炭酸イオンは赤血球内のほうが低く、カルシウムイオンは赤血球内にはごくわずかしか存在しません。

この濃度差を保っているのが細胞膜の**Na⁺/K⁺-ATPase(ナトリウム-カリウムポンプ)**です。ATPのエネルギーを使い、ナトリウムイオンを細胞外へくみ出し、カリウムイオンを細胞内へ取り込む能動輸送を行っています。

正答に至る判断

溶血すると、赤血球内の高濃度のカリウムイオンが血漿に流れ込みます。そのため測定値は本来より高くなります。これを偽性高カリウム血症といいます。ほかの4つの電解質は、いずれも赤血球内の濃度が血漿より低いため、溶血によって上昇することはありません。

臨床での意味

カリウムの異常は致死的な不整脈に直結するため、カリウム値は臨床的に重視される検査項目です。溶血による偽高値を真の高カリウム血症と取り違えると、不要な治療が行われ、低血糖などの害を招くおそれがあります。検体が溶血していれば、その旨を検査結果とともに伝え、再採血を検討します。溶血した検体では、ほかに乳酸脱水素酵素(LD)やASTも赤血球由来の分が加わって高値になります。

溶血の多くは採血手技で防げます。

  • 細すぎる針を使わない。
  • シリンジで強い陰圧をかけて吸引しない。
  • シリンジから採血管へ移すときに勢いよく押し出さない。
  • 採血管は激しく振らず、静かに転倒混和する。
  • 消毒用アルコールが乾いてから穿刺する。

また、溶血がなくてもカリウムが高く出ることがあります。原因は、採血中に手を繰り返し握ったり開いたりさせること(クレンチング)、長時間の駆血、全血のままの長時間放置や冷蔵保存です。冷蔵保存では低温でナトリウム-カリウムポンプが働かなくなり、カリウムが赤血球外へ漏れ出ます。駆血は短時間(1分程度以内を目安)にとどめます。

選択肢の確認

1.塩化物イオン:塩化物イオンは細胞外液の主要な陰イオンで、赤血球内の濃度は血漿より低いです。そのため、溶血しても測定値は上昇せず、わずかに薄められる方向に働きます。塩化物イオンが高値になるのは、脱水や高クロール性の代謝性アシドーシスなど、体内の実際の変化がある場合です。

2.重炭酸イオン:重炭酸イオンは細胞外液の主要な陰イオンであり、酸塩基平衡の緩衝の中心です。赤血球内では炭酸脱水酵素によって重炭酸イオンが作られますが、塩化物イオンとの交換(クロライドシフト)で血漿へ出ていくため、赤血球内の濃度は血漿より低くなっています。溶血しても測定値は上がりません。

3.カリウムイオン:正答。カリウムイオンは細胞内液の主要な陽イオンで、赤血球内には血漿の20倍以上の濃度で存在します。溶血すると血漿へ大量に流れ出るため、本来より高い値(偽性高カリウム血症)になります。

4.カルシウムイオン:赤血球内のカルシウムイオンは、ポンプによって細胞外へ排出され、ごく低濃度に保たれています。溶血しても血漿中の値が上がることはありません。検体の取り扱いでカルシウムが偽って変化する例としては、EDTA入り採血管の内容物の混入があります。EDTAがカルシウムと結合するため、カルシウムは低値になります(EDTA-2Kの場合はカリウムが高値になります)。

5.ナトリウムイオン:ナトリウムイオンは細胞外液の主要な陽イオンです。ナトリウム-カリウムポンプで細胞外へくみ出されているため、赤血球内の濃度は血漿よりずっと低くなっています。溶血で上昇することはなく、ポンプによる輸送の向きをカリウムと取り違えないことが大切です。

覚えるポイント

  • 細胞内液の主な陽イオンはカリウムイオン、細胞外液の主な陽イオンはナトリウムイオンです。主な陰イオンは、細胞外液が塩化物イオンと重炭酸イオン、細胞内液がリン酸イオンとたんぱく質です。
  • 濃度差は、Na⁺/K⁺-ATPaseによる能動輸送(ナトリウムを外へ、カリウムを中へ)で維持されています。
  • 溶血で偽高値になる代表は、カリウム、LD、ASTです。検体が溶血していたら再採血を検討します。
  • 血清カリウムの基準値は3.5〜5.0 mEq/L程度で、高カリウム血症は致死的不整脈の危険があります。
  • カリウムの偽高値の原因には、溶血のほか、クレンチング、長時間駆血、全血の冷蔵保存や放置、EDTA-2Kの混入があります(EDTA混入ではカルシウムは低値)。
  • 溶血を防ぐには、細すぎる針や強い陰圧を避け、アルコールの乾燥を待ってから穿刺し、採血管は静かに転倒混和します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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