111PM078|第111回 看護師国家試験 過去問
股関節を屈曲させるのはどれか。
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正解: 5
正答
5.腸腰筋
この問題のポイント
股関節の運動(屈曲・伸展・外転など)と、それを担う主な筋の組み合わせを問う問題です。筋が股関節の前後左右のどこを通り、どこに停止するかがわかれば、作用は推測できます。股関節の前面を通って大腿骨の小転子に停止する腸腰筋が、屈曲の主動作筋です。殿部の筋は伸展や外転に、大腿後面の筋は股関節の伸展と膝関節の屈曲に働くと整理できるかが鍵になります。
解説
股関節の運動と筋の位置関係
股関節は、寛骨臼と大腿骨頭からなる球関節で、関節窩の深い臼状関節に分類されます。屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋という3軸の運動ができます。
- 屈曲:大腿を前方へ持ち上げ、膝を胸に近づける動きです。
- 伸展:大腿を後方へ引く動きで、屈曲の逆です。
股関節では、前面を通る筋は屈曲、後面を通る筋は伸展、外側を通る筋は外転、内側を通る筋は内転に働くのが原則です。この原則を使えば、選択肢の各筋が股関節にどう働くかを、丸暗記に頼らずに判断できます。
ただし、「前面の筋が屈曲に働く」という関係は、すべての関節に当てはまるわけではありません。膝関節では逆に、後面を通るハムストリングス(大腿二頭筋など)が屈曲に働き、前面を通る大腿四頭筋が伸展に働きます。膝関節の屈曲は、かかとを殿部に近づける動き、つまり下腿を後方へ曲げる動きだからです。「関節を曲げたときに骨どうしが近づく側を通る筋が屈曲に働く」と考えると、股関節にも膝関節にも同じように使えます。
腸腰筋の構造と作用
腸腰筋は、主に次の2つの筋が合わさったものです。
- 大腰筋:第12胸椎と腰椎の椎体の側面、および腰椎の横突起から起こります。
- 腸骨筋:腸骨の内面(腸骨窩)から起こります。
2つの筋は合流して鼠径靱帯の下をくぐり、股関節の前面を通って大腿骨の小転子に停止します。股関節の前面を走るため、収縮すると大腿を前上方へ引き上げ、股関節を屈曲させます。股関節の屈曲では最も強力な主動作筋です。
実際の動作では、歩行で脚を前へ振り出すとき(遊脚期)や、階段で脚を持ち上げるときに働きます。大腿を固定した状態では、体幹と骨盤を前へ倒す方向に作用します。そのため、仰臥位から上体を起こす動作にも関わります。
股関節の屈曲を補助する筋には、大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋、恥骨筋があります。いずれも股関節の前方を通る筋です。
看護の実践とのつながり
- 屈曲拘縮:長期臥床やセミファウラー位、車椅子での座位が長く続くと、股関節が曲がった姿勢のまま腸腰筋が短縮し、股関節の屈曲拘縮を起こしやすくなります。予防には伸展方向の関節可動域訓練が有効です。状態が許せば、腹臥位をとることも役立ちます。
- 腸腰筋徴候:急性虫垂炎で炎症が腸腰筋に及ぶと、右股関節を伸展させたときに痛みが誘発されます。腸腰筋が股関節の前面にあり、伸展で引き伸ばされることから理解できます。
- 筋肉内注射:大殿筋の深層には坐骨神経が走るため、殿部の筋肉内注射は上外側の中殿筋に行います。クラーク点やホッホシュテッター部位は、中殿筋への注射部位を決める方法として出題されます。
選択肢の確認
1.大腿二頭筋:大腿の後面にあるハムストリングスの一つです。長頭は坐骨結節、短頭は大腿骨後面(粗線)から起こり、腓骨頭に停止します。長頭は股関節と膝関節の両方の後面を通る二関節筋で、股関節の伸展と膝関節の屈曲に働きます。短頭は膝関節だけをまたぎ、膝関節の屈曲に働きます。同じ後面を通っていても、股関節では伸展、膝関節では屈曲に働く点が混同しやすいところです。膝を曲げる筋として覚えていると「屈曲」という言葉につられやすいので、どの関節を曲げるのかを区別することが大切です。
2.大殿筋:殿部で最も大きく、表層を覆う筋です。腸骨の後部・仙骨・尾骨から起こり、大腿骨の殿筋粗面と腸脛靱帯に停止します。股関節の後面を通るため、股関節の伸展と外旋に働き、屈曲とは逆の作用をもちます。椅子からの立ち上がり、階段を昇る動作、走行で強く働く筋であり、股関節伸展の主動作筋として押さえておきます。
3.中殿筋:腸骨の外面から起こって大腿骨の大転子に停止し、股関節の外側を通る筋です。主な作用は外転です。前部線維は内旋を補助しますが、股関節屈曲の主動作筋ではありません。片脚立位で骨盤を水平に保つ役割があります。筋力が低下した側の脚で片脚立ちをすると、反対側(挙げた脚の側)の骨盤が下がるトレンデレンブルグ徴候が現れます。殿部への筋肉内注射の部位としても重要です。
4.小殿筋:選択肢3の深層にあり、腸骨の外面から起こって大転子の前面に停止する筋です。選択肢3と協調して股関節の外転に働き、内旋も補助します。屈曲の主動作筋ではないため、外転筋群として整理します。
5.腸腰筋:正答。主に大腰筋と腸骨筋からなり、股関節の前面を通って大腿骨の小転子に停止します。そのため、収縮すると大腿を前方へ引き上げて股関節を屈曲させます。股関節屈曲の主動作筋で、歩行時に脚を前へ振り出す動きを担います。
覚えるポイント
- 股関節の屈曲は腸腰筋が主動作筋です。大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋、恥骨筋が補助します。
- 股関節の伸展は大殿筋とハムストリングス(大腿二頭筋長頭・半腱様筋・半膜様筋)が担います。
- 股関節の外転は中殿筋・小殿筋が担います。内転は、長内転筋・短内転筋・大内転筋・薄筋などの内転筋群が担います。
- 前面の筋が屈曲、後面の筋が伸展に働くのは股関節の原則で、膝関節では逆になります。二関節筋では、大腿直筋が「股関節屈曲+膝関節伸展」、ハムストリングスが「股関節伸展+膝関節屈曲」に働きます。
- 臨床と結びつけて覚えます。腸腰筋の短縮は股関節屈曲拘縮につながります。中殿筋の筋力低下はトレンデレンブルグ徴候につながり、中殿筋は筋肉内注射の部位でもあります。
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