112PM073|第112回 看護師国家試験 過去問
上肢の運動を図に示す。肩関節の屈曲の可動域測定で正しいのはどれか。

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正解: 5
正答
5.5
この問題のポイント
関節可動域(ROM)測定の約束事である「基本軸」「移動軸」「0°の位置」を、図から見分けられるかを問う問題です。肩関節の屈曲では、肩峰を通る床への垂直線を基本軸、上腕骨を移動軸とします。上肢を体側に下ろした位置(0°)から前方へ挙上した角度を測ります。顔の向きで前後を判断して屈曲の図を見つけ、「肩から床へ向かう垂直線」から始まる矢印を選ぶのが鍵です。
解説
図の読み取り
図には、人物を真横から見た姿が2つ描かれています。どちらも顔の輪郭が右側にあるので、図の右が人物の前方です。肩の位置には角度の中心を示す丸に×を重ねた印があり、そこを通る太い垂直線と太い水平線が引かれています。動かしている上肢には、移動軸の方向を示す点線が沿っています。体幹に沿って下ろした上肢も点線の輪郭で描かれており、この位置が0°にあたります。
- 左の図:上肢を後方(背中側)へ振っています。肩関節の伸展(後方挙上)の場面で、矢印1と矢印2が描かれています。
- 右の図:上肢を前方へ、水平より高く挙上しています。肩関節の屈曲(前方挙上)の場面で、矢印3・4・5が描かれています。
屈曲を問う本問では右の図に注目し、3本の矢印がそれぞれどの線から測っているかを見比べます。
肩関節の屈曲・伸展の測定法
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会などが定める「関節可動域表示ならびに測定法」では、基本肢位を0°とするNeutral Zero Methodを採用しています。関節ごとに決められた基本軸と移動軸のなす角度を、角度計(ゴニオメーター)で測ります。測定値は通常5°刻みで記録し、原則として他動運動による値を表記します。自動運動の値を用いる場合や、痛みが測定値に影響する場合は、その旨を明記します。
肩関節の屈曲・伸展の規定は次のとおりです。
- 基本軸:肩峰を通る床への垂直線(立位または座位で測定)
- 移動軸:上腕骨
- 参考可動域:屈曲(前方挙上)180°、伸展(後方挙上)50°
- 測定時の注意:前腕は中間位、体幹が動かないように固定、脊柱の前後屈に注意
0°は上肢を体側に下ろした位置です。前方へ水平まで挙げると90°、真上まで挙げると180°になります。つまり屈曲角度は、肩から床へ下ろした垂直線と上腕の間を、前方を回って測った角度です。伸展も同じ垂直線を起点とし、後方へ振った上腕までの角度を測ります。
これを右の図に当てはめると、矢印5は肩から下へ延びる垂直線(0°の位置)から始まり、前方を大きく回って上腕の点線まで達しています。基本軸から移動軸までを測っていて屈曲角度そのものを表すので、これが正答です。矢印3は肩から上方へ延びる垂直線から、矢印4は前方の水平線から測っており、どちらも0°の位置を起点にしていません。
測定と看護実践での注意
この測定法では、肩関節の可動域は肩甲帯の動きを含めた値として扱われ、固定するのは体幹です。屈曲の最終域では腰を反らす(体幹の後屈)ことで、伸展では体幹の前屈によって、見かけの角度が大きくなりがちです。姿勢を整えてから測ります。また、他動運動では十分に動くのに自動運動では動かない場合は、関節の拘縮よりも筋力低下や麻痺などが原因と考えられます。
看護師は、拘縮や廃用症候群の予防、関節可動域訓練の効果判定、ADLの評価のために可動域を観察します。肩関節の屈曲が制限されると、洗髪、かぶりの上衣の着脱、高い所の物を取る動作が難しくなります。乳がん術後(腋窩リンパ節郭清後)の患側上肢や、脳卒中後の片麻痺の肩でも、屈曲・外転の可動域は重要な観察項目です。他動的に動かすときは関節の近位と遠位を支え、ゆっくりと痛みのない範囲で行います。なお、関節の動く範囲を角度で表すROMと、筋力を0〜5の6段階で評価する徒手筋力テスト(MMT)は別の評価です。
選択肢の確認
1.1:左の図は上肢を後方へ振った伸展の場面で、屈曲の測定ではありません。さらに矢印1は、肩の後方へ延びる水平線から上腕の点線まで下向きに測っており、90°から伸展角度を引いた角度にあたります。床への垂直線(0°の位置)を基本軸にしていないので、伸展の測定としても正しくありません。
2.2:左の図の矢印2は、肩から下へ延びる垂直線(0°の位置)から後方の上腕の点線までを測っており、基本軸と移動軸の取り方は定義どおりです。ただし測っているのは伸展(参考可動域50°)なので、屈曲を問う本問には当てはまりません。「伸展の測定で正しいのはどれか」と問われれば、この矢印が正しい描き方になります。
3.3:右の図で、肩から上方へ延びる垂直線から、上腕の点線まで下ろしてくる向きに測っています。これは真上(180°)から数えた残りの角度、つまり180°から屈曲角度を引いた値です。体側に下ろした0°の位置からの角度ではありません。
4.4:右の図で、前方の水平線から上腕の点線までを測っています。起点が水平位(屈曲90°の位置)なので、得られるのは屈曲角度から90°を引いた値にすぎません。肩峰を通る床への垂直線を基本軸とする定義に合いません。
5.5:正答。右の図で、肩から床へ向かう垂直線(上肢を下ろした0°の位置)から、前方を回って上腕の点線までの角度を測っています。基本軸が肩峰を通る床への垂直線、移動軸が上腕骨という定義どおりで、肩関節の屈曲の可動域測定として正しい描き方です。
覚えるポイント
- 関節可動域は基本肢位を0°とし(Neutral Zero Method)、基本軸と移動軸のなす角を5°刻みで測ります。原則は他動運動の値で、自動運動の値を使うときは明記します。
- 肩関節の屈曲・伸展は、基本軸が肩峰を通る床への垂直線、移動軸が上腕骨です。参考可動域は屈曲180°、伸展50°です。前腕は中間位とし、体幹を固定して脊柱の前後屈を防ぎます。
- 図の問題では、顔の向きで前後(屈曲か伸展か)を判断し、矢印の起点が「肩から床へ下ろした垂直線(0°)」かを確認します。水平線や上向きの垂直線から測っている矢印は誤りです。
- 肩関節の外転・内転も基本軸と移動軸は屈曲と同じで、参考可動域は外転180°、内転0°です。外旋60°・内旋80°は、上腕を体幹につけて肘を90°曲げた肢位で、尺骨を移動軸にして測ります。水平屈曲135°・水平伸展30°は、肩を90°外転した肢位で測ります。
- 代償運動に注意します。屈曲では体幹の後屈、伸展では体幹の前屈によって、見かけの角度が大きくなります。
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