112AM045|第112回 看護師国家試験 過去問
関節拘縮の予防を目的とした関節可動域〈ROM〉訓練で正しいのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 3
正答
3.他動運動は痛みが生じないように行う。
この問題のポイント
関節拘縮を予防するための関節可動域〈ROM〉訓練について、実施の原則と、筋力に応じた運動方法の選び方を問う問題です。原則は、速度はゆっくり、痛みのない範囲で行い、麻痺があれば健側から始めることです。運動方法は徒手筋力テスト(MMT)の段階に応じて選びます。この4点を押さえていれば、選択肢をすべて判定できます。
解説
関節拘縮とROM訓練の目的
関節拘縮は、関節を動かさない状態が続いて起こります。関節包・靱帯・筋・腱・皮膚などの軟部組織が短縮し、柔軟性を失うことで、関節の動く範囲が制限されます。長期臥床、麻痺、疼痛による不動、ギプス固定などが原因です。いったん生じると改善に時間がかかるため、予防が重要です。
ROM訓練は、関節を本来の運動方向に沿って動かし、軟部組織の伸張性を保ちます。これにより拘縮を防ぎ、すでにある制限の進行を抑えます。良肢位の保持や体位変換と組み合わせて行います。
実施の基本原則
- ゆっくり、なめらかに動かす:筋は急に引き伸ばされると、伸張反射によって反射的に収縮します。脳卒中などで痙縮がある場合は、動かす速度が速いほど抵抗が強まります(速度依存性)。速く動かすと抵抗が増し、筋や関節周囲の組織を傷めるおそれがあります。
- 痛みの生じない範囲で行う:痛みは組織に過剰な負荷がかかっているサインです。痛みを我慢させて動かすと、筋が防御的に緊張してかえって動かしにくくなります。組織の損傷や炎症を招き、可動域を狭める結果にもなりかねません。痛みの体験は、訓練への恐怖や拒否にもつながります。
- 関節を支えて動かす:動かす関節の近位部と遠位部を手で支えます。生理的な運動方向・範囲を超えないようにします。
- 観察しながら行う:実施前に、関節の腫脹・熱感、皮膚の状態、疼痛の有無を確認します。実施中は表情、訴え、抵抗感を観察します。意識障害や感覚障害で痛みを訴えられない患者では、表情のゆがみや筋の抵抗の強まりから痛みを推し量ります。
- 麻痺がある場合は健側から始める:一般に健側から動かし、その人の本来の可動域を確認します。患者にも動かし方を理解してもらってから、患側を行います。患側は感覚障害を伴うことが多く痛みを自覚しにくいため、特に慎重に行います。弛緩性麻痺の肩関節は亜脱臼を起こしやすいので、上腕骨頭や肩甲骨を支え、腕を引っ張ったり無理に挙上したりしないようにします。
筋力に応じた運動の選択
ROM訓練の運動様式は、MMTの段階によって選びます。
- 段階0(筋収縮なし)・段階1(収縮は触知できるが関節は動かない):他動運動
- 段階2(重力を除けば全可動域を動かせる):自動介助運動
- 段階3(重力に抗して全可動域を動かせる):自動運動
- 段階4・5(重力に加えて抵抗にも抗して動かせる):抵抗運動
段階1以下では、患者自身の力では関節を動かせません。そのため看護師や理学療法士が他動的に動かして、可動域を保ちます。
以上から、選択肢3が正しい記述です。他動運動では患者が自分で力加減を調整できないため、実施者が痛みの有無を確かめながら進めることが特に重要になります。臨床では、清拭・更衣・体位変換などの日常のケアに関節を動かす動作を取り入れると、訓練を継続しやすくなります。
選択肢の確認
1.関節を速く動かす。:速く動かすと伸張反射で筋が反射的に収縮し、痙縮がある場合は抵抗がさらに強まって、筋や関節周囲組織を傷めるおそれがあります。ROM訓練はゆっくりなめらかに、一定のリズムで行うのが原則なので、この記述は誤りです。
2.運動麻痺がある場合は患側から行う。:麻痺があるときは、一般に健側から動かして本来の可動域と動かし方を確認し、患者にも動きを理解してもらってから患側を行います。したがって患側から始めるという記述は誤りです。拘縮を起こしやすいのは患側なので患側を優先したくなりますが、実施する順序と、ケアの重点を置く部位とは別の問題です。
3.他動運動は痛みが生じないように行う。:正答。痛みは組織への過剰な負荷を示すサインです。痛みを伴うと、筋の防御的な緊張で動かしにくくなるうえ、組織の損傷や炎症を招いて可動域をかえって狭めることがあります。他動運動では患者が自分で力加減を調整できないため、実施者が表情や抵抗を観察しながら、痛みのない範囲で行います。
4.徒手筋力テストの結果が1以下の場合は自動運動を促す。:MMTの段階1は筋収縮を触知できるだけで関節は動かず、段階0は収縮もない状態です。自力で関節を動かす自動運動は行えないので、適応は他動運動です。自動運動を促すのは重力に抗して全可動域を動かせる段階3以上で、段階2では自動介助運動を行います。
覚えるポイント
- ROM訓練は「ゆっくり・なめらかに・痛みのない範囲で」行います。関節の近位部と遠位部を支え、生理的な運動方向に動かします。
- 速く動かすと伸張反射が起こります。痙縮では、速度が速いほど抵抗が増します(速度依存性)。
- 麻痺がある場合は健側から行い、本来の可動域を確認してから患側へ移ります。患側は痛みを訴えにくいので、表情と抵抗を観察します。
- MMTと運動様式の対応は、0・1が他動運動、2が自動介助運動、3が自動運動、4・5が抵抗運動です。
- 弛緩性麻痺の肩は亜脱臼しやすいため、腕を引っ張らず、肩を支えて無理に挙上しません。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。