111PM080|第111回 看護師国家試験 過去問

糸球体濾過量の推定に用いられる生体内物質はどれか。

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正解: 4

正答

4.クレアチニン

この問題のポイント

腎機能の基本指標である糸球体濾過量(GFR)を、日常診療でどの物質から推定しているかを問う問題です。判断の鍵は「推定」と「生体内物質」という2つの言葉です。体内で一定の速度で産生され、採血だけで測れる内因性物質を選びます。GFR測定の基準物質であるイヌリンや、腎血漿流量の測定に使うパラアミノ馬尿酸と区別できるかが問われています。

解説

クリアランスの考え方

GFRは、両側の腎臓の糸球体で1分間に濾過される血漿量のことです。健常成人ではおよそ100mL/分で、1日にすると約150Lに達し、その約99%が尿細管で再吸収されます。GFRは直接測れないため、「クリアランス」という考え方を使います。クリアランスは、ある物質が単位時間に尿中へ排泄された量が、どれだけの量の血漿に含まれていた分にあたるかを表す値です。式は「尿中濃度×尿量÷血漿中濃度」です。

ある物質のクリアランスがGFRと等しくなるのは、その物質が次の条件を満たす場合です。

  • 糸球体で自由に濾過される
  • 尿細管で再吸収も分泌もされない
  • 腎臓で代謝・産生されず、腎機能そのものにも影響しない

基準物質と日常の推定法

これらの条件を最もよく満たすのがイヌリンで、イヌリンクリアランスはGFR測定の基準とされています。ただしイヌリンは植物由来の多糖類(果糖の重合体)で、体内には存在しません。静脈内に持続投与して血中濃度を保ちながら、時間を区切って採尿する必要があります。手間がかかるため、日常の検査には向きません。

そこで臨床で使われるのが内因性のクレアチニンです。クレアチニンは、筋肉のエネルギー代謝に働くクレアチン(クレアチンリン酸)から生じる老廃物で、筋肉量に応じてほぼ一定の速度で産生されます。糸球体で自由に濾過され、再吸収はほとんど受けません。一部が近位尿細管から分泌されるため、クレアチニンクリアランスは真のGFRよりやや高めに出ますが、実用上は十分な指標です。

日常診療では次の方法でGFRを推定します。

  • 推算糸球体濾過量(eGFR):血清クレアチニン値・年齢・性別から推算式で求めます。採血だけで得られ、慢性腎臓病(CKD)の診断と重症度分類に用いられます。
  • クレアチニンクリアランス(Ccr):24時間蓄尿などで尿中クレアチニン濃度と尿量を測り、血清クレアチニン値とあわせて計算します。

注意点と看護での活用

血清クレアチニン値は、GFRとほぼ反比例の関係にあります。そのため腎機能低下の初期には値の上昇が小さく、数値がわずかに上がっただけでも腎機能は大きく低下していることがあります。また筋肉量の影響を受けます。高齢者、長期臥床者、るいそうの強い人、四肢を切断した人では値が低く出て、腎機能を過大評価しやすくなります。逆に筋肉量の多い人では高めに出ます。このような場合は、筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCによるeGFRが併用されます。

eGFRは、ヨード造影剤を使う検査の前のリスク評価に用いられます。腎臓から排泄される薬剤(一部の抗菌薬や抗凝固薬など)の投与量調整にも使われます。看護師が検査値を読むときは、患者の体格や活動量と照らし合わせて値の意味を考えることが大切です。それが安全な与薬と、腎機能悪化の早期発見につながります。

選択肢の確認

1.尿素:尿素は、たんぱく質の分解で生じたアンモニアが肝臓の尿素回路で処理されてできる物質です。糸球体で濾過されたあと尿細管で一部が再吸収されるため、クリアランスはGFRより低く出ます。血中尿素窒素(BUN)は腎機能以外の要因でも変動します。たんぱく質の摂取量増加、消化管出血、発熱などによる異化の亢進、脱水で上昇し、肝不全や低たんぱく食で低下します。このためGFRの推定には用いません。ただし腎機能の目安として測定はされます。BUNとクレアチニンの比が大きく上がる場合は、脱水などの腎前性の要因や消化管出血を考える手がかりになります。

2.イヌリン:糸球体で自由に濾過され、尿細管で再吸収も分泌もされないため、GFRを最も正確に測定できる基準物質です。しかし植物由来の多糖類で体内には存在せず、静脈内に投与して用いる外来性の物質です。そのため「生体内物質」という条件に当てはまりません。「GFR測定の基準となる物質はどれか」と問われれば正答になるため、設問の条件で答えが変わる選択肢として選択肢4と区別して覚えます。

3.ビリルビン:老化した赤血球のヘモグロビンに由来するヘムから生じる色素です。肝臓でグルクロン酸抱合を受けて、胆汁中に排泄されます。黄疸の評価や肝胆道系の機能をみる指標であり、腎臓の濾過機能の評価には用いません。尿中ビリルビンが陽性になるのは、血中の直接(抱合型)ビリルビンが増えた場合です。これも肝胆道系の異常を示す所見であり、GFRとは関係しません。

4.クレアチニン:正答。筋肉のクレアチン(クレアチンリン酸)から一定の速度で産生される内因性の老廃物で、糸球体で自由に濾過され、再吸収をほとんど受けません。尿細管からわずかに分泌されるため、真のGFRよりやや高めに出ます。それでも血清値からeGFRを推算できるため、日常診療でGFRの推定に最も広く用いられています。

5.パラアミノ馬尿酸:糸球体で濾過されるうえに近位尿細管から盛んに分泌され、腎臓を1回通過するだけで血漿中の大部分が除去されます。そのためクリアランスは腎血漿流量の指標になります。測定対象がGFRではなく腎血漿流量であり、しかも静脈内に投与する外来性の物質なので、二重の意味で設問に当てはまりません。

覚えるポイント

  • GFRの日常的な推定には、内因性物質のクレアチニンを使います(血清クレアチニン値からeGFRを算出)。GFR測定の基準物質は、外来性のイヌリンです。
  • パラアミノ馬尿酸は腎血漿流量の測定に使います。GFRを腎血漿流量で割った濾過率(濾過比)は約20%です。
  • クリアランス=尿中濃度×尿量÷血漿中濃度です。再吸収される物質(尿素など)はGFRより低く出ます。分泌される物質はGFRより高く出ます(クレアチニンはわずか、パラアミノ馬尿酸は大きく)。
  • 血清クレアチニン値は筋肉量の影響を受けます。高齢者やるいそうの強い人では腎機能を過大評価しやすく、シスタチンCが補助になります。
  • CKDは、GFR 60mL/分/1.73m²未満、または尿たんぱくなどの腎障害の所見が3か月以上続く状態です。GFR区分はG1(90以上)からG5(15未満)までです。
  • BUNは、たんぱく質の摂取量、消化管出血、脱水、異化の亢進など腎臓以外の要因でも変動するため、GFRの推定には使いません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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