112AM076|第112回 看護師国家試験 過去問
正常な糸球体で濾過される物質はどれか。
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正解: 2
正答
2.ミオグロビン
この問題のポイント
糸球体濾過膜が「分子の大きさ」と「電荷」によって通す物質を選んでいることを理解しているかを問う問題です。選択肢を細胞成分(血球)と血液中の蛋白質に分け、蛋白質は分子量と電荷で比べると判断できます。選択肢のうち、正常な糸球体で濾過されるといえるのは、筋肉由来の小さな蛋白であるミオグロビンだけです。この知識は、横紋筋融解症で褐色尿が出るしくみの理解にもつながります。
解説
糸球体濾過膜のしくみ
糸球体では血液が濾過されて原尿がつくられます。その量は成人で1日におよそ150 Lにのぼります。血液と原尿を隔てる濾過膜は、血管の内側から次の3層でできています。
- 毛細血管内皮細胞(有窓内皮):小さな窓が多数あいていて、血漿成分は通します。数μm以上の大きさがある血球(赤血球、白血球、血小板)は、ここでせき止められます。
- 糸球体基底膜:ヘパラン硫酸プロテオグリカンなどを含み、陰性(マイナス)に荷電しています。
- 足細胞(ポドサイト)の足突起とその間のスリット膜:蛋白の漏出を防ぐ最後の関門です。
血漿中の物質については、濾過膜は主に次の2つの性質で通すものを選んでいます。
- 大きさによる選択:水、電解質、ブドウ糖、アミノ酸、尿素、クレアチニンなどの小さな分子は自由に濾過されます。分子量が大きくなるほど通りにくくなり、アルブミン(約6万6千)程度でほとんど通らなくなります。ミオグロビンの分子量は約1万7千で、アルブミンの約4分の1です。完全に自由ではないものの、かなりの割合が濾過されます。
- 電荷による選択:濾過膜は陰性に荷電しています。そのため、陰性に荷電した分子は同じ大きさでも反発されて通りにくくなります。アルブミンは生理的pHで陰性に荷電しているので、大きさと電荷の両面で阻まれます。
「濾過される」と「尿に出る」は別のこと
濾過された物質がすべて尿に出るわけではありません。ブドウ糖やアミノ酸は近位尿細管でほぼすべて再吸収されます。尿糖が出るのは、血糖値が腎の閾値(おおむね160〜180 mg/dL)を超えたときです。ミオグロビンやβ2-ミクログロブリンのような小さな蛋白も、濾過された後に近位尿細管で取り込まれて分解されます。そのため、健常時の尿にはほとんど現れません。尿中β2-ミクログロブリンの増加が尿細管障害の指標になるのはこのためです。
ミオグロビンと横紋筋融解症
ミオグロビンは、骨格筋や心筋の細胞内で酸素を貯蔵するヘム蛋白です。横紋筋融解症では筋細胞が壊れ、大量のミオグロビンが血中に流れ出ます。原因には次のようなものがあります。圧挫(クラッシュ症候群)、長時間同じ体位で倒れていたことによる圧迫、熱中症、過度の運動、スタチンなどの薬剤です。
ミオグロビンは小さいため速やかに濾過され、赤褐色〜コーラ色の尿になります。さらに尿細管内で円柱をつくって閉塞させます。ヘムによる尿細管毒性も加わり、急性腎障害を起こします。検査では次のような所見がみられます。
- CKの著明な上昇
- 筋細胞内のカリウム流出による高カリウム血症
- 尿潜血試験紙が陽性なのに、尿沈渣の赤血球が少ない(試験紙はヘムの反応を見ているため)
看護では、尿の色と量を観察します。輸液で尿量を確保し、高カリウム血症による不整脈を心電図モニタリングで監視することも重要です。
溶血によるヘモグロビン尿とも比べておきましょう。遊離ヘモグロビンは、通常はハプトグロビンと結合した大きな複合体になるため濾過されません。大量の溶血でハプトグロビンが使い果たされると、結合できないヘモグロビンが残ります。これが二量体に分かれた小さな形で濾過され、尿に出ます。
尿中に出ると異常を示すもの
- アルブミン:尿中への排泄が増えれば、糸球体濾過膜の障害を示します。糖尿病性腎症の早期(第2期)は、尿アルブミン30〜299 mg/gCrの微量アルブミン尿で判定します。成人のネフローゼ症候群では、尿蛋白3.5 g/日以上の持続と、血清アルブミン3.0 g/dL以下の両方が診断の必須条件です。
- 赤血球:尿中に増えた状態(血尿)は、糸球体から尿道までのどこかでの出血を示します。糸球体障害とは限りません。糸球体腎炎など糸球体からの出血では、形のゆがんだ変形赤血球が多く、赤血球円柱がみられることもあります。一方、尿路結石や膀胱癌など、糸球体以外の部位(腎盂・尿管・膀胱・尿道など)からの出血(非糸球体性血尿)では、形の保たれた均一な赤血球が多くみられます。なお、下部尿路は膀胱と尿道を指し、尿路結石の大部分は腎・尿管にある上部尿路結石です。膀胱癌の初発症状として多いのは、無症候性(痛みを伴わない)の肉眼的血尿です。
選択肢の確認
1.フィブリノゲン:肝臓で合成される凝固因子(第Ⅰ因子)です。分子量は約34万で、選択肢3(約6万6千)の約5倍もある大きな血漿蛋白です。濾過膜の大きさの関門を越えられないため、正常な糸球体では濾過されません。凝固の過程でトロンビンによりフィブリンに変わる物質です。血漿からこの蛋白などの凝固因子を除いたものが血清である、という関連知識もよく問われます。
2.ミオグロビン:正答。骨格筋・心筋にある酸素貯蔵用のヘム蛋白です。分子量は約1万7千と小さく、正常な濾過膜を通過します。健常時は血中濃度が低く、濾過された分も近位尿細管で再吸収・分解されます。そのため、尿で気づかれることはほとんどありません。横紋筋融解症で血中濃度が急上昇すると赤褐色の尿として現れ、急性腎障害の原因になります。
3.アルブミン:分子量が約6万6千で、濾過膜の大きさの限界付近にあります。さらに陰性に荷電しているため、基底膜などの陰性荷電に反発されます。正常ではごくわずかしか濾過されず、濾過される物質には当たりません。血漿蛋白の中で最も多く、膠質浸透圧を保つ役割を担います。尿中に増えることは濾過膜障害のサインです。糖尿病性腎症の早期発見やネフローゼ症候群の診断に用いられます。
4.血小板:骨髄の巨核球の細胞質がちぎれてできる、直径2〜4μmほどの無核の細胞成分です。蛋白分子よりはるかに大きく、最初の関門である有窓内皮の窓も通過できません。そのため、正常な糸球体では濾過されません。主な役割は、止血の際に集まって一次血栓をつくることです。寿命は約10日で、古くなると脾臓などで処理されます。
5.赤血球:直径約7〜8μmの細胞成分で、濾過膜を通過できないため、正常な糸球体では濾過されません。尿沈渣で強拡大1視野あたり5個以上みられれば血尿とされ、糸球体から尿道までのどこかでの出血を意味します。糸球体由来の出血では、形のゆがんだものが多くみられます。腎盂・尿管・膀胱・尿道など糸球体以外からの出血(非糸球体性血尿)では、形の保たれた均一なものが多くみられます。溶血で尿に出るのはこの細胞ではなく、中のヘモグロビンである点も区別しましょう。
覚えるポイント
- 糸球体濾過膜は、有窓内皮、基底膜、足細胞のスリット膜の3層です。分子の大きさと陰性荷電で濾過する物質を選びます。
- 濾過されるもの:水、電解質、ブドウ糖、アミノ酸、尿素、クレアチニン、小さな蛋白(ミオグロビン約1万7千、β2-ミクログロブリン)。濾過されないもの:血球、大きな血漿蛋白(免疫グロブリン、フィブリノゲン約34万)。アルブミン(約6万6千)はごくわずかしか濾過されません。
- 「濾過される」と「尿に出る」は別です。ブドウ糖、アミノ酸、小さな蛋白は近位尿細管で再吸収されます。
- 横紋筋融解症の特徴は、CK上昇、褐色尿、尿潜血陽性なのに尿沈渣の赤血球が少ないこと、高カリウム血症、急性腎障害です。
- 尿中アルブミンの増加は糸球体濾過膜障害のサインです。微量アルブミン尿(30〜299 mg/gCr)は早期の糖尿病性腎症を示します。尿蛋白3.5 g/日以上かつ血清アルブミン3.0 g/dL以下は、成人ネフローゼ症候群の必須条件です。
- 尿中の赤血球(血尿)は、糸球体から尿道までのどこかでの出血を示します。変形赤血球が多ければ糸球体性を、形の保たれた赤血球が多ければ非糸球体性(尿路結石・膀胱癌など)を考えます。
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