112AM077|第112回 看護師国家試験 過去問
冷たい川に飛び込んだときに急激に体温が低下する原因で正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.熱伝導による体熱の放散
この問題のポイント
体熱の放散経路(放射・伝導・対流・蒸発)の違いを理解しているかを問う問題です。手がかりは「冷たい川に飛び込んだ」という状況です。全身が体温より低い水に直接触れていること、そして水が空気よりはるかに熱を伝えやすいことに気づけるかが鍵になります。あわせて、寒冷時に熱産生は低下するのではなく増えるという体温調節の基本も押さえます。
解説
体温は熱産生と熱放散のバランスで決まる
体温は、代謝による熱産生と体表からの熱放散のつり合いで保たれています。その調節中枢は視床下部にあります。体温が急激に下がるのは、熱産生が追いつかないほど熱放散が大きくなったときです。この問題では「何が放熱を急増させたのか」を考えます。
熱放散の4つの経路
- 放射(輻射):体表から赤外線(電磁波)として、周囲の物体へ熱が移る経路です。媒体を必要とせず、触れていない物体との間でも起こります。常温・安静時には、放熱の中で最も大きな割合を占めます。
- 伝導:体に直接接している物質へ、温度の高い側から低い側へ熱が移る経路です。接触物の温度が低いほど、また熱伝導率が高いほど、多くの熱が奪われます。
- 対流:体表で温められた空気や水が動いて入れ替わり、熱が運び去られる経路です。風や水の流れがあると強まります。
- 蒸発:汗や不感蒸泄の水分が気化するときに、気化熱を奪う経路です。外気温が皮膚温より高いときには、事実上これだけが有効な放熱経路になります。
冷たい川で何が起こるか
川に飛び込むと、全身の皮膚が体温よりずっと低い水に直接接します。水の熱伝導率は空気の約25倍です。さらに水は熱容量が大きいため、体から熱を受け取っても温まりにくく、皮膚との温度差が保たれやすくなります。その結果、接触面から大量の熱が直接奪われます。同じ15℃でも、空気中より水中のほうがはるかに速く体が冷えるのはこのためです。
川の流れで体表の温まった水が入れ替わるので、対流も放熱を強めます。しかし、空気中との決定的な違いは、熱をよく伝える冷たい媒体に全身が触れていることです。そのため、急激な体温低下の原因としては伝導が正答になります。
寒冷時、熱産生はむしろ増える
寒冷刺激を受けると、視床下部を介して次の反応が起こります。
- 皮膚の血管を収縮させて放熱を抑える
- 骨格筋のふるえ(戦慄)で熱をつくる
- 交感神経の興奮により代謝を高める
新生児では、ふるえの代わりに褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生が中心です。つまり寒冷下の体は熱産生を増やして対抗しますが、冷水中では放熱がそれを大きく上回るため、体温が下がります。
実践での活かし方
- 冷罨法の氷嚢や、温罨法の湯たんぽは伝導を利用しています。湯たんぽは長時間の接触で低温熱傷を起こすことがあるので注意します。
- 扇風機の送風は対流、清拭後に濡れたままの皮膚は蒸発で熱を失わせます。
- 新生児の保温では4経路すべてを意識します。出生直後に羊水で濡れた皮膚を拭く(蒸発)、冷たい処置台や体重計に直接寝かせない(伝導)、すきま風を避ける(対流)、冷えた窓際や壁際に寝かせない(放射)、が基本です。
- 水難事故などで救助した人は、濡れた衣類を着ていると熱を奪われ続けます。衣類を脱がせ、乾いた毛布などで保温します。深部体温が35℃未満の状態を低体温症といいます。
選択肢の確認
1.対流による体熱の放散:川の流れが体表で温まった水を入れ替えるため、対流も放熱を強める方向に働きます。しかし急激な体温低下の本質は、熱伝導率の高い冷水に全身が直接触れていることです。対流が主役になるのは、扇風機の風に当たる場合や風の強い屋外にいる場合のように、周囲の流体が動くことで熱が運ばれる場面です。伝導と対流は同時に起こりやすいので、「接触そのもの」なら伝導、「流れによる入れ替え」なら対流と区別します。
2.放射による体熱の放散:放射は赤外線として離れた物体へ熱が移る経路です。常温の室内で安静にしているときには最大の放熱経路ですが、全身が水に浸かっている状態では主な経路になりません。「安静時に放熱量が最も多い経路」を問われたときの正答なので、条件の違いで混同しないようにします。
3.熱伝導による体熱の放散:正答。体温より低く、空気の約25倍熱を伝えやすい水に全身が直接接するため、接触面から大量の熱が急速に奪われます。熱容量の大きい水は温まりにくく、皮膚との温度差が保たれることも放熱を大きくします。
4.代謝による熱エネルギー産生の低下:寒冷刺激を受けると、交感神経の興奮などによって代謝はむしろ亢進し、熱産生は増えます。重度の低体温症では代謝が低下しますが、それは体温が下がった結果です。飛び込んだ直後に体温が急激に下がる原因ではありません。
5.骨格筋における熱エネルギー産生の低下:冷水に入ると骨格筋の不随意な収縮であるふるえが起こり、骨格筋での熱産生はむしろ増加します。ふるえは成人の寒冷時の主要な熱産生反応で、熱産生を安静時の数倍に高めることがあります。体温が大きく下がって重度の低体温になるとふるえは止まりますが、これも体温低下の結果であり原因ではありません。
覚えるポイント
- 放熱の4経路と代表例:放射(赤外線、触れていない物体へ)、伝導(接触物へ。冷水・氷嚢・湯たんぽ)、対流(空気や水の流れ。扇風機・風)、蒸発(汗・不感蒸泄・濡れた皮膚)。
- 常温・安静時に最も大きい放熱経路は放射です。外気温が皮膚温より高いときは、蒸発が事実上唯一の放熱経路になります。
- 水の熱伝導率は空気の約25倍です。冷水に浸かる、濡れた衣類を着続けると、伝導によって急速に体温が下がります。
- 寒冷時の反応は、皮膚血管の収縮(放熱抑制)、ふるえ(骨格筋での熱産生)、代謝亢進です。熱産生は低下せず増加します。新生児は褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生が中心です。
- 新生児の保温は4経路すべてに対策します。出生直後はまず濡れた皮膚を拭き、蒸発による熱喪失を防ぎます。
- 低体温症は深部体温35℃未満の状態です。ふるえの停止や代謝の低下は、体温低下の結果として起こります。
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