111PM070|第111回 看護師国家試験 過去問

Aさん(85歳、女性)は1人暮らし。うっ血性心不全 congestive heart failure で臥床して過ごすことが多い。訪問看護師が訪問すると、Aさんは体温37.6 ℃、口唇の乾燥はなく、体熱感はあるが手足が冷えると言って羽毛布団を肩まで掛けている。室温30 ℃、湿度65%、外気温は32 ℃、冷房設備はあるが使っていない。このときの訪問看護師の対応で適切なのはどれか。

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正解: 2

正答

2.冷房設備で室温を調整する。

この問題のポイント

高温多湿の室内で、羽毛布団を肩まで掛けて臥床している高齢の心不全患者の体温上昇をどう捉えるかを問う問題です。感染などによる発熱ではなく、熱がこもって逃げないうつ熱と判断できるかが鍵です。判断の手がかりは、室温30 ℃・湿度65%で冷房を使っていないこと、外気温32 ℃、口唇の乾燥がないこと、うっ血性心不全があることです。体温上昇の原因である環境を整えることが、最初に行うべき対応になります。

解説

問題文の手がかりを整理する

  • 85歳の1人暮らしで、うっ血性心不全のため臥床がちです。体温調節機能と循環の余力が低く、自分で環境を整えられていません。
  • 体温は37.6 ℃で、体熱感があります。軽度の体温上昇です。
  • 羽毛布団を肩まで掛けています。保温性の高い寝具で体表が覆われ、放熱が妨げられています。
  • 室温30 ℃・湿度65%で、冷房設備はあるのに使っていません。熱を逃がしにくい高温多湿の環境です。
  • 外気温は32 ℃で、室内より高くなっています。窓を開けて換気しても室温は下がりません。
  • 口唇の乾燥はありません。現時点で明らかな脱水の徴候はみられません。
  • 本人は手足の冷えを訴えています。

発熱とうつ熱の違い

体温は、視床下部の体温調節中枢が決める設定値(セットポイント)に保たれています。

発熱は、感染や炎症で生じたサイトカインが視床下部にはたらき、プロスタグランジンE2を介してセットポイントが引き上げられた状態です。上昇期には悪寒や手足の冷感、ふるえが起こります。解熱薬はプロスタグランジンの産生を抑えてセットポイントを下げるため、発熱に効果があります。

うつ熱は、セットポイントは正常なまま、熱の産生が放散を上回るか放散が妨げられて体温が上がる状態です。原因には高温多湿の環境、衣類や寝具の掛けすぎ、発汗の障害などがあります。解熱薬は効かず、原因を取り除くことと冷却が対処の基本です。

体の熱は輻射・伝導・対流・蒸発によって放散されます。周囲の温度が高いと輻射・伝導・対流による放散が減り、汗の蒸発に頼る割合が大きくなります。ところが湿度が高いと汗は蒸発しにくくなります。Aさんは30 ℃・65%の室内で羽毛布団に覆われているため、放熱の経路がほとんどふさがれた状態です。

高齢者と心不全の特徴

高齢者は暑さを感じにくく、発汗や皮膚血流の増加による放熱の反応も弱くなります。口渇も感じにくく、体内の水分量も少ないため、屋外に出なくても室内で熱中症を起こしやすいです。暑熱環境では放熱のために皮膚の血流を増やす必要があり、心臓の負担が大きくなります。心不全のある人では、この負担が心不全の悪化につながるおそれがあります。

手足の冷えは発熱の上昇期にもみられる所見です。また心不全で心拍出量が低下したときにも、末梢血管が収縮して四肢が冷たくなることがあります。ただしこの場面には、高温多湿の環境と保温性の高い寝具という、熱がこもる明らかな要因があります。まずその要因を取り除いたうえで、手足の皮膚温や色、脈拍、血圧、呼吸状態を観察して評価します。

正答に至る判断

体温上昇の主な原因は環境にあるため、室温を下げることが最優先です。外気温が室温より高いので換気では効果がなく、冷房を使う必要があります。熱中症予防の啓発では、室温が28 ℃を超えないよう、エアコンなどを上手に使うことが呼びかけられています。

実際には、Aさんに理由を説明して了解を得てから冷房を入れます。冷気が直接体に当たらないように風向きを調整し、室温が下がってきたら、本人と相談しながら寝具を薄手のものに替えます。手足の冷えには靴下などで足元だけを保温します。そのうえで体温と全身状態を再評価します。

1人暮らしのため、冷房の操作方法と適切な設定を本人が続けられるよう支援することも重要です。必要に応じて、家族や介護支援専門員と連携します。

選択肢の確認

1.羽毛布団を取り除く。:寝具を外せば体表からの放熱は増えますが、室温30 ℃・湿度65%という環境そのものは変わらず、根本的な対処にはなりません。またAさんは手足の冷えを訴えて自分で布団を掛けており、本人の感覚や意思を確かめずに取り除けば、不快感を与え信頼関係も損ねます。寝具の調整は、室温を整えたあとに本人と相談しながら、薄手のものに替える、足元だけ保温するなど段階的に行います。室温が適切で寝具の掛けすぎだけが原因の場合には、寝具の調整が対応の中心になります。

2.冷房設備で室温を調整する。:正答。体温上昇の主な原因は、高温多湿の環境による放熱の障害(うつ熱)です。外気温は32 ℃と室温より高いため、換気では室温が下がらず、冷房による調整が必要です。原因に直接はたらきかけることができ、心不全のある高齢者の暑熱による心臓への負担や熱中症の進行を防ぐことにもつながります。冷気が直接当たらないよう配慮し、本人の同意を得て行います。

3.頓用の解熱薬を服用してもらう。:解熱薬は引き上げられたセットポイントを下げる薬であり、セットポイントが正常なまま熱がこもるうつ熱には効果が期待できません。原因の環境をそのままにして薬で体温を下げようとするのは、対応の順序としても不適切です。さらに非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はナトリウムと水分の貯留を招き、心不全を悪化させるおそれがあります。解熱薬は、感染症などによる発熱で苦痛が強い場合に、医師の指示に基づいて使うものです。

4.直ちに経口補水液を飲むよう促す。:口唇の乾燥はなく、現時点で明らかな脱水の徴候がないため、補水を最優先する根拠は乏しい状況です。うっ血性心不全では水分や塩分の制限が指示されていることがあり、ナトリウムを含む経口補水液を急いで多く飲むと体液貯留を助長するおそれがあります。暑熱環境での水分補給は大切ですが、医師が指示する水分量の範囲内で行い、尿量・体重・浮腫・皮膚や口腔の乾燥を観察しながら進めます。脱水の徴候がはっきりして熱中症が疑われる場合には、経口補水液による水分と塩分の補給が有効になります。

覚えるポイント

  • 発熱はセットポイントの上昇(感染・炎症)で起こり、解熱薬が有効です。うつ熱はセットポイントが正常なまま放熱が妨げられて起こり、解熱薬は無効で、環境調整と冷却が基本です。
  • 放熱の経路は輻射・伝導・対流・蒸発です。高温では汗の蒸発に頼り、多湿では汗が蒸発しにくくなります。高温多湿と寝具の掛けすぎが重なると熱がこもります。
  • 高齢者は暑さの感覚・発汗・口渇感が低下しており、室内でも熱中症になりやすいです。室温が28 ℃を超えないよう冷房を使うことが勧められています。
  • 外気温が室温より高いときは、換気では室温は下がりません。冷房が必要です。
  • 心不全では、手足の冷感が末梢循環の低下のサインであることがあります。NSAIDsや水分・塩分の過剰な摂取は、心不全を悪化させる要因になります。
  • 対応の順序は、まず原因に対処し、次に本人の訴えを確かめながら寝具や保温を調整し、最後に再評価します。本人の訴えを無視した一方的な対応は避けます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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