112AM075|第112回 看護師国家試験 過去問

音を感知するラセン器〈Corti〈コルチ〉器〉があるのはどれか。

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正解: 1

正答

1.蝸牛管

この問題のポイント

聴覚の受容器であるラセン器(コルチ器)が、内耳のどこにあるかを問う解剖の問題です。手がかりは「音を感知する」という言葉です。音を伝えるだけの器官(伝音系)と、刺激を感じ取る受容器を区別できるかが鍵になります。内耳のうち、聴覚は蝸牛、平衡覚は前庭と半規管が担うという役割分担を押さえていれば解けます。

解説

耳の構造と役割分担

耳は外耳・中耳・内耳の3つに分けられます。

  • 外耳:耳介と外耳道からなり、音を集めて鼓膜へ導きます。
  • 中耳:鼓膜、鼓室、耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)、耳管からなります。鼓膜の振動を耳小骨が増幅して内耳へ伝えます。耳管は鼓室と上咽頭をつなぎ、鼓室内の気圧を外気圧と等しく保ちます。
  • 内耳:側頭骨の中にある骨迷路(蝸牛・前庭・骨半規管)と、その内側にある膜迷路(蝸牛管・卵形囊と球形囊・膜半規管)からなり、聴覚と平衡覚の受容器があります。骨迷路と膜迷路のすき間は外リンパ、膜迷路の内部はカリウムを多く含む内リンパで満たされています。

外耳と中耳は音を「伝える」伝音系、内耳から中枢側は音を「感じ取る」感音系です。したがって、音を感知する受容器は内耳にあります。

蝸牛の内部とラセン器

蝸牛は約2回転半巻いたらせん状の管です。断面で見ると3つの部屋に分かれています。

  • 上の前庭階と下の鼓室階は外リンパで満たされ、蝸牛の頂上でつながっています。
  • その間にはさまれた中央の部屋が蝸牛管(中央階)で、内リンパで満たされています。
  • 蝸牛管と前庭階の間は前庭膜(ライスネル膜)、蝸牛管と鼓室階の間は基底膜で仕切られています。

ラセン器は蝸牛管の底にあたる基底膜の上に乗っています。内有毛細胞と外有毛細胞、それを支える支持細胞、有毛細胞の感覚毛に接する蓋膜から構成されます。

「前庭階」「鼓室階」は名前に前庭・鼓室と付いていますが、どちらも蝸牛の中の部屋です。中耳の鼓室や内耳の前庭とは別の構造なので、名前だけで判断しないよう注意が必要です。

音が電気信号になるまで

音は次の順に伝わります。

鼓膜 → ツチ骨 → キヌタ骨 → アブミ骨 → 前庭窓(卵円窓) → 前庭階の外リンパ → 基底膜の振動 → 有毛細胞の感覚毛が傾いて興奮 → 蝸牛神経 → 脳幹 → 内側膝状体 → 側頭葉の聴覚野

外リンパに生じた圧の波は、鼓室階を通って蝸牛窓(正円窓)から中耳側へ逃がされます。有毛細胞は、機械的な振動を神経の電気信号に変える変換器の役割を果たしています。

音の高さの識別と臨床での意味

基底膜は、蝸牛の基部(入口側)ほど幅が狭くて硬く、高い音でよく振動します。頂部に向かうほど幅が広く柔らかくなり、低い音でよく振動します。このように、音の高さは「基底膜のどの場所が振動したか」で区別されます。

有毛細胞は一度失われると再生しません。

  • 騒音性難聴:4,000Hz付近の聴力が特徴的に低下します(c5dip)。
  • 老人性難聴:高音域から聞こえにくくなる感音難聴です。

高齢者と話すときは、大声を出すよりも、やや低めの声でゆっくり、はっきり、正面から話すことが基本です。これは、この仕組みに基づいた看護上の配慮です。

平衡覚の受容器

  • 半規管:互いに直交する3本からなり、頭部の回転を感じ取ります。
  • 前庭:卵形囊と球形囊の耳石器が、頭の傾きと直線加速度を感じ取ります。

平衡覚の情報を伝える前庭神経は、蝸牛神経と合わさって内耳神経(第Ⅷ脳神経)となります。

内耳の病気では、聴覚と平衡覚が同時に障害されることがあります。例えばメニエール病は内リンパ水腫によって起こり、回転性めまい・難聴・耳鳴を繰り返します。

選択肢の確認

1.蝸牛管:正答。蝸牛の内部を仕切る3つの部屋のうち中央にある膜迷路で、内リンパで満たされています。その底をなす基底膜の上にラセン器があり、有毛細胞が音による基底膜の振動を電気信号に変えて蝸牛神経へ伝えます。骨迷路としての「蝸牛」と答えても誤りとは言いにくいですが、厳密にラセン器が収まっているのは、蝸牛の中の膜迷路の部分です。

2.半規管:前・後・外側の3本が互いにほぼ直交して配置され、根元の膨大部にある膨大部稜の有毛細胞が、頭部の回転に伴う内リンパの流れを感じ取ります。平衡覚(回転の感覚)の受容器であり、音は感知しません。回転性めまいや眼振と関係が深い部位で、「有毛細胞がある」という共通点から聴覚の受容器と取り違えやすいので注意します。

3.鼓室:中耳にある空気で満たされた空間で、ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨が収まり、耳管によって上咽頭とつながって気圧を調整します。音の振動を増幅して内耳へ伝える伝音系の一部であり、受容器はありません。中耳炎などでここが障害されると、伝音難聴が起こります。

4.鼓膜:外耳道の奥で外耳と中耳を隔てる薄い膜で、空気の振動である音波を受け取り、ツチ骨へ伝えます。伝音系の入口にあたる構造であり、音を神経の信号に変える働きはありません。穿孔や炎症で障害されると伝音難聴の原因になります。

5.前庭:骨迷路の中央部にあり、内部の膜迷路である卵形囊と球形囊に平衡斑があります。平衡斑の有毛細胞の上には耳石(平衡砂)を載せた耳石膜があり、耳石のずれによって頭の傾き(重力の方向)と直線加速度を感じ取ります。平衡覚の受容器であり、音は感知しません。

覚えるポイント

  • 外耳と中耳(鼓膜・鼓室・耳小骨・耳管)は音を伝える伝音系、内耳から中枢側は音を感じ取る感音系です。
  • 聴覚の受容器であるラセン器(コルチ器)は、蝸牛管の基底膜の上にあり、有毛細胞が振動を電気信号に変えます。
  • 蝸牛の断面は、前庭階(外リンパ)・蝸牛管(内リンパ)・鼓室階(外リンパ)の3つの部屋です。前庭階・鼓室階という名前にまどわされないようにします。
  • 音の伝導路は、鼓膜 → ツチ骨 → キヌタ骨 → アブミ骨 → 前庭窓 → 蝸牛 → 蝸牛神経 → 側頭葉の聴覚野です。
  • 基底膜の基部は高音、頂部は低音を担当します。騒音性難聴は4,000Hz付近(c5dip)、老人性難聴は高音域から低下します。
  • 平衡覚は、半規管が回転(角加速度)、前庭の卵形囊・球形囊(耳石器)が傾きと直線加速度を担います。

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