112AM074|第112回 看護師国家試験 過去問
国際協力として5歳未満児死亡率の高い地域に1年間派遣されることになった看護師が、派遣される地域の住民に対して行う活動でプライマリヘルスケアの原則に基づいた活動はどれか。
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正解: 3
正答
3.派遣先で入手できる資源を利用した活動
この問題のポイント
プライマリヘルスケア(PHC)の原則を、国際協力の場面に当てはめられるかを問う問題です。手がかりは「プライマリヘルスケアの原則」「5歳未満児死亡率の高い地域」「1年間派遣」の3つです。住民が主体となり、地域の資源と適正な技術を使い、派遣が終わった後も続けられる活動かどうかで判断します。PHCの原則の一つである「地域資源の有効活用」に当たる選択肢3が正答です。
解説
プライマリヘルスケアとは
PHCは、1978年にWHOとUNICEFが旧ソ連のアルマ・アタ(現カザフスタンのアルマトイ)で開いた国際会議のアルマ・アタ宣言で提唱されました。宣言は「西暦2000年までにすべての人々に健康を(Health for All by the year 2000)」を目標に掲げ、健康を基本的人権と位置づけています。
PHCは次のような基本的な保健医療を指します。
- 実践的で科学的に妥当で、社会に受け入れられる方法と技術に基づく
- 地域の個人や家族が十分に参加できる
- 地域社会と国が負担できる費用の範囲で、すべての人が利用できる
試験でよく問われるPHCの原則は次の5つです。
- 住民のニーズに基づく
- 地域資源の有効活用
- 住民参加(住民の主体性)
- 多分野間の協調と統合(農業、教育、水道、住宅など、保健以外の部門との連携)
- 適正技術の使用
宣言は具体的な活動として、次の8項目を挙げています。
- 主要な健康問題とその予防法についての保健教育
- 食料供給と適切な栄養
- 安全な水と基本的な環境衛生
- 家族計画を含む母子保健
- 主要な感染症の予防接種
- 地方流行病の予防と対策
- 一般的な疾病や外傷の適切な治療
- 必須医薬品の供給
問題文の手がかりを読む
- 5歳未満児死亡率が高い地域:5歳未満児の主な死因は、早産や出生時仮死などの新生児期の合併症、肺炎、下痢症、マラリアなどです。背景に低栄養があることも多くあります。これらの多くは、比較的安価な方法で予防したり重症化を防いだりできます。例として、安全な水と衛生、母乳育児の推進、予防接種、経口補水療法、栄養改善、蚊帳の使用などがあります。つまり、高度な医療よりも、基本的な保健活動を地域に根づかせることが大きな効果を生む分野です。
- 1年間の派遣:看護師が帰国した後に活動が止まってしまえば、住民の健康は守れません。現地にない物品や外部の人材に頼る活動は、派遣が終われば途絶えます。持続可能性を考えると、現地で手に入る物、現地の人材、現地の仕組みを生かすことが前提になります。
正答に至る判断
PHCの原則に立つと、派遣された看護師の役割は、外から医療を持ち込んで提供することではありません。住民が自分たちで健康を守れるよう支援することです。具体的には、次のような活動が当てはまります。
- 現地で手に入る経口補水塩の使い方を母親に伝える
- 地域のリーダーと一緒に手洗いの習慣づくりを進める
- 村の保健ボランティアを育成して知識と技術を引き継ぐ
国際協力の実践では、相手国や住民の主体性(オーナーシップ)と、現地の文化・価値観を尊重することも基本姿勢です。この考え方は看護の統合分野でも問われます。
混同しやすい関連事項
- ヘルスプロモーション:1986年のWHOのオタワ憲章で提唱されました。人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセスと定義されます。5つの活動領域(健康的な公共政策づくり、健康を支援する環境づくり、地域活動の強化、個人技術の開発、ヘルスサービスの方向転換)とあわせて、PHCと区別して覚えます。
- アスタナ宣言:2018年、アルマ・アタ宣言から40年の節目に採択され、PHCの重要性を再確認しました。PHCは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するための基盤と位置づけられています。
選択肢の確認
1.高度な治療を目的とした活動:高度な治療には高価な医療機器や薬剤、専門医などが必要です。そのため、地域社会が負担できる費用の範囲で行うというPHCの考え方や、「適正技術の使用」の原則に合いません。派遣後に現地で維持することも難しくなります。予防や保健教育で防げる死亡が多い地域のニーズからも外れます。災害時の救急医療支援や病院の専門診療への技術協力など、PHCとは別の目的の国際協力では専門的な治療が中心になる場合もあります。それと混同しないようにしましょう。
2.医学的研究の遂行を優先した活動:PHCでは住民のニーズに基づいて活動を組み立てることが基本であり、派遣者側の研究目的を優先すると住民の必要とずれてしまいます。研究そのものが否定されるわけではなく、地域の健康課題を明らかにする調査が行われることもあります。ただしその場合も、住民の利益を最優先し、十分な説明と同意、倫理審査などの研究倫理を守ることが前提です。
3.派遣先で入手できる資源を利用した活動:正答。PHCの「地域資源の有効活用」の原則にそのまま当たります。現地で手に入る物品・人材・施設・住民組織を生かすので、費用を地域で負担でき、住民が自分たちで続けられます。その結果、1年間の派遣が終わった後も効果が持続します。現地の生活習慣や文化に合った方法を選ぶことで、住民に受け入れられやすくなる点も重要です。
4.派遣される専門家チームを中心とする活動:外部の専門家が主体となって進める活動は、住民が計画から実施、評価まで主体的に関わるという「住民参加」の原則に反します。専門家中心の活動では住民に知識や技術が根づかず、チームが撤退すると活動が止まりがちです。専門家の役割は、住民や現地の保健医療従事者が主役になれるよう支え、技術を引き継ぐことにあります。
覚えるポイント
- PHCは1978年のアルマ・アタ宣言(WHO・UNICEF)で提唱され、目標は「2000年までにすべての人々に健康を」です。2018年のアスタナ宣言で再確認されました。
- PHCの5原則は、住民のニーズに基づく、地域資源の有効活用、住民参加、多分野間の協調と統合、適正技術の使用です。
- 国際協力では、住民・相手国の主体性、文化の尊重、派遣終了後も続く持続可能性が判断の軸です。「高度な技術」「外部主導」「研究優先」はPHCに反する選択肢の目印です。
- ヘルスプロモーションは1986年のオタワ憲章で提唱されました。PHC(アルマ・アタ宣言)と年・宣言名を取り違えないようにします。
- 5歳未満児の主な死因は、新生児期の合併症、肺炎、下痢症、マラリアで、背景に低栄養があります。予防接種、母乳育児、経口補水療法、安全な水と衛生など、低コストの対策が有効です。SDGsでは2030年までに5歳未満児死亡率を出生千対25以下に下げることが目標とされています。
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