112AM073|第112回 看護師国家試験 過去問
職員数が300人の病院の看護師の働き方に関するマネジメントで、労働安全衛生法に基づいて規定されているのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1.1年以内ごとに1回、定期に心理的な負担の程度を把握するための検査を行う。
この問題のポイント
看護師の働き方にかかわる4つのルールについて、根拠となる法律を見分ける問題です。「心理的な負担の程度を把握するための検査」はストレスチェックのことで、労働者の健康確保を目的とする労働安全衛生法に定められています。休憩時間、生理日の休暇、妊産婦の時間外労働の免除は、いずれも労働条件の最低基準を定める労働基準法の規定です。問題文の「職員数300人」は、ストレスチェックが義務となる「常時50人以上」の条件を満たすことを示しています。
解説
労働基準法と労働安全衛生法の役割の違い
労働基準法は、賃金・労働時間・休憩・休日・休暇など、労働条件の最低基準を定める法律です。産前産後休業、妊産婦の就業制限、生理日の措置といった女性の保護もこの法律に含まれます。
労働安全衛生法は、労働基準法の安全衛生に関する章を独立させて1972年に制定された法律です。職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促すことを目的としています。事業者には、安全衛生管理体制の整備、健康診断、医師による面接指導、ストレスチェックなど、健康を守るしくみを整えることが義務づけられています。
見分けるときは、次のように考えると整理しやすくなります。
- 働く時間・休み方・母性の保護(何時間まで働かせてよいか、いつ休ませるか)なら労働基準法
- 健康状態の把握と管理(健診、面接指導、ストレスチェック、産業医)なら労働安全衛生法
ストレスチェック制度
ストレスチェックは2014年の労働安全衛生法改正で創設され、2015年12月から実施されています。
- 対象:常時50人以上の労働者を使用する事業場では実施が義務です。50人未満の事業場は、出題当時は努力義務でした。300人規模のこの病院は実施義務があります。
- 頻度:1年以内ごとに1回、定期に実施します。
- 実施者:医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師です。受検者の人事に直接の権限を持つ人は、実施の事務に従事できません。
- 内容:仕事上のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートの3領域を調べます。調査票には職業性ストレス簡易調査票が推奨されています。
- 結果の扱い:結果は実施者から本人に直接通知されます。本人の同意がなければ事業者に提供できません。
- 事後措置:高ストレスと判定された人が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を行い、医師の意見を聴いたうえで必要な就業上の措置を講じます。申し出を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
- 集団分析:部署ごとの結果を分析して職場環境の改善に生かすことは努力義務です。
制度の主な目的は、うつ病などを見つけ出すことではありません。労働者が自分のストレスに気づいてセルフケアにつなげること、そして職場環境を改善することによる一次予防です。なお、労働者本人に受検の義務はありません。
その後、2025年の法改正で、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務づけられることになりました(公布から3年以内に施行)。本問の病院は出題当時から義務の対象なので、正答に影響はありません。
夜勤のある看護職に関係するその他の労働安全衛生法の規定
- 定期健康診断は1年以内ごとに1回です。ただし、深夜業を含む業務に常時従事する人は特定業務従事者にあたり、6か月以内ごとに1回受けます。
- 時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人が申し出た場合は、医師による面接指導を行います。
- 常時50人以上の事業場では、産業医と衛生管理者の選任、衛生委員会の設置(毎月1回以上開催)が必要です。
看護職員の月平均夜勤時間72時間以下という基準もよく話題になりますが、これは法律ではなく診療報酬(入院基本料の施設基準)の要件です。労働関係の法律と混同しないようにしましょう。
選択肢の確認
1.1年以内ごとに1回、定期に心理的な負担の程度を把握するための検査を行う。:正答。ストレスチェックのことで、労働安全衛生法が常時50人以上の労働者を使用する事業場に、1年以内ごとに1回の実施を義務づけています。職員数300人のこの病院は実施義務の対象です。結果は本人に直接通知し、高ストレス者が申し出れば医師による面接指導につなげます。
2.8時間を超える夜勤の時は1時間以上の休憩時間を確保する。:休憩時間は労働基準法で定められています。労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければなりません。この規定は昼夜を問わず適用され、夜勤だけの決まりではありません。病院などの保健衛生業では、休憩を全員一斉に与えるという原則の例外として、交代で休憩を取ることが認められています。休憩のルールは労働条件の最低基準にあたるため、労働安全衛生法の規定ではありません。
3.生理日に就業が著しく困難な場合は休暇の請求ができる。:労働基準法の「生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」の規定です。女性が請求したとき、使用者はその人を生理日に就業させてはなりません。休暇の日数を制限することはできません。有給か無給かは法律で定められておらず、就業規則などで決まります。女性の健康に関わる内容なので労働安全衛生法と取り違えやすいのですが、女性保護の規定として労働基準法に置かれています。
4.妊娠中は請求すれば時間外労働が免除される。:労働基準法の妊産婦の保護規定です。妊産婦(妊娠中と産後1年を経過しない女性)が請求した場合、使用者は時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはなりません。変形労働時間制の職場でも、1日・1週の法定労働時間を超えて働かせることはできません。夜勤免除の請求もこの規定が根拠になります。妊娠中の健康診査を受ける時間の確保や、医師の指導事項に基づく勤務時間の変更などの措置は、男女雇用機会均等法の母性健康管理の規定です。どの法律の規定かを区別して覚えましょう。
覚えるポイント
- 労働基準法は労働条件の最低基準(労働時間、休憩、休日、休暇、母性保護)、労働安全衛生法は労働者の安全と健康の確保(健診、面接指導、ストレスチェック、産業医)を定めています。
- ストレスチェックは労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の事業場で1年以内ごとに1回実施します。結果は本人に直接通知し、本人の同意なく事業者に提供できません。目的は一次予防です。
- 休憩は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上です(労働基準法)。
- 労働基準法の母性保護は、産前6週(多胎14週)・産後8週の休業、妊産婦が請求した場合の時間外労働・休日労働・深夜業の禁止、生後満1年未満の子を育てる女性の育児時間(1日2回、各30分以上)、生理日の措置です。妊娠中の健診時間の確保は男女雇用機会均等法です。
- 深夜業を含む業務に常時従事する人の健康診断は6か月以内ごとに1回です(労働安全衛生法)。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。