112PM030|第112回 看護師国家試験 過去問

帯状疱疹 herpes zoster について正しいのはどれか。

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正解: 2

正答

2.感染の既往として水痘 varicella がある。

この問題のポイント

帯状疱疹の原因ウイルス、発症のしくみ(潜伏と再活性化)、合併症を理解しているかを問う問題です。判断の鍵は、帯状疱疹が「水痘として初感染した**水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)**が神経節に潜伏し、免疫が低下したときに再活性化して起こる病気」だという点です。この病態が分かれば、原因ウイルス、ウイルスが体内に残るかどうか、神経障害の範囲を問う選択肢をすべて判断できます。

解説

初感染は水痘、再活性化が帯状疱疹

VZVはヘルペスウイルス科のDNAウイルスです。初めて感染したときに発症するのが水痘(水ぼうそう)で、多くは小児期にかかります。水痘が治ってもウイルスは排除されません。感覚神経を通って脊髄後根神経節や脳神経の感覚神経節(三叉神経節など)に入り、生涯潜伏し続けます。

加齢、疲労やストレス、悪性腫瘍、糖尿病、副腎皮質ステロイド薬・免疫抑制薬・抗がん薬の使用などで細胞性免疫が低下すると、潜伏していたウイルスが再活性化します。ウイルスは神経節で増殖しながら神経を伝って皮膚に達します。その結果、その神経が支配する皮膚領域(デルマトーム)に一致して、片側性・帯状に、痛みを伴う紅斑と小水疱が現れます。帯状疱疹は外から新たにうつる病気ではなく、以前に感染したウイルスが体内で再び活動する病気です。そのため、過去の水痘(VZVの初感染)が発症の前提になります。

症状と合併症

  • 皮疹に先立って、数日前からピリピリした神経痛様の痛みが出ることが多いです。
  • 皮疹は片側性で正中線を越えないのが原則です。胸部の肋間神経領域に多く、顔面の三叉神経領域にもよくみられます。
  • 高齢者では、皮疹が治った後も痛みが長く残る帯状疱疹後神経痛が問題になります。
  • 顔面神経が障害されるとRamsay Hunt〈ラムゼイ・ハント〉症候群となり、耳介や外耳道の水疱、顔面神経麻痺、難聴・耳鳴・めまいを伴います。
  • 三叉神経第1枝(眼神経)領域では、角膜炎やぶどう膜炎などの眼合併症に注意します。
  • 免疫不全者では全身に皮疹が広がる汎発性帯状疱疹を起こすことがあります。まれに髄膜炎・脳炎もみられます。

治療と看護

抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビル)は、できるだけ早期に開始します。目安は皮疹出現から72時間以内です。アシクロビルやバラシクロビルは腎排泄のため、高齢者や腎機能低下者では用量調整が必要です。看護では、腎機能、水分摂取、意識障害などの精神神経症状を観察します。あわせて、痛みの程度と睡眠・日常生活への影響を評価して鎮痛を図り、水疱を破らないよう清潔を保って二次感染を防ぎます。

感染対策では、水疱の内容物にウイルスが含まれることが重要です。水痘に対する免疫のない人(水痘の既往もワクチン接種歴もない人など)が接触すると、帯状疱疹ではなく水痘として発症するおそれがあります。免疫のない妊婦や新生児、免疫不全者は重症化しやすいため、特に注意します。免疫正常者の限局性帯状疱疹では、皮疹を覆って水疱内容物に触れないようにし、標準予防策(施設によっては接触予防策)で対応します。汎発性帯状疱疹と、免疫不全患者の帯状疱疹(汎発化が否定されるまで)では、空気予防策と接触予防策が必要です。

予防には、50歳以上を主な対象とする帯状疱疹ワクチン(生ワクチンと組換えサブユニットワクチン)があります。出題当時は任意接種でした。現在は、2025年4月から予防接種法上のB類疾病として、65歳の者などを対象に定期接種が行われています。

選択肢の確認

1.運動神経麻痺は生じない。:帯状疱疹は感覚神経の障害(痛み)が主体ですが、炎症が神経根や脳神経に及ぶと運動神経も障害されるため、この記述は誤りです。代表例はRamsay Hunt症候群の顔面神経麻痺です。このほか、四肢の分節性の筋力低下や、仙髄領域の帯状疱疹による排尿障害(尿閉)も起こりえます。「痛みが主症状」という特徴を「運動麻痺は起こらない」と取り違えないよう注意します。

2.感染の既往として水痘 varicella がある。:正答。帯状疱疹は、水痘として初感染したVZVが後根神経節などに潜伏し、細胞性免疫の低下を契機に再活性化して起こります。したがって、水痘(VZV初感染)の既往があることが前提です。

3.ウイルスは発症後1か月で消滅する。:ヘルペスウイルス科のウイルスは、感染後も体内から排除されずに生涯潜伏し続けるのが特徴です。帯状疱疹が治ってもウイルスは消えないため、この記述は誤りです。潜伏する場所はウイルスによって異なります。VZVは単純ヘルペスウイルスと同じく、脊髄後根神経節や脳神経の感覚神経節に潜伏します。一方、EBウイルスはB細胞に、サイトメガロウイルスは単球系の細胞などに潜伏します。帯状疱疹の皮疹は、水疱がやがて痂皮(かさぶた)になり、通常2〜4週間ほどで治ります。しかし、これは皮膚症状が治まったというだけで、ウイルスは神経節に潜伏した状態で体内に残ります。このため、頻度は高くないものの、帯状疱疹は再発することがあります。

4.単純ヘルペスウイルスの感染が原因である。:帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)であり、単純ヘルペスウイルスではないため、この記述は誤りです。単純ヘルペスウイルス(HSV)も同じヘルペスウイルス科です。感覚神経節に潜伏して再活性化する点が共通するため、混同しやすいウイルスです。HSV-1は主に口唇ヘルペス、角膜ヘルペス、成人のヘルペス脳炎の原因となり、HSV-2は主に性器ヘルペスの原因となります。単純ヘルペスは同じ部位に繰り返し再発しやすいのに対し、帯状疱疹はデルマトームに沿った帯状の分布と強い神経痛が特徴です。

覚えるポイント

  • 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染が水痘、神経節に潜伏したウイルスの再活性化が帯状疱疹です。
  • VZVは脊髄後根神経節と脳神経の感覚神経節に潜伏し、皮疹が治っても消えずに生涯体内に残ります。再活性化の引き金は、加齢・悪性腫瘍・免疫抑制薬などによる細胞性免疫の低下です。
  • 皮疹は片側性で、デルマトームに沿って帯状に分布し、正中線を越えません。痛みが皮疹に先行することがあります。
  • 主な合併症は、帯状疱疹後神経痛(高齢者に多い)、Ramsay Hunt症候群(耳介の水疱・顔面神経麻痺・難聴・めまい)、眼合併症(三叉神経第1枝領域)、運動麻痺・排尿障害です。
  • 抗ウイルス薬は早期(皮疹出現から72時間以内が目安)に開始します。水疱の内容物には感染性があり、免疫のない人には水痘として感染します。
  • 帯状疱疹の原因はVZVで、単純ヘルペスウイルス(主にHSV-1:口唇・角膜・脳炎、HSV-2:性器)とは別のウイルスです。VZVとHSVはどちらも感覚神経節に潜伏しますが、同じヘルペスウイルス科でも、EBウイルスはB細胞に、サイトメガロウイルスは単球系の細胞などに潜伏します。

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