112PM029|第112回 看護師国家試験 過去問
歯周病 periodontal disease について正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.真性ポケットが形成される歯周炎 periodontitis を含む。
この問題のポイント
歯周病の原因、分類、病態を問う問題です。歯周病は歯肉炎と歯周炎を含む総称で、炎症が歯肉にとどまるか、歯根膜や歯槽骨まで及ぶかで区別します。判断の鍵は2つあります。1つは仮性ポケットと真性ポケットの違いです。もう1つは、直接の原因(歯垢中の細菌)と、発症や進行を促す危険因子(喫煙、糖尿病など)を分けて考えることです。
解説
歯周組織と歯周病の原因
歯を支える組織を歯周組織といい、歯肉、歯根膜(歯周靱帯)、セメント質、歯槽骨の4つからなります。歯周病は、これらの組織に起こる慢性の炎症性疾患をまとめた呼び名です。
直接の原因は、歯と歯肉の境目にたまる歯垢(デンタルプラーク)です。歯垢は細菌が集まって粘着性の膜をつくったバイオフィルムです。そのため、うがいだけでは除去できず、歯ブラシや歯間ブラシなどによる機械的な清掃が必要です。歯周炎に関わる代表的な菌として、嫌気性菌の Porphyromonas gingivalis などが知られています。歯垢が石灰化すると歯石になり、表面が粗いため、さらに歯垢が付着しやすくなります。
細菌による炎症に加えて、発症や進行を左右する危険因子があります。
- 宿主因子:糖尿病、加齢、免疫機能の低下、遺伝的素因、妊娠などのホルモン変化
- 環境因子:喫煙(最大の環境因子)、ストレス、食生活
- 局所因子:歯石、適合の悪い補綴物・修復物、歯列不正、口呼吸
これらは細菌による炎症を悪化させる因子であり、直接の原因とは区別して理解します。
歯肉炎と歯周炎の違い
- 歯肉炎:炎症は歯肉に限られます。発赤、腫脹、ブラッシング時の出血がみられます。歯肉が腫れて盛り上がるため、歯肉溝が見かけ上深くなります。これを仮性ポケット(歯肉ポケット)と呼びます。歯と歯肉の付着は保たれ、歯槽骨の破壊はありません。プラークコントロールで健康な状態に戻る、可逆的な段階です。
- 歯周炎:炎症が歯根膜、セメント質、歯槽骨へ広がります。付着上皮が根の先の方向へ移動し、歯と歯肉の付着が失われることで真性ポケット(歯周ポケット)ができます。歯槽骨が吸収されるため、歯の動揺、排膿、歯肉退縮、口臭がみられ、進行すると歯が抜け落ちます。失われた歯槽骨は自然には元に戻りにくく、歯を失う主な原因の一つです。
骨が壊れる仕組みは次のとおりです。細菌の菌体成分(内毒素など)に対して免疫応答が起こり、炎症性サイトカインがつくられます。これにより破骨細胞が活性化し、歯槽骨が吸収されます。健康な歯肉溝は1〜2mm程度と浅く、歯科ではポケットの深さを測る検査(プロービング)で進行度を評価します。歯科疾患実態調査では、「4mm以上の歯周ポケットを有する者」の割合が歯周病の指標として使われています。歯周病は痛みなどの自覚症状が乏しいまま進むため、定期的な歯科健診が重要です。
全身とのつながりと看護への応用
歯周病は口の中だけの問題ではありません。
- 糖尿病:歯周病は糖尿病の合併症の一つとされます。一方で、歯周炎の炎症が血糖コントロールを悪化させるという双方向の関係があります。
- 誤嚥性肺炎:口腔内の細菌を含む唾液を誤嚥することで起こるため、高齢者や要介護者では口腔ケアが予防につながります。
- そのほか、動脈硬化性疾患や、早産・低出生体重児との関連も指摘されています。
また、フェニトイン、ニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬、シクロスポリンは歯肉増殖を起こすことがあります。歯肉が厚くなると歯垢がたまりやすくなるため、これらを服用中の患者では特に口腔ケアが大切です。看護の場面では、入院患者や高齢者への口腔ケア、ブラッシング指導、禁煙支援、糖尿病患者への歯科受診のすすめなどに、この知識が生きます。
選択肢の確認
1.原因はウイルス感染が多い。:歯周病の原因は、歯垢中の細菌がつくるバイオフィルムです。ウイルス感染が主な原因になることはありません。ウイルスが関わる口腔の病変には、単純ヘルペスウイルスによる疱疹性歯肉口内炎があります。ただしこれは急性の感染症で、慢性に進む歯周病とは別のものです。口腔の炎症をすべてウイルスと結びつけないよう注意します。
2.発症の直接因子として飲酒がある。:歯周病の直接因子は歯垢中の細菌であり、飲酒は直接因子には当たりません。喫煙、糖尿病、ストレスなどは、発症や進行を促す危険因子(修飾因子)です。なかでも喫煙は、歯肉の血流低下や好中球の働きの低下を通じて歯周病を悪化させる最大の環境因子です。さらに、出血などの炎症症状が目立ちにくくなるため、発見が遅れやすくなります。飲酒と歯周病の関連を示す報告もありますが、あくまで細菌による炎症に上乗せされる間接的な因子です。「直接の原因」と「リスクを高める因子」を区別することが、この選択肢を見分けるポイントです。
3.真性ポケットが形成される歯周炎 periodontitis を含む。:正答。歯周病は、歯肉炎と歯周炎を含む総称です。歯周炎では炎症が歯根膜や歯槽骨に及び、付着上皮が根の先の方向へ移動して付着が失われます。その結果、真性ポケット(歯周ポケット)ができます。歯肉の腫れだけで生じる歯肉炎の仮性ポケットとは、成り立ちが異なります。
4.破壊が歯槽骨まで及んでいるのは歯肉炎 gingivitis である。:歯槽骨まで破壊が及んでいるのは歯周炎であり、歯肉炎ではありません。歯肉炎の炎症は歯肉に限られ、付着の喪失や歯槽骨の吸収はなく、適切なプラークコントロールで回復が見込めます。この記述は歯肉炎と歯周炎を入れ替えたものです。「歯肉炎=歯肉だけ・可逆的・仮性ポケット」「歯周炎=歯槽骨まで・回復しにくい・真性ポケット」と、対にして覚えます。
覚えるポイント
- 歯周病は歯肉炎と歯周炎の総称です。歯周組織は歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨の4つです。
- 直接の原因は歯垢(プラーク)中の細菌によるバイオフィルムで、ウイルスではありません。うがいでは落ちず、機械的な清掃が必要です。
- 歯肉炎は歯肉に限られ、仮性ポケットができ、可逆的です。歯周炎は歯槽骨まで破壊され、真性ポケットができ、歯の動揺や排膿を経て歯を失う原因になります。
- 危険因子は喫煙(最大の環境因子)、糖尿病、加齢、ストレス、妊娠です。歯肉増殖を起こす薬剤として、フェニトイン、カルシウム拮抗薬、シクロスポリンも押さえます。
- 全身との関連として、糖尿病(双方向の関係)、誤嚥性肺炎、動脈硬化性疾患、早産・低出生体重児が問われます。口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防につながります。
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