112PM028|第112回 看護師国家試験 過去問

肥大型心筋症 hypertrophic cardiomyopathy について正しいのはどれか。

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正解: 2

正答

2.拡張障害が問題となる。

この問題のポイント

心筋症の代表的な型(肥大型・拡張型・拘束型)の違いのうち、肥大型心筋症の病因、形態、機能障害を問う問題です。「肥大」という言葉から、心室壁が厚くなって内腔が狭くなる形を思い浮かべることが出発点です。そこから「厚く硬い心室は広がりにくい」、つまり拡張障害が主体になると結びつけられるかが鍵です。ほかの選択肢には、拡張型心筋症や弁膜症の特徴が混ぜられています。

解説

肥大型心筋症とは

肥大型心筋症は、高血圧や大動脈弁狭窄症のような心臓への圧負荷の原因がないのに、左室(ときに右室)の心筋が異常に肥大する疾患です。高血圧などによって二次的に生じた心肥大は、定義上ここに含めません。

病因の中心は遺伝です。心筋の収縮単位であるサルコメアを構成する蛋白(βミオシン重鎖、心筋ミオシン結合蛋白Cなど)の遺伝子変異が多く見つかっています。常染色体顕性(優性)遺伝の形式をとることが多く、家族内発症がみられるため、家族歴の聴取や家族の検診が重要です。組織では、心筋細胞の肥大に加えて、心筋線維の並びが乱れる錯綜配列が特徴的にみられます。

なぜ拡張障害が問題になるのか

肥大は左室全体に均一ではなく、心室中隔が特に厚くなる非対称性中隔肥大が典型です。壁が内側に向かって厚くなるため、左室内腔は狭くなります。

心室は拡張期に弛緩して血液を受け入れ、収縮期に送り出します。肥大した心筋は弛緩が遅く、硬くて伸びにくい(コンプライアンスの低下)ため、拡張期に十分な血液を受け入れられません。その結果、左室拡張末期圧、左房圧、肺静脈圧の順に圧が上昇し、労作時の息切れや呼吸困難といった肺うっ血の症状が出ます。一方で収縮力は保たれ、左室駆出率は正常かむしろ高いことが多いのが特徴です。まとめると、「収縮は保たれているが、広がりにくいことが問題」となる病態です。聴診では、硬い心室に心房が血液を押し込むときの音としてIV音を聴取することがあります。

頻脈になると拡張期が短くなり、心室への血液の充満がさらに悪化します。心房細動になると心房収縮による充満の上乗せが失われるため、心拍出量が落ちて心不全が悪化しやすくなります。また、心房内の血栓による塞栓症の危険も高まります。

閉塞性肥大型心筋症と治療

閉塞性肥大型心筋症は、厚い中隔と、収縮期に前方へ引き込まれる僧帽弁前尖(収縮期前方運動)によって、左室流出路が狭くなる型です。胸骨左縁で収縮期雑音を聴取し、労作時の失神や胸痛を起こすことがあります。

この流出路の狭窄は、次のような条件で悪化します。

  • 収縮力が強まるとき(ジギタリスなどの強心薬)
  • 左室の容量が減るとき(脱水、急な立ち上がり、硝酸薬)

そのため、強心薬や硝酸薬は原則として避けます。治療の基本はβ遮断薬やベラパミルです。心拍数を下げて拡張期を延ばし、収縮力を抑えて閉塞を和らげます。薬物療法で改善しない場合は、中隔心筋切除術や経皮的中隔心筋焼灼術を検討します。なお、心尖部だけが肥大する心尖部肥大型は日本人に比較的多く、心電図で巨大陰性T波を示します。

突然死と看護

錯綜配列を背景に心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈を起こしやすく、若年者や運動選手の突然死の原因として重要です。心停止の既往、原因不明の失神、家族の突然死歴などは高リスクの手がかりで、植込み型除細動器(ICD)の適応が検討されます。

看護では次のような支援が大切です。

  • 競技スポーツなど激しい運動を控えるよう指導する
  • 脱水を予防する
  • 服薬の継続を支援する
  • 動悸や失神などの症状が出たら報告するよう伝える

また、一部の患者は長い経過のなかで壁が薄くなり、内腔が拡大して収縮力も落ちる「拡張相肥大型心筋症」に移行し、予後が悪くなります。

選択肢の確認

1.ウイルス感染が主な病因である。:肥大型心筋症の主な病因は、サルコメア蛋白の遺伝子変異です。ウイルス感染ではありません。ウイルス感染が直接関わるのは心筋炎で、コクサッキーウイルスなどによる急性心筋炎は、かぜ症状や消化器症状に続いて発症し、劇症化することもあります。ウイルス性心筋炎の一部は慢性化して拡張型心筋症に似た病態へ移行すると考えられています。「ウイルス感染」は心筋炎、さらに拡張型心筋症と結びつけて整理しておくと、取り違えを防げます。

2.拡張障害が問題となる。:正答。肥大した心筋は弛緩しにくく硬いため、拡張期に左室へ十分な血液が入りません。その結果、左房圧や肺静脈圧が上がり、労作時呼吸困難などを生じます。収縮力は保たれ、左室駆出率は正常から高値となることが多いです。そのため、問題の中心は収縮障害ではなく拡張障害です。

3.左室内腔は拡大する。:肥大型心筋症では心筋が内側へ向かって厚くなるため、左室内腔は拡大せず、狭くなります。内腔が拡大し、壁が薄くなって収縮力が低下するのは拡張型心筋症の特徴です。肥大型心筋症でも末期に拡張相へ移行すると内腔が拡大しますが、これは一部の患者にみられる進行した病態であり、本症の基本的な特徴ではありません。

4.弁膜に肥厚を認める。:肥大型心筋症で厚くなるのは心室の心筋で、弁膜の肥厚は本症の特徴ではありません。弁尖の肥厚や石灰化は、リウマチ性弁膜症や加齢に伴う大動脈弁狭窄症などでみられる所見です。閉塞性肥大型心筋症では、僧帽弁前尖の収縮期前方運動によって僧帽弁逆流を伴うことがあります。ただしこれは弁の動きの異常であり、弁膜そのものの肥厚ではありません。なお、大動脈弁狭窄症による圧負荷で生じる左室肥大は、原因が明らかな二次性の肥大なので肥大型心筋症には含めません。

覚えるポイント

  • 肥大型心筋症は、原因の明らかでない心筋肥大です。多くはサルコメア遺伝子の変異で、常染色体顕性遺伝により家族内に発症します。壁は厚く内腔は狭く、拡張障害が主体で、駆出率は保たれます。
  • 拡張型心筋症は、内腔が拡大して壁が薄くなり、収縮障害が主体で駆出率が低下します。拘束型心筋症は、壁厚や内腔はほぼ正常ですが心筋が硬く、拡張障害と心房の拡大を示します。
  • 閉塞性肥大型心筋症では、左室流出路の狭窄により収縮期雑音と労作時失神がみられます。強心薬、硝酸薬、脱水で悪化し、治療の基本はβ遮断薬とベラパミルです。
  • 若年者や運動選手の突然死の重要な原因です。高リスクの患者ではICDを検討し、激しい運動を制限します。
  • 心音は、硬い心室(肥大型)ではIV音、拡大した収縮不全の心室(拡張型)ではIII音が手がかりになります。心尖部肥大型は巨大陰性T波が特徴です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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