112PM027|第112回 看護師国家試験 過去問
リンパの流れで正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.筋運動を行うと流量は増加する。
この問題のポイント
リンパの流れについて、流れる量、静脈に戻る経路(胸管と右リンパ本幹の区別)、流れる方向、流れを生み出す仕組みの4点を問う基礎問題です。判断の鍵は、リンパ系には心臓のようなポンプがないことです。リンパは骨格筋の収縮や呼吸運動などの力と、逆流を防ぐ弁によって流れています。
解説
リンパはどこから生まれるか
毛細血管の動脈側では、血圧によって血漿成分が組織間隙へ濾し出されます。静脈側では、膠質浸透圧によってその大部分が血管内に戻ります。ただし、すべては戻りきらず、一部の水分と血管から漏れたたんぱく質が組織間隙に残ります。これを回収するのが、組織の中で盲端に始まる毛細リンパ管です。毛細リンパ管に取り込まれた組織液をリンパ(リンパ液)と呼びます。
リンパ系の主な働きは次の4つです。
- 組織液の量を一定に保つ
- 血管外に漏れたたんぱく質を血液に戻す
- リンパ節で異物や病原体をろ過し、免疫応答を起こす
- 小腸で吸収した脂肪(カイロミクロン)を運ぶ
胸管を流れるリンパの量は、成人で1日数L(おおむね2〜4L程度)とされます。
どこを通って静脈に戻るか
リンパは、毛細リンパ管、集合リンパ管(途中にリンパ節がある)、リンパ本幹の順に合流しながら太くなります。最後は左右の静脈角(内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部)で静脈に注ぎます。
- 胸管:下半身(両下肢・骨盤・腹部)と左上半身(左上肢・左頭頸部・左胸部)のリンパを集め、左静脈角に注ぎます。腰椎の前面にある乳び槽から始まり、腸のリンパ(脂肪を含んで白く濁った乳び)もここを通ります。
- 右リンパ本幹:右上肢・右頭頸部・右胸部、つまり右上半身のリンパを集め、右静脈角に注ぎます。
全身の大部分のリンパが胸管に集まり、右上半身だけが別の経路をとります。胃癌が左鎖骨上窩リンパ節に転移すること(ウィルヒョウ転移)があるのは、腹部のリンパが胸管を上行して左静脈角付近に達するためです。
何がリンパを流すのか
血液は心臓のポンプで循環しますが、リンパ系には中心となるポンプがありません。リンパを押し流す力は次のものです。
- リンパ管壁の平滑筋の自発的な収縮
- 周囲の骨格筋の収縮による圧迫(筋ポンプ)
- 隣接する動脈の拍動
- 呼吸運動に伴う胸腔内圧・腹腔内圧の変化
- マッサージなど体外からの圧迫
リンパ管には静脈と同じく多数の弁があるため、圧迫されたリンパは中枢側へしか進めません。筋肉が収縮と弛緩を繰り返すほど中枢へ送り出される量が増え、運動時のリンパ流量は安静時の何倍にもなります。反対に、長時間の座位や臥床で筋ポンプが働かないと組織液がたまり、浮腫が起こりやすくなります。
看護での活用
乳癌手術で腋窩リンパ節を郭清した後や、子宮癌・卵巣癌手術で骨盤内リンパ節を郭清した後は、リンパの通り道が失われます。その結果、患側の上肢や下肢にリンパ浮腫が起こることがあります。
リンパ浮腫の治療では、次の4つを組み合わせます。
- スキンケア
- 用手的リンパドレナージ
- 弾性着衣・弾性包帯による圧迫療法
- 圧迫下での運動療法
圧迫した状態で筋肉を動かすと筋ポンプの効果が高まり、リンパの還流が促されます。この問題の正答の知識が、そのまま運動療法の根拠になっています。あわせて、皮膚の傷から起こる蜂窩織炎を防ぐ生活指導も重要です。
選択肢の確認
1.成人の胸管を流れる量は1日約10 Lである。:胸管を流れるリンパは成人で1日数L(おおむね2〜4L程度)であり、10Lは多すぎます。毛細血管から濾し出された液の大部分は静脈側で再吸収されるため、リンパとして戻るのはその残りの一部にすぎません。1日の尿量(約1〜1.5L)や安静時の心拍出量(約5L/分)など、ほかの体液量の数値と混同しないようにしましょう。
2.右上半身のリンパは胸管に流入する。:右上半身(右上肢・右頭頸部・右胸部)のリンパは右リンパ本幹に集まって右静脈角に注ぐため、胸管には流入しません。胸管が集めるのは下半身と左上半身です。「左上半身」であれば正しい記述になるので、左右を入れ替えた引っかけに注意します。
3.中枢から末梢への一方向に流れる。:リンパは組織中の毛細リンパ管から始まり、静脈角へ向かって「末梢から中枢へ」流れるため、この記述は方向が逆です。一方向に流れるという点は正しく、それはリンパ管内の弁が逆流を防いでいるためです。中枢から末梢へ流れる動脈血の向きと取り違えないようにしましょう。また、リンパ系は血液のような循環路ではなく、組織で始まり静脈で終わる片道の経路である点も押さえておきます。
4.筋運動を行うと流量は増加する。:正答。リンパ系には心臓のようなポンプがなく、骨格筋の収縮による圧迫(筋ポンプ)がリンパを押し出す大きな力になります。弁があるため、圧迫されたリンパは中枢側へ送られ、筋運動によって流量は増加します。リンパ浮腫に圧迫下での運動療法が行われるのは、この仕組みを利用したものです。
覚えるポイント
- リンパは末梢から中枢へ一方向に流れます。逆流を防ぐのはリンパ管内の弁で、静脈と同じ仕組みです。
- 胸管は下半身と左上半身のリンパを集めて左静脈角へ、右リンパ本幹は右上半身のリンパを集めて右静脈角へ注ぎます。
- 胸管は乳び槽から始まり、腸で吸収された脂肪(カイロミクロン)を運びます。胃癌のウィルヒョウ転移は左鎖骨上窩リンパ節に起こります。
- リンパを流す力は、リンパ管平滑筋の収縮、骨格筋ポンプ、動脈の拍動、呼吸運動です。筋運動で流量が増え、不動では浮腫が起こりやすくなります。
- 胸管のリンパ流量は1日数L(おおむね2〜4L程度)で、10Lではありません。
- リンパ節郭清後のリンパ浮腫には、スキンケア、用手的リンパドレナージ、圧迫療法、圧迫下の運動療法を組み合わせます。
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