17AM80|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「69歳の女性。10年前から高血圧症にて内服加療中。時々右上下肢のしびれを自覚していたが、最近物忘れがひどくなってきた。また、わけもなく泣いたりすることも多い。物忘れが多いわりに判断力は保たれている。」この症例に対する対応で適切でないのはどれか。
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正解: 2
正答
2
この問題のポイント
認知症の人への接し方を問う問題です。叱ることが何をもたらすかを考えます。
解説
認知症のケアの基本は、その人の尊厳を守り、残された能力を活かし、安心できる環境を整えることです。中核症状(記憶障害、見当識障害、失行、失認、実行機能障害)そのものを消すことはできませんが、周辺症状(行動・心理症状)は、関わり方と環境によって大きく変わります。
各選択肢を検討します。
要求があった場合は、それを満たすよう対応することは適切です。認知症の人の要求や訴えの背後には、不安、混乱、身体的な不快、意思をうまく伝えられないもどかしさが隠れていることが多くあります。頭ごなしに否定せず、まず受け止めて対応することで、混乱や興奮を防げます。ただし、危険が伴う場合や実現できない要求については、否定するのではなく別の方法や関心の向け替えによって対応します。
失敗した時は叱ることは適切でなく、これが正答で2です。認知症の人は、なぜ叱られたのかを記憶にとどめられない一方で、叱られたという不快な感情は残ります。その結果、自信を失い、不安と混乱が強まり、抑うつ、興奮、拒否、妄想といった周辺症状を悪化させます。感情に関わる記憶は比較的保たれるという特性を踏まえ、叱らない、否定しない、間違いを訂正しようとしないことが原則です。
外出を希望した場合は、断らず付き合うことは適切です。外出を一律に制止すると、かえって不穏や興奮を招きます。安全を確保したうえで一緒に出かけることで、本人の意思を尊重しつつ危険を防げます。歩くこと自体が気分の安定と生活リズムの維持にも役立ちます。
簡単な仕事を与え、それができればほめることも適切です。できることを活かし、成功体験を積み、ほめられることは、自尊心を保ち、意欲と生活の質を高めます。役割をもつことが、その人らしさの維持につながります。
これらの考え方は、**パーソン・センタード・ケア(その人を中心としたケア)**として体系化されています。あわせて、環境を大きく変えない、なじみの人と物を保つ、生活リズムを整える、身体的な不調(便秘、脱水、疼痛、薬の副作用)を見逃さないことも重要です。
選択肢の確認
1.要求があった場合は、それを満たすよう対応する。
適切。訴えの背後にある不安を受け止めることで混乱を防げます。
2.失敗した時は叱る。
適切でなく、これが正答。理由は残らず不快な感情だけが残り、症状を悪化させます。
3.外出を希望した場合は、断らず付き合う。
適切。安全を確保したうえで意思を尊重することが望ましい対応です。
4.簡単な仕事を与え、それができればほめる。
適切。成功体験とほめられることが自尊心と意欲を支えます。
覚えるポイント
- 認知症ケアの原則=叱らない、否定しない、訂正しない。感情の記憶は残る。
- できることを活かし、成功体験とほめることで自尊心を保つ。役割をもつことが大切。
- パーソン・センタード・ケア。環境を変えない、生活リズムを整え、身体的不調を見逃さない。