17PM129|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
次の文で示す患者の病態に対し、罹患部への局所治療穴として適切なのはどれか。「62歳の男性。前腕尺側に痛みがあり、薬指・小指にしびれがある。上腕骨外顆骨折の既往があり、フローマン徴候陽性。」
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正解: 1
正答
1
この問題のポイント
遅発性尺骨神経麻痺を見抜く症例問題です。外顆骨折の既往が決定的な手がかりです。
解説
62歳の男性で、次の所見があります。
前腕尺側に痛みがあり、薬指・小指にしびれがあるという点は、尺骨神経の感覚支配領域そのものです。尺骨神経は、手掌と手背の尺側、小指と環指(薬指)の尺側半の感覚を支配します。
フローマン徴候陽性という点は、母指内転筋の麻痺を示します。この検査は、母指と示指で紙をつまませて引き抜こうとしたとき、母指内転筋が働かないために母指の指節間関節が屈曲してしまうという所見をみるもので、尺骨神経麻痺の代表的な徴候です。
上腕骨外顆骨折の既往があるという点が、病態を決定づけます。小児期の上腕骨外顆骨折は、偽関節や変形治癒により外反肘を残すことがあります。外反肘があると、肘の内側を通る尺骨神経が長期にわたって牽引と摩擦を受け続け、受傷から何年も経ってから麻痺が出現します。これが遅発性尺骨神経麻痺であり、本症例はまさにこの経過に一致します。
したがって、**罹患部は肘の内側、尺骨神経が通る肘部管(尺骨神経溝)**です。
小海は、肘後内側、肘頭と上腕骨内側上顆の間の陥凹部にある手の太陽小腸経の合土穴です。ここはまさに尺骨神経溝にあたり、罹患部への局所治療穴として適切です。正答は1です。この部位では尺骨神経が皮膚の直下を走るため、刺鍼時に**強い放散痛(電撃様のしびれ)**が生じやすく、神経を直接損傷しないよう、深さと方向に注意する必要があります。
他の選択肢を確認します。
曲池は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線の中点にある手の陽明大腸経の合土穴です。肘の外側であり、上腕骨外側上顆炎の局所治療穴として用いられます。尺骨神経の走行部ではありません。
天井は、肘後面、肘頭の上方1寸の陥凹部にある手の少陽三焦経の合土穴です。肘の後面正中に近く、尺骨神経溝ではありません。
孔最は、前腕前外側、尺沢と太淵を結ぶ線上、手関節掌側横紋の上方7寸にある手の太陰肺経の郄穴です。前腕の橈側前面であり、尺側ではありません。
なお、肘部管症候群では、小指と環指のしびれ、骨間筋の萎縮による手背の骨間溝、鷲手(鈎爪指)、フローマン徴候陽性、肘部でのティネル徴候陽性がみられます。
選択肢の確認
1.小海
正しい。肘頭と内側上顆の間の尺骨神経溝にあたります。
2.曲池
誤り。肘の外側にあり、外側上顆炎の局所です。
3.天井
誤り。肘頭の上方にあり、尺骨神経溝ではありません。
4.孔最
誤り。前腕の橈側前面にあります。
覚えるポイント
- 遅発性尺骨神経麻痺=小児期の上腕骨外顆骨折による外反肘が背景。何年も後に発症。
- 尺骨神経麻痺=小指と環指尺側半のしびれ、鷲手、骨間筋の萎縮、フローマン徴候陽性。
- 小海=肘頭と内側上顆の間(尺骨神経溝)。刺鍼では神経損傷に注意する。