17PM135|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「28歳の女性。11月頃より肩甲部から上肢にかけて重だるさと痛みが出現した。また食後の腹脹と下痢がある。寒冷により症状は増強し、温めると軽減する。」 痹証とした場合、適切なのはどれか。
解答・解説を見る
この問題は公式正答が公表されていないため、採点対象外です。
正答
2、3
この問題のポイント
痹証の分類を問う症例問題です。重だるさと寒冷での増悪という2つの性質が同時にみられ、正答が2つあります。
解説
痹証は、風、寒、湿の邪が経絡に侵入し、気血の運行が阻まれて生じる、痛みやしびれ、重だるさ、運動障害を主症状とする病証です。どの邪が優勢かによって次のように分類されます。
**行痹(風痹)**は、風邪が優勢なもので、**痛みの部位が移動する(遊走性)**のが特徴です。風邪の「善行して数変する」性質を反映します。
**痛痹(寒痹)**は、寒邪が優勢なもので、痛みが激しく、部位が固定し、寒冷で増悪して温めると軽減するのが特徴です。寒邪の凝滞性と収引性を反映します。
**着痹(湿痹)**は、湿邪が優勢なもので、重だるさとしびれが強く、部位が固定し、天候(とくに雨や湿度の高い日)で増悪するのが特徴です。湿邪の重濁性と粘滞性を反映します。
熱痹は、熱邪によるもので、関節の発赤、腫脹、熱感、激しい痛みがあり、冷やすと軽減するのが特徴です。
本症例の所見を確認します。
11月頃より発症という季節は、寒冷の季節への移行を示します。
肩甲部から上肢にかけての重だるさという点は、湿邪の重濁性を示し、着痹の特徴です。
寒冷により症状は増強し、温めると軽減するという点は、寒邪を明確に示し、痛痹の特徴です。
食後の腹脹と下痢という点は、脾の運化失調を示し、内生の湿の存在を裏づけます。「湿は脾を困らせる」という関係とも一致します。
したがって、本症例には寒邪の性質(痛痹)と湿邪の性質(着痹)の両方が明確に認められます。実際の臨床でも、風、寒、湿の邪はしばしば併存し、単独で現れることは少ないとされます。以上から、正答は2と3の2つです。
治療は、散寒除湿と温通経絡を方針とし、灸を積極的に併用します。あわせて、保温、冷えを避ける生活指導、脾を助ける食養生が重要になります。
選択肢の確認
1.行痹
誤り。痛みの部位が移動する遊走性は示されていません。
2.痛痹
正しい。寒冷で増悪し温めると軽減する点が寒邪を示します。
3.着痹
正しい。重だるさが湿邪を示します。
4.熱痹
誤り。発赤や熱感、冷やすと軽減するといった熱の所見がありません。
覚えるポイント
- 痹証=行痹(風、遊走性)、痛痹(寒、激痛で固定、温めると軽減)、着痹(湿、重だるい)、熱痹(発赤と熱感)。
- 風寒湿は併存することが多い。本症例は寒と湿の両方の性質をもつ。
- 治療は散寒除湿と温通経絡。灸を併用し、保温と冷えを避ける指導を行う。