17PM137|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「35歳の男性。肩痛に対する鍼治療を受けた後から咳、胸痛、呼吸困難、冷汗が出現した。声音振盪が減弱している。」 最も優先されるべき検査はどれか。
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正解: 1
正答
1
この問題のポイント
鍼灸施術後の気胸を疑う症例問題です。声音振盪の減弱という所見が決め手になります。
解説
35歳の男性で、肩痛に対する鍼治療を受けた後から、咳、胸痛、呼吸困難、冷汗が出現し、声音振盪が減弱しているという経過です。
これは気胸、とくに**鍼による医原性気胸(外傷性気胸)**を強く疑う所見です。
気胸は、胸膜が破れて胸腔内に空気が入り、肺が虚脱する病態です。鍼灸においては、前胸部、側胸部、そして背部の肩甲間部への深刺によって起こる最も重大な有害事象の一つです。本症例では「肩痛に対する鍼治療」とあり、肩上部や肩甲間部への刺鍼が原因として想定されます。
症状を確認します。突然の胸痛、呼吸困難、乾性咳嗽が三主徴であり、進行すると冷汗、頻脈、チアノーゼが現れます。緊張性気胸に至れば、縦隔が健側へ偏位して静脈還流が妨げられ、閉塞性ショックとなって生命に関わります。
身体所見も重要です。患側の呼吸音の減弱または消失、打診での鼓音(過共鳴音)、そして声音振盪の減弱です。声音振盪とは、患者に低い声で発声させながら胸壁に手を当てて、伝わる振動を触知するものです。胸腔に空気がたまると振動が伝わりにくくなるため減弱します。設問の所見はまさにこれにあたります。
したがって、最も優先されるべき検査は胸部エックス線検査であり、正答は1です。立位での胸部エックス線写真により、肺の虚脱と胸膜線、無血管野が確認でき、気胸の有無と程度を短時間で判定できます。これにより、経過観察でよいか、脱気や胸腔ドレナージが必要かという治療方針が決まります。
他の選択肢を確認します。呼吸機能検査は慢性の換気障害を評価するもので、急性期の緊急検査ではありません。超音波検査は近年気胸の診断にも用いられますが、標準的な第一選択は胸部エックス線です。心電図検査は心疾患の評価に有用で、胸痛の鑑別として行われることはありますが、この所見からはまず気胸を確認します。
予防が何より重要です。前胸部と背部では深い直刺を避け、斜刺や横刺とする、刺入の深さを常に意識する、やせた人では特に慎重にする、そして施術後に胸痛や呼吸困難が出現した場合は直ちに医療機関の受診を勧めることが不可欠です。
選択肢の確認
1.胸部エックス線検査
正しい。肺の虚脱を短時間で確認でき、治療方針の決定に直結します。
2.呼吸機能検査
誤り。慢性の換気障害を評価するもので、急性期の検査ではありません。
3.超音波検査
誤り。用いられることはありますが、標準的な第一選択ではありません。
4.心電図検査
誤り。心疾患の評価に用いる検査です。
覚えるポイント
- 気胸=突然の胸痛、呼吸困難、乾性咳嗽。所見は呼吸音の減弱、打診で鼓音、声音振盪の減弱。
- 診断は胸部エックス線検査。緊張性気胸は閉塞性ショックをきたす緊急事態。
- 予防=前胸部と背部は深い直刺を避け斜刺か横刺。施術後の胸痛や呼吸困難は直ちに受診を勧める。