17PM138|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「35歳の男性。肩痛に対する鍼治療を受けた後から咳、胸痛、呼吸困難、冷汗が出現した。声音振盪が減弱している。」 「深く刺しすぎると呼吸困難を引き起こす」と指摘されている経穴はどれか。
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正解: 3
正答
3
この問題のポイント
古典で深刺を戒められている経穴を問う問題です。肩井の深部に何があるかを考えます。
解説
肩井は、後頸部、第7頸椎棘突起と肩峰外縁を結ぶ線の中点にある足の少陽胆経の経穴です。僧帽筋上部線維の上に位置し、肩こりの治療に最も広く用いられる経穴の一つです。
しかし、この部位には解剖学的な危険があります。**肩井の深部には肺尖(胸膜頂)**が存在するのです。肺尖は鎖骨の上方およそ2から3センチメートルまで達するため、肩上部から下方に向けて深く刺入すれば、胸膜を貫いて肺を損傷し、気胸を起こす危険があります。
このことは古くから知られており、**「肩井、深く刺せば人をして悶倒せしむ」**といった趣旨の記述が古典に伝えられています。すなわち、深刺により呼吸困難や失神を引き起こすと戒められてきたわけです。したがって正答は3です。
現在の安全管理としては、肩井への刺鍼は浅く、あるいは斜刺とし、決して下方に向けて深く刺入しないことが原則です。とくにやせた人では肺尖までの距離が短く、より慎重を要します。
他の選択肢を確認します。
巨骨は、肩周辺部、鎖骨の肩峰端と肩甲棘の間の陥凹部にある手の陽明大腸経の経穴です。この部位も深刺では肺尖に達する危険があるとされますが、古典で「深く刺すと呼吸困難を引き起こす」と特に名指しで指摘されている代表は肩井です。
天宗は、肩甲部、肩甲棘の下方、棘下窩の中央にある手の太陽小腸経の経穴です。下に肩甲骨があるため、通常の刺入では鍼が骨に当たり、胸腔には達しません。棘下筋への施術に安全に用いられます。
肩髎は、肩周辺部、肩峰の後下方の陥凹部にある手の少陽三焦経の経穴です。三角筋の上にあり、深部は肩関節であるため、気胸の危険部位ではありません。
気胸の危険部位をまとめて整理します。前胸部(中府、雲門、乳根、期門、日月、天渓など)、側胸部(淵腋、輒筋、大包など)、肩上部(肩井、巨骨、欠盆)、そして**背部の肩甲間部(大杼、風門、肺兪、心兪、膈兪、膏肓など)**です。これらの部位では、刺入の方向と深度を常に管理することが施術者の基本的な責務となります。
選択肢の確認
1.巨骨
誤り。深刺の危険はありますが、古典で名指しで指摘される代表ではありません。
2.天宗
誤り。下に肩甲骨があり、通常の刺入では胸腔に達しません。
3.肩井
正しい。深部に肺尖があり、古典で深刺を戒められています。
4.肩髎
誤り。三角筋の上にあり、深部は肩関節です。
覚えるポイント
- 肩井の深部には肺尖。古典で深刺を戒められている。浅刺または斜刺とし下方への深刺を避ける。
- 気胸の危険部位=前胸部、側胸部、肩上部(肩井、巨骨、欠盆)、背部の肩甲間部。
- 天宗は下に肩甲骨があるため比較的安全。やせた人では特に慎重に。