17PM139|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「55歳の男性。主訴は左腰痛。体幹の後屈時に痛みが増強し、左殿部に放散痛がみられる。L4-L5棘突起間外側2cmの部の圧痛、SLRテスト陰性、膝蓋腱反射・アキレス腱反射正常、L2~S1の知覚検査異常なし。」 放散痛を引き起こす可能性の最も高いのはどれか。
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正解: 1
正答
1
この問題のポイント
放散痛の原因となる神経を問う症例問題です。陰性所見が神経根性を否定していることを読み取ります。
解説
55歳の男性で、次の所見があります。
体幹の後屈時に痛みが増強するという点は、椎間関節への負荷を示します。前屈で増悪するのが椎間板性であるのに対し、後屈で増悪するのは椎間関節性の腰痛です。
左殿部に放散痛がみられるという点は、痛みが局所にとどまらず広がっていることを示します。
第4腰椎と第5腰椎棘突起間の外側2センチメートルの部の圧痛という点は、まさに椎間関節の直上にあたる部位の圧痛です。
そして、陰性所見が決定的です。下肢伸展挙上試験(SLRテスト)が陰性であること、膝蓋腱反射とアキレス腱反射が正常であること、第2腰髄から第1仙髄の知覚検査に異常がないこと。これらはいずれも、神経根が圧迫されていないことを示します。すなわち、腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症は否定的です。
以上から、本症例は腰椎椎間関節性の腰痛と判断できます。
そこで、放散痛を引き起こしている神経を考えます。腰椎椎間関節を支配するのは、脊髄神経後枝の内側枝です。後枝は椎間孔を出た直後に前枝から分かれ、内側枝が椎間関節と多裂筋を、外側枝が腸肋筋と腰背部の皮膚を支配します。椎間関節に炎症や機械的刺激が生じると、この後枝内側枝を介して、腰部から殿部にかけて放散する痛みが生じます。これは神経根の圧迫による下肢の放散痛(デルマトームに沿った下腿までのしびれ)とは異なり、殿部から大腿後面の上部までにとどまるのが特徴です。したがって正答は1です。
他の選択肢を確認します。
**脊椎洞神経(洞脊椎神経)**は、椎間板の後外側、後縦靱帯、硬膜などを支配する神経で、椎間板性の腰痛に関わります。本症例は後屈で増悪しており、椎間板性は考えにくくなります。
交感神経は、内臓の支配や血管運動に関わります。内臓疾患による関連痛としての腰痛はありえますが、本症例は動作(後屈)で明確に誘発されており、機械的な要因が主体です。
神経根は、上述のとおり、SLRテスト陰性、腱反射正常、知覚正常という所見から否定的です。
治療は、椎間関節部への局所施術を中心に、多裂筋への施術、体幹の安定性の向上、後屈を伴う動作の見直しが組み合わされます。
選択肢の確認
1.脊髄神経後枝内側枝
正しい。椎間関節を支配し、殿部への放散痛を引き起こします。
2.脊椎洞神経
誤り。椎間板や後縦靱帯を支配し、椎間板性腰痛に関わります。
3.交感神経
誤り。内臓の支配や血管運動に関わります。
4.神経根
誤り。SLRテスト陰性、腱反射正常、知覚正常により否定的です。
覚えるポイント
- 椎間関節を支配するのは脊髄神経後枝内側枝。後屈で増悪、殿部への放散痛。
- 神経根性の否定=SLRテスト陰性、腱反射正常、デルマトームの知覚正常。
- 脊椎洞神経は椎間板と後縦靱帯を支配し、椎間板性腰痛に関わる。