17PM140|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「55歳の男性。主訴は左腰痛。体幹の後屈時に痛みが増強し、左殿部に放散痛がみられる。L4-L5棘突起間外側2cmの部の圧痛、SLRテスト陰性、膝蓋腱反射・アキレス腱反射正常、L2~S1の知覚検査異常なし。」 罹患部への鍼治療として最も適切な刺鍼部位はどれか。
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正解: 3
正答
3
この問題のポイント
前問で特定した椎間関節性腰痛に対し、どこに刺鍼するかを答える問題です。
解説
本症例は、後屈で増悪する腰痛、第4腰椎と第5腰椎棘突起間の外側2センチメートルの圧痛、SLRテスト陰性、腱反射正常、知覚正常という所見から、下部腰椎の椎間関節性腰痛と判断されました。
したがって、罹患部そのもの、すなわち下部腰椎椎間関節部への刺鍼が最も適切です。正答は3です。
腰椎椎間関節の位置を確認します。椎間関節は、棘突起の外側およそ1.5から2センチメートル、椎弓の後外側に位置します。設問の圧痛部位である「第4腰椎と第5腰椎棘突起間の外側2センチメートル」は、まさにこの椎間関節の直上にあたります。経穴でいえば、**膀胱経第1行線(後正中線の外方1寸5分)の付近、すなわち大腸兪(第4腰椎の高さ)や関元兪(第5腰椎の高さ)に近い部位、あるいは華佗夾脊穴(棘突起下縁の外方5分)**よりやや外側にあたります。
刺鍼にあたっては、椎間関節の関節包と、その周囲を支配する脊髄神経後枝内側枝を目標とします。やや内下方に向けて刺入し、椎弓や関節突起に当たる深さを目安とするのが一般的です。なお、腰部では棘突起間から深く刺入すると硬膜や馬尾に達する危険があるため、正中に近い部位での深刺は避け、方向と深度を管理します。
他の選択肢を確認します。
多裂筋は、椎間関節の直上を覆う深層の筋であり、椎間関節性腰痛では同時に緊張していることが多く、施術の対象となります。ただし設問は「罹患部への鍼治療として最も適切な刺鍼部位」を問うており、病態の原因である椎間関節そのものを対象とするのがより適切です。実際の臨床では、多裂筋への施術も併せて行われます。
第4腰椎と第5腰椎間の棘間靱帯は、棘突起の間にある靱帯です。棘間靱帯性の腰痛では、棘突起間の正中に圧痛が生じますが、本症例の圧痛は外側2センチメートルにあり、部位が一致しません。
第5腰神経根は、神経根性の病態に対する目標です。本症例では、SLRテスト陰性、腱反射正常、知覚正常により神経根の関与は否定的であるため、対象となりません。また、神経根そのものへの刺鍼は、神経損傷の危険があり慎重を要します。
あわせて、後屈を伴う動作の見直し、体幹深層筋の安定化訓練、腰椎の過度な前弯の是正といった指導が重要になります。
選択肢の確認
1.多裂筋
誤り。併せて施術する対象ですが、病態の原因は椎間関節そのものです。
2.L4 - L5間の棘間靱帯
誤り。棘突起間の正中に圧痛がある場合の対象であり、部位が一致しません。
3.下部腰椎椎間関節部
正しい。圧痛部位と病態が一致する罹患部です。
4.L5神経根
誤り。神経根の関与は所見から否定的です。
覚えるポイント
- 腰椎椎間関節=棘突起の外側1.5から2センチメートル。膀胱経第1行線の付近。
- 椎間関節性腰痛=後屈で増悪、局所の圧痛、殿部への放散痛、神経学的所見は正常。
- 正中付近の深刺は硬膜や馬尾に注意。あわせて多裂筋への施術と動作の見直しを行う。