17PM148|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
鍼治療による鎮痛発現に関与しないのはどれか。
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正解: 4
正答
4
この問題のポイント
鍼の鎮痛機序を問う問題です。ドパミンの減少が鎮痛につながるかを考えます。
解説
鍼治療による鎮痛には、複数の機序が関与します。
患部の循環改善は関与します。鍼刺激は、ポリモーダル受容器の興奮による軸索反射を介してCGRPやサブスタンスPを遊離させ、また交感神経活動の抑制を通じて、局所の血流を増加させます。血流が改善すると、ブラジキニンなどの発痛物質が洗い流され、また虚血が解消されるため、痛みが軽減します。とくに**筋の持続的緊張による痛み(トリガーポイントを含む)**では、この機序が大きな役割を果たします。
内因性オピオイドの産生も関与します。鍼刺激により、ベータエンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンといった内因性オピオイドが産生・遊離され、脳と脊髄のオピオイド受容体に作用して痛覚伝達を抑制します。とくに低頻度(1から5ヘルツ)の鍼通電でこの系が賦活され、効果の発現は遅いが持続が長いという特徴を示します。
脊髄膠様質細胞の興奮も関与します。これはゲートコントロール説による鎮痛です。脊髄後角の**膠様質(第2層)**にある抑制性の介在ニューロンが興奮すると、一次求心性線維から二次ニューロンへの痛覚伝達が抑えられます。太い線維(Aベータ)の入力がこの介在ニューロンを興奮させ、「ゲートを閉じる」と説明されます。痛いところをさすると楽になる現象や、高頻度の鍼通電による速効性の鎮痛がこれにあたります。
脳内ドパミンの減少は関与せず、これが正答で4です。ドパミンは、中脳から線条体への経路で運動の調節に関わり、また中脳辺縁系では報酬と意欲に関わる伝達物質です。痛みの調節においても、ドパミンはむしろ鎮痛に働く方向が知られており、減少することが鎮痛につながるという説明は成り立ちません。なお、ドパミンが減少して問題となる代表がパーキンソン病です。
鍼鎮痛の機序をまとめると、ゲートコントロール(脊髄分節性)、下行性痛覚抑制系(中脳中心灰白質から大縫線核のセロトニンと青斑核のノルアドレナリン)、内因性オピオイド、広汎性侵害抑制調節(DNIC)、そして局所の血流改善による発痛物質の除去の5つが柱となります。
選択肢の確認
1.患部の循環改善
関与する。発痛物質が洗い流され虚血が解消されます。
2.内因性オピオイドの産生
関与する。低頻度通電などで賦活され、持続の長い鎮痛をもたらします。
3.脊髄膠様質細胞の興奮
関与する。ゲートコントロール説による脊髄分節性の抑制です。
4.脳内ドパミンの減少
関与せず、これが正答。ドパミンはむしろ鎮痛に働く方向の伝達物質です。
覚えるポイント
- 鍼鎮痛の機序=ゲートコントロール、下行性痛覚抑制系、内因性オピオイド、広汎性侵害抑制調節、血流改善。
- 膠様質の抑制性介在ニューロンがゲートを閉じる。太い線維(Aベータ)の入力による。
- 低頻度通電はオピオイド系で遅効性かつ持続が長い、高頻度はゲートコントロールで速効性だが短い。