17PM90|第17回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
胸髄レベルの脊髄損傷完全麻痺患者について正しい記述はどれか。
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正解: 2
正答
2
この問題のポイント
胸髄損傷で何が保たれ、何が失われるかを問う問題です。損傷高位より上は保たれるという原則で判断します。
解説
胸髄レベルの脊髄損傷完全麻痺の状態を、機能ごとに確認します。
呼吸機能については、横隔膜は横隔神経(C3からC5)が支配するため、胸髄損傷では横隔膜の機能は保たれます。したがって「横隔膜麻痺がある」は誤りです。横隔膜麻痺が問題となるのはC3以上の高位損傷であり、人工呼吸器が必要になります。ただし、胸髄損傷では肋間筋と腹筋が麻痺するため、深い呼吸や強い咳ができなくなり、排痰が困難になります。呼吸器合併症の予防が重要です。
排泄機能については、排尿と排便の中枢は仙髄(S2からS4)にあり、これを統合する橋や大脳との連絡が胸髄の損傷部位で絶たれます。その結果、排尿障害と排便障害が必ず生じます。したがって「排便障害がみられる」は正しく、正答は2です。**核上型(仙髄より上位の損傷)**では、反射性膀胱となり、意識的な排尿ができず、また排便も反射に頼ることになります。間欠導尿や摘便、坐薬による排便管理が必要となり、尿路感染と腎機能障害の予防が生涯にわたる課題となります。
筋緊張については、胸髄損傷は上位運動ニューロンの障害にあたるため、損傷高位より下の筋緊張は亢進(痙性)します。したがって「下肢の筋緊張が低下する」は誤りです。ただし、受傷直後の脊髄ショック期には、一時的にすべての反射が消失して弛緩性麻痺となり、数週間かけて痙性へ移行します。なお、仙髄や馬尾の損傷(核・核下型)では、下位運動ニューロンの障害となるため弛緩性麻痺となります。
移動については、胸髄損傷では上肢の機能が完全に保たれているため、手動車いすで自立できます。したがって「移動には電動車いすが必要である」は誤りです。電動車いすが必要になるのは、上肢の機能が制限される頸髄損傷の場合です。胸髄損傷者は、プッシュアップによる除圧、移乗、車いすの駆動をすべて自立して行え、下位胸髄損傷では長下肢装具を用いた立位や実用性の低い歩行が可能な場合もあります。
そのほか、褥瘡の予防(知覚脱失部の除圧)、起立性低血圧、自律神経過反射(T6以上の損傷で、膀胱充満などを契機に急激な高血圧をきたす緊急事態)、体温調節障害にも注意が必要です。
選択肢の確認
1.横隔膜麻痺がある。
誤り。横隔膜はC3からC5支配であり、胸髄損傷では保たれます。
2.排便障害がみられる。
正しい。仙髄の排便中枢との連絡が絶たれるため必ず生じます。
3.下肢の筋緊張が低下する。
誤り。上位運動ニューロン障害のため痙性(亢進)となります。
4.移動には電動車いすが必要である。
誤り。上肢が保たれるため手動車いすで自立できます。
覚えるポイント
- 胸髄損傷=横隔膜と上肢は保たれる。手動車いすで自立、排尿と排便の障害は必発。
- 上位運動ニューロン障害=痙性麻痺。脊髄ショック期は一時的に弛緩性。
- 注意=褥瘡、尿路感染、起立性低血圧、T6以上での自律神経過反射、体温調節障害。