19AM80|第19回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
次の文で示す症例について、問いに答えよ。78歳の男性。5年前に高血圧を指摘されたが、自覚症状がないため放置していた。早朝、安静時に突然強い胸背部痛が出現し、救急搬送された。その際には胸部エックス線検査で上縦隔の著明な拡大を認めたが、心電図上有意な変化はみられなかった。本疾患による合併症はどれか。
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正解: 4
正答
4
この問題のポイント
急性大動脈解離の合併症を問う問題です。どこに血液が流れ込むと何が起こるかを考えます。
解説
急性大動脈解離の合併症は、解離が及ぶ範囲によって決まります。とくに上行大動脈に解離が及ぶスタンフォードA型は、致命的な合併症を起こしやすく、緊急手術の適応となります。
心タンポナーデは、上行大動脈の解離が心膜腔(心嚢)内で破裂することにより生じます。上行大動脈の起始部は心膜に包まれているため、ここで外膜が破れると血液が心嚢内にたまります。心嚢は伸びにくいため、少量の貯留でも心臓の拡張が妨げられ、静脈還流が減って心拍出量が急激に低下します。所見としてベックの三徴(血圧低下、頸静脈怒張、心音減弱)、奇脈がみられ、放置すれば閉塞性ショックから心停止に至ります。したがって正答は4です。緊急の心嚢穿刺と手術が必要です。
そのほかの合併症も整理します。大動脈弁閉鎖不全症は、解離が弁輪に及んで弁の支持が失われることで生じます。心筋梗塞は、解離が冠動脈(特に右冠動脈)の入口部に及んで閉塞することで生じます。脳梗塞は、解離が腕頭動脈や左総頸動脈に及ぶことで生じ、意識障害や片麻痺をきたします。上下肢の血圧差や脈拍の左右差は、鎖骨下動脈への進展を示唆します。腹部臓器の虚血は、腹腔動脈や上腸間膜動脈、腎動脈への進展により、腹痛や腎不全をきたします。対麻痺は、脊髄を養う動脈が閉塞して生じます。そして大動脈破裂は、胸腔内や後腹膜への破裂により大量出血をきたします。
他の選択肢を確認します。気胸は胸膜が破れて胸腔に空気が入る病態で、大動脈解離の合併症ではありません。間質性肺炎は肺胞壁の慢性的な炎症と線維化であり、関連しません。大動脈弁狭窄症は弁の開放が制限される疾患で、加齢による石灰化や先天性二尖弁が原因であり、解離の合併症としては閉鎖不全であって狭窄ではありません。
選択肢の確認
1.気胸
誤り。胸膜が破れて胸腔に空気が入る病態で、無関係です。
2.間質性肺炎
誤り。肺胞壁の慢性炎症と線維化であり、無関係です。
3.大動脈弁狭窄症
誤り。解離で生じるのは弁の閉鎖不全であって狭窄ではありません。
4.心タンポナーデ
正しい。上行大動脈の解離が心嚢内に破裂して生じます。
覚えるポイント
- 大動脈解離の合併症=心タンポナーデ、大動脈弁閉鎖不全、心筋梗塞、脳梗塞、腹部臓器や腎の虚血、対麻痺、大動脈破裂。
- 上行大動脈に及ぶスタンフォードA型は緊急手術の適応。
- 心タンポナーデ=ベックの三徴(血圧低下、頸静脈怒張、心音減弱)、閉塞性ショック。