23PM134|第23回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「38歳の女性。転職をきっかけに月経痛が増悪した。仕事が忙しくなるとイライラして症状もひどくなる。鍼灸院で肝気鬱結と言われた。」本患者が次の文で示す経過をたどった。現在の病証はどれか。「怒りの程度が徐々に激しくなり、自分で制御できなくなっていたが、その後、一旦治まり、それとともに目のかすみや手足のほてり、腰痛を自覚するようになった。現在はそれらの症状とともに軽い怒りと頭部の脹痛を覚えるようになった。」
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正解: 4
正答
4
この問題のポイント
病証の経過を追い、現在の病証を判断する問題です。
激しい怒りの時期→目のかすみ、手足のほてり、腰痛→軽い怒りと頭部の脹痛という経過を読み取ります。
解説
経過を順に整理します。
第一段階では、怒りの程度が徐々に激しくなり自分で制御できなくなったとあります。これは、肝気鬱結が長引いて熱に転化した肝火上炎の状態です。激しい怒り、顔面紅潮、目の充血、口苦、頭痛、紅舌、弦数脈がみられます。
第二段階では、その状態が一旦治まるとともに、目のかすみ(肝血・肝陰の不足)、手足のほてり(五心煩熱、陰虚の所見)、**腰痛(腎の不足)**が現れています。これは、長く続いた火が肝と腎の陰液を消耗した結果であり、肝腎陰虚の状態です。
第三段階、すなわち現在は、これらの陰虚の症状が続いたまま、軽い怒りと頭部の脹痛が加わっています。これは、肝腎の陰が不足して陽を制御できなくなり、陽気が上部へ突き上げている状態、すなわち肝陽上亢です。下焦の陰が虚し(下虚)、上部に陽が実する(上実)という「下虚上実」が特徴です。したがってこれが正答です。
肝陽上亢では、頭痛(脹るような、拍動性)、めまい、耳鳴り、顔面紅潮、いらいら、不眠に加えて、腰膝のだるさ、五心煩熱といった下部の虚の症状を伴います。治療では、平肝潜陽とともに滋補肝腎を図り、太衝、行間、風池、百会、太渓、三陰交、肝兪、腎兪などを用います。
肝血虚は、目のかすみ、爪のもろさ、筋のひきつり、月経量の減少、淡白舌、細脈が中心で、頭部の脹痛と怒りという実の要素は伴いません。
肝腎陰虚は第二段階の状態にあたりますが、現在は頭部の脹痛と怒りという上部の実の症状が加わっているため、より進んだ肝陽上亢と判断されます。
肝火上炎は第一段階の状態であり、現在は激しい怒りが治まり陰虚の症状を伴っているため、そのままの病証とはいえません。
選択肢の確認
1.肝血虚
誤り。目のかすみは合いますが、頭部の脹痛と怒りは説明できません。
2.肝腎陰虚
誤り。経過の第二段階にあたり、現在は上部の実の症状が加わっています。
3.肝火上炎
誤り。経過の第一段階にあたり、現在は陰虚の症状を伴っています。
4.肝陽上亢
正しい。肝腎の陰虚を背景に陽が上亢した「下虚上実」の状態です。
覚えるポイント
- 肝陽上亢=下虚上実。頭痛(脹痛)、めまい、耳鳴り、顔面紅潮+腰膝のだるさ、五心煩熱。
- 経過=肝気鬱結→肝火上炎→(陰を消耗)→肝腎陰虚→肝陽上亢→肝風内動。
- 肝火上炎は実熱(激しい症状)、肝陽上亢は虚を伴う(下虚上実)。
- 治療=平肝潜陽+滋補肝腎。太衝、行間、風池、百会、太渓、三陰交。