25PM116|第25回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「43歳の女性。主訴は下痢。最近、近隣の住人とのトラブルがあり、咽のつかえを自覚し、よくため息をつくようになった。その後下痢を発症。腹痛の後に生じることが多い。」患者の病証で最も適切なのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1
この問題のポイント
下痢の病証を弁別する問題です。
43歳女性、近隣とのトラブル(情志の失調)、咽のつかえ、よくため息をつく、その後の下痢、腹痛の後に生じるという所見を統合します。
解説
決め手となる所見を確認します。
近隣の住人とのトラブルという情志の失調は、肝の疏泄を失調させます。
咽のつかえは、**梅核気(梅の種が喉につかえたような感じで、飲み込んでも吐き出してもなくならないもの)**であり、肝気鬱結の典型的な症状です。
**よくため息をつく(太息)**も、鬱滞した気を発散させようとする反応で、肝気鬱結を示します。
腹痛の後に下痢が生じるという経過は、**痛瀉(つうしゃ)**と呼ばれるもので、肝気が脾を犯して起こる下痢の特徴です。腹痛があり、排便すると一時的に痛みが軽減するのが典型で、ストレスによって増悪します。
以上をまとめると、**肝気犯脾証(肝脾不和、肝鬱乗脾)**であり、これが正答です。治療では疏肝理気と健脾を図り、太衝、期門、内関(疏肝)と足三里、脾兪、天枢、中脘(健脾)などを用います。なお、現代医学的には過敏性腸症候群に相当する病像です。
心脾両虚証は、思い悩みすぎや慢性の疲労によって心血と脾気が不足するもので、動悸、健忘、不眠、倦怠感、食欲不振、顔色不良、月経過多を伴います。この症例の梅核気と太息を説明できません。
脾胃湿熱証は、湿と熱が脾胃に停滞したもので、悪臭の強い下痢、灼熱感を伴う肛門、身体の重だるさ、口の粘り、黄膩苔、滑数脈を伴います。この症例には湿熱を示す所見がありません。
脾腎陽虚証は、脾と腎の陽気が不足したもので、明け方の下痢(五更泄瀉)、未消化の便、冷え、腰と膝のだるさ、むくみを伴います。この症例の経過と一致しません。
選択肢の確認
1.肝気犯脾証
正しい。情志の失調、梅核気、太息、腹痛後の下痢に合致します。
2.心脾両虚証
誤り。動悸、健忘、倦怠感、食欲不振が中心です。
3.脾胃湿熱証
誤り。悪臭の強い下痢と黄膩苔がみられます。
4.脾腎陽虚証
誤り。五更泄瀉と冷え、腰膝のだるさが特徴です。
覚えるポイント
- 肝気犯脾証=情志の失調+梅核気、太息、胸脇の張り+腹痛の後に下痢(痛瀉)。
- 治療=疏肝理気(太衝、期門、内関)+健脾(足三里、脾兪、天枢、中脘)。
- 五更泄瀉(明け方の下痢)=脾腎陽虚。悪臭の強い下痢と黄膩苔=脾胃湿熱。
- 梅核気=喉のつかえ。肝気鬱結の代表的症状。現代医学の咽喉頭異常感症にあたる。