25PM136|第25回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「68歳の男性。主訴は呼吸困難。体を動かすと呼吸が苦しくなる。樽状胸を呈し、痩せている。呼吸機能検査で1秒率の低下および胸部エックス線写真で肺野の透過性亢進を認めた。ブリンクマン指数は960。」本症例の呼吸機能を改善することを目的とした鍼治療で、最も適切な対象となる筋はどれか。
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正解: 1
正答
1
この問題のポイント
COPDの呼吸機能を改善する目的で、施術の対象とすべき筋を選ぶ問題です。
解説
COPDでは、肺の過膨張によって胸郭が吸気位に固定され、横隔膜が平低化して働きにくくなります。そのため、呼吸補助筋(胸鎖乳突筋、斜角筋、僧帽筋上部、大胸筋、小胸筋)が過剰に働き続け、これらの筋が慢性的に緊張して疲労します。同時に、胸郭の前面が硬くなって可動性が低下し、換気の効率がさらに悪化するという悪循環が生じます。
大胸筋は、鎖骨部、胸肋部、腹部の三部からなる大きな筋で、上肢を固定した状態では肋骨を引き上げて吸気を助ける補助筋として働きます。COPDの患者では、この筋が過緊張と短縮を起こしていることが多く、緊張を緩めて胸郭の可動性を回復させることが呼吸機能の改善につながります。したがってこれが正答です。局所治療穴としては、中府、雲門、庫房、屋翳、膺窓などが用いられます。あわせて、口すぼめ呼吸と腹式呼吸の指導、胸郭のストレッチ、上肢の運動を含む呼吸リハビリテーションが行われます。
なお、前胸部への刺鍼では気胸に十分注意する必要があります。中府や雲門を含む前胸部の経穴では、深刺と直刺を避け、斜刺または横刺とし、るいそうの患者では特に慎重に行います。この症例はやせているため、なおさら注意が必要です。
棘上筋は、肩関節の外転の初期に働く回旋筋腱板の一つです。呼吸には関与しません。
菱形筋は、肩甲骨を内側かつ上方へ引く筋です。姿勢の保持に関わりますが、呼吸の主要な補助筋ではありません。
前鋸筋は、肩甲骨を前方へ引き出し上方回旋させる筋です。上肢を固定すれば吸気を助ける働きも指摘されますが、COPDにおいて過緊張と短縮が問題となり、胸郭の可動性を直接制限する筋としては大胸筋がより中心的です。
選択肢の確認
1.大胸筋
正しい。吸気の補助筋であり、COPDでは過緊張と短縮をきたします。
2.棘上筋
誤り。肩関節の外転に働く回旋筋腱板の一つです。
3.菱形筋
誤り。肩甲骨を内上方へ引く筋です。
4.前鋸筋
誤り。肩甲骨の前方への引き出しと上方回旋に働きます。
覚えるポイント
- COPD=胸郭が吸気位に固定され、呼吸補助筋(胸鎖乳突筋、斜角筋、大胸筋、小胸筋)が過緊張。
- 施術=補助筋の緊張の緩和と胸郭の可動性の改善。局所穴は中府、雲門、膻中、肺兪。
- 前胸部への刺鍼は気胸に注意。深刺と直刺を避け、斜刺または横刺とする。やせた人は特に注意。
- あわせて口すぼめ呼吸、腹式呼吸、呼吸リハビリテーションを指導する。