26AM80|第26回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
次の文で示す症例について、問いに答えよ。「62歳の男性。右側の腰から下肢にかけての痛み、しびれがある。歩くと痛みは強くなり歩けなくなるが、休むと再び歩けるようになる。足関節・上腕血圧比1.0であった。」歩行中に右下肢痛が起こったときの対応として、体幹の姿位で最も適切なのはどれか。
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正解: 1
正答
1
この問題のポイント
腰部脊柱管狭窄症における症状を軽減させる姿勢を問う問題です。
解説
前問と同じ症例で、腰部脊柱管狭窄症による神経性間欠跛行と判断されています。
腰部脊柱管狭窄症では、腰椎を後屈(伸展)させると症状が悪化し、前屈させると軽減するという、姿勢による明確な変化がみられます。したがって、歩行中に下肢痛が生じたときの対応としては前屈が最も適切であり、これが正答です。
その理由は次のとおりです。前屈すると、脊柱管の後壁を形成する黄色靱帯のたわみが減って引き伸ばされ、また椎間孔が広がるため、脊柱管と椎間孔の断面積が増加します。その結果、馬尾と神経根への圧迫が軽減し、あわせて神経への血流も改善して症状が和らぎます。
逆に、後屈すると黄色靱帯がたわんで内腔へ突出し、椎間板も後方へ膨隆して、脊柱管がさらに狭くなるため症状が悪化します。したがって、後屈は避けるべき姿勢です。
この特性は、患者の日常生活における次のような現象として現れます。前かがみで歩けば長く歩ける、シルバーカーや買い物カートを押すと楽、自転車には長く乗れる、立っているより坐っているほうが楽、歩行中に休むときはしゃがむと早く回復する。逆に、背筋を伸ばして立つ、坂を下る、階段を下りるといった後屈を強いられる動作では症状が強まります。
右側屈と左側屈は、いずれも脊柱管の断面積を明確に増やすものではありません。むしろ、患側への側屈は椎間孔を狭めるため、症状を悪化させることがあります(この原理を利用したものがケンプテストです)。
施術にあたっては、腰椎の過度な後屈を避け、腸腰筋とハムストリング、脊柱起立筋の緊張を緩め、腹筋群の強化と体幹の安定化を図ります。局所治療穴としては大腸兪、腎兪、志室、次髎、下肢では環跳、殷門、委中、承山などが用いられます。ただし、両下肢のしびれ、サドル型知覚障害、膀胱直腸障害がみられる場合は馬尾症候群であり、緊急手術の適応となるため、直ちに医療機関へ紹介します。
選択肢の確認
1.前屈
正しい。黄色靱帯のたわみが減り脊柱管が広がるため症状が軽減します。
2.後屈
誤り。脊柱管がさらに狭くなり症状が悪化します。
3.右側屈
誤り。患側への側屈は椎間孔を狭め、症状を悪化させることがあります。
4.左側屈
誤り。脊柱管の断面積を明確に増やすものではありません。
覚えるポイント
- 腰部脊柱管狭窄症=前屈で軽減、後屈で悪化。黄色靱帯のたわみと椎間孔の広さによる。
- 生活の工夫=前かがみで歩く、カートを押す、自転車を使う、休むときはしゃがむ。
- 避けるべき動作=背筋を伸ばして立つ、坂を下る、階段を下りる、腰椎の後屈。
- 馬尾症候群(両下肢のしびれ、サドル型知覚障害、膀胱直腸障害)=緊急手術。直ちに紹介する。