27PM137|第27回 はり師・きゅう師国家試験 過去問
「63歳の女性。主訴は尿もれ。咳をしたり、重い荷物を持ったりすると尿がもれる。腰背部がだるく、足が冷える。舌は淡で歯痕、脈は沈細。」本症例の尿もれと最も関係するのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1
この問題のポイント
尿失禁のタイプを見分ける症例問題です。どんなときに漏れるかが分類の決め手になります。
解説
63歳の女性で、咳をしたり重い荷物を持ったりすると尿がもれるという訴えです。これは腹圧が上がった瞬間に漏れるパターンであり、腹圧性尿失禁に該当します。中高年の女性に最も多いタイプで、出産や加齢、肥満、閉経による組織の脆弱化が背景となります。
腹圧性尿失禁の機序は、骨盤底筋群(肛門挙筋を中心とする)の脆弱化と、尿道の支持機構の緩みです。骨盤底筋群は骨盤内臓器を下から支え、腹圧が上昇したときに尿道を締めて尿の漏れを防いでいます。この働きが低下すると、咳、くしゃみ、笑い、重い物の持ち上げ、階段昇降といった腹圧上昇時に尿が漏れます。したがって最も関係するのは骨盤底筋群であり、正答は1です。治療の第一選択は**骨盤底筋訓練(骨盤底筋体操)**であり、鍼灸では仙骨部の次髎や中髎、下腹部の中極や関元などを併用します。
他の選択肢を確認します。
大殿筋は股関節の伸展を行う筋で、尿禁制には直接関与しません。
膀胱排尿筋の不随意収縮が原因となるのは、**切迫性尿失禁(過活動膀胱)**です。急に強い尿意が起こり我慢できずに漏れるタイプで、本症例のパターンとは異なります。
腹直筋は腹圧を高める側の筋であり、尿禁制を担う筋ではありません。
なお、尿失禁には他に、溢流性尿失禁(前立腺肥大症などで残尿があふれる)、**機能性尿失禁(移動やトイレ動作の障害による)**があります。この症例では舌が淡で歯痕、脈が沈細であり、東洋医学的には脾腎の気虚に伴う固摂作用の低下としてとらえられます。
選択肢の確認
1.骨盤底筋群
正しい。腹圧上昇時に尿道を締める働きが低下して漏れます。
2.大殿筋
誤り。股関節の伸展筋であり尿禁制に直接関与しません。
3.膀胱排尿筋
誤り。切迫性尿失禁の機序に関与します。
4.腹直筋
誤り。腹圧を高める筋であり、禁制を担う筋ではありません。
覚えるポイント
- 腹圧性尿失禁=咳・くしゃみ・重い物で漏れる。原因は骨盤底筋群の脆弱化。第一選択は骨盤底筋訓練。
- 切迫性尿失禁=急な強い尿意で漏れる。過活動膀胱による。
- ほかに溢流性(残尿があふれる)、機能性(移動やトイレ動作の障害)。