腎臓・薬理

CKDの降圧薬の選び方と蛋白尿の読み方

検査の定量値、薬を選ぶ理由、安全に続ける条件をつなぐ

CKDの降圧薬を蛋白尿の有無から整理。尿蛋白1+だけで決められない理由、RAS阻害薬を優先する意味、2026年の降圧目標と国試問題の読み分けを解説します。

CKDで蛋白尿陽性(A2・A3)なら、2026年の日本腎臓学会ステートメントはACE阻害薬・ARBなどのRAS阻害薬を第一選択とし、必要に応じCa拮抗薬や利尿薬を併用します。蛋白尿陰性(A1)ではこれらから状態に応じて選びます。「RAS阻害薬を優先する」と「ほかの降圧薬は使えない」は別です。尿蛋白1+だけで区分や薬を決められない理由から考えます。[4]

蛋白尿区分から考える降圧薬の選択
蛋白尿区分降圧薬選択の基本(国内2026年)読み違えない点
A2・A3RAS阻害薬を第一選択。必要ならCa拮抗薬・利尿薬を併用他系統が一律に禁忌、ではない
A1RAS阻害薬・Ca拮抗薬・利尿薬から選ぶ腎機能・K・体液量・不耐容なども確認

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試験紙が見ているのは濃さであり、一日の量ではない

試験紙法の1+は、日本の試験紙ではおおむね蛋白濃度30 mg/dLに対応します。しかし、尿が濃いか薄いかで結果は変わります。尿量1 L/日なら300 mg/日になるという計算は、濃度が一日を通じて同じで、その尿量がわかっていると仮定した話です。随時尿の1+だけでは、その二つの条件を満たしません。[2]

濃度 × 尿量 = 排泄された量
30 mg/dL × 10 dL/日 = 300 mg/日
ただし、一回の濃度から一日の尿量・平均濃度は決まらない

ここで用いるクレアチニン(Cr)は、筋肉由来で尿へ排泄される物質です。随時尿の蛋白/Cr比(UPCR)やアルブミン/Cr比(UACR)では、尿Crで割ることで、同じ尿の濃縮・希釈の影響をある程度補正します。例えば蛋白30 mg/dL、尿Cr100 mg/dLならUPCRは0.30 g/gCrです。両方が2倍に濃縮されても、60÷200=0.30で比は変わりません。血液中のCrはろ過能力の推定、尿中のCrは尿の濃さの補正に使う、と役割を分けておきましょう。

UPCRが約0.30だから一日の蛋白排泄量も必ず0.30 gになるわけではありません。その近似には一日のCr排泄量を約1 gとみなす考え方が含まれ、筋肉量などによってずれます。24時間蓄尿にも採り忘れなどの誤差があります。状況に応じ、早朝尿での再確認や蓄尿を組み合わせます。[1, 3]

CKDには、異常の種類と持続期間が必要

CKDは健康に影響する腎臓の構造・機能の異常が慢性的に続く状態です。腎障害を示す尿・血液・画像・病理などの異常、またはGFR 60 mL/分/1.73 m²未満が、3か月を超えて持続することが日本の診断基準の基本です。蛋白尿・アルブミン尿はその重要な指標です。[1]

血液中のCrは、作られる量と排泄される量の両方で変わります。ろ過が低下すれば血液中にたまりやすくなりますが、筋肉量が少なければ作られる量も少なくなります。そのため血清Crだけで判断せず、年齢・性別などを用いてeGFRを推算します。筋肉量が特に少ない場合などは、必要に応じシスタチンCも用います。[1, 2]

CGA分類のうち、薬の選択ではA区分を確かめる

Cは原因(Cause)、GはGFR、Aはアルブミン尿・蛋白尿の区分です。Gだけで「腎臓が何%悪い」と表す分類ではありません。GFRと蛋白尿・アルブミン尿は、それぞれ予後に関係します。GFRが保たれていても腎障害があればCKDであり、G1・G2という数値の区分だけではCKDとは診断しません。[1, 2]

表1は日本のCKD分類で用いる区分です。この分類では、糖尿病関連腎臓病は尿アルブミン/Cr比、それ以外は尿蛋白/Cr比で評価します。糖尿病関連腎臓病では少量のアルブミン尿を捉える意義が大きくなります。ACR(UACR)は尿中アルブミン、PCR(UPCR)は尿中総蛋白をCrで補正した比です。尿蛋白と尿アルブミンは同じ検査ではなく、単位も異なるため、例えば「300」という数値だけを移して比較できません。[1]

表1 A区分は、何をどの単位で測ったかをそろえて読む
測定項目A1A2A3
尿アルブミン/Cr比
mg/gCr
30未満30以上300未満300以上
尿蛋白/Cr比
g/gCr
0.15未満0.15以上0.50未満0.50以上

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試験紙の濃度を定量値と経過で確かめると、慢性性とCGA分類が見えてきます。その情報を薬の選択と、投与後に確認する血圧・Cr・Kへつなげたのが図1です。

尿の濃さの補正、異常の慢性性、原因とG・A区分、治療と安全性の順に判断をつなぐ。

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図1 定量値と経過を治療の判断へつなげる

「推奨される薬」と「使ってはいけない薬」は別の話

2026年の日本腎臓学会ステートメントは、蛋白尿陽性(A2・A3)ではレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を第一選択とし、必要ならCa拮抗薬や利尿薬を併用する整理です。蛋白尿陰性(A1)では、RAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬から選びます。したがって、蛋白尿があることはRAS阻害薬を優先する理由であって、他系統の降圧薬が一律に禁忌になる理由ではありません。[4]

さらに「第一選択」は、薬への不耐容、高K血症、血圧、体液量などを無視する指示ではありません。高齢者では起立時・食後の血圧低下や脱水にも配慮します。利尿薬も腎機能、体液量、電解質に応じて選ぶ薬であり、「高齢者だから選べない」とは整理しません。[1, 4]

糸球体の圧を下げる作用から、CrとKの確認へ

糸球体は血液をろ過する毛細血管の集まりです。入る側を輸入細動脈、出る側を輸出細動脈と呼びます。ACE阻害薬・ARBは出口側を広げる作用によって糸球体内の圧を下げ、蛋白尿を減らす方向に働きます。同じ圧の変化はろ過量にも影響し、とくに脱水などで腎臓へ届く血液が少ないとGFRが下がることがあります。また、アルドステロンの作用が弱まるとKを排泄しにくくなります。CrとKを確認する理由を、ろ過の変化とK排泄の変化に分けて考えます。[2, 3]

RAS阻害薬の開始・増量後には血圧、Cr、Kを確認します。KDIGO 2024では2〜4週以内の確認を示し、腎機能やK値に応じた対応を求めています。Crが少し上がっただけで機械的に中止するのでも、上昇を全て許容するのでもありません。上昇の程度と経過、脱水や併用薬などを再評価します。[3]

蛋白尿を減らせば、薬は重ねるほどよいのか

ACE阻害薬とARBはいずれもレニン・アンジオテンシン系を抑えますが、この二つの併用はCKDで避けます。蛋白尿が減るという中間的な変化だけで、患者にとっての利益を判断できないためです。急性腎障害や高K血症などの害も含めて評価する必要があります。[3, 5]

降圧目標が同じでも、下げ方は同じではない

2026年の日本腎臓学会ステートメントでは、糖尿病・蛋白尿区分を問わず、原則として
診察室血圧130/80 mmHg未満、家庭血圧125/75 mmHg未満を目指します。ただし、糖尿病を伴わないA1では診察室血圧140/90 mmHg未満を中間目標とするなど、慎重に進めます。75歳以上も年齢だけで一律に分けず、腎機能、日常生活動作(ADL)、心身の予備力が低下した状態であるフレイル、症状に応じて個別化します。[4]

ここは「全てのCKD患者で厳格な降圧の腎保護効果が同じ強さで証明された」という意味ではありません。目標値が整理されても、集団ごとの根拠と忍容性の違いは残ります。昔の試験問題を読む際には、出題当時の推奨と現在の推奨を混ぜないようにします。

115A51:第一選択を優先することと、禁止することは違う

第115回医師国試A51は、高血圧と尿蛋白1+などを示す高齢者について、誤った説明を選ぶ問題です。公式正答はdで、サイアザイド系利尿薬を第一選択にできないとする説明が誤りでした。[7]

この問題を「蛋白尿があるなら利尿薬は禁止」と覚えると、推奨の意味を逆にしてしまいます。尿蛋白の定量・慢性性・腎機能・体液量などの条件を確かめ、優先する理由と使用できない理由を分けます。公式資料で確認できる正答と、その理由を考えるための説明を区別して読みます。2021年の出題と2026年の推奨も区別して読みます。[1, 4, 7]

確認問題:理由まで説明できるか

問1 尿蛋白30 mg/dLなら、1日の排泄量は300 mgで確定?

確定しません。300 mg/日になるのは、一日を代表する濃度が30 mg/dLで、尿量が1 L/日とわかっている場合です。随時尿の濃さだけでは一日の量は決まらず、UPCR・UACRなどで確かめます。

問2 蛋白尿があるCKDなら、ACE阻害薬とARBを重ねればよい?

重ねません。蛋白尿を減らす作用だけで利益を判断せず、急性腎障害や高K血症などの害を評価します。優先する薬を選ぶことと、同じ系を二重に抑えることは別です。[3, 5]

補足:eGFRとG区分を読む

成人の日本人のeGFR(Cr式)
= 194 × 血清Cr⁻¹·⁰⁹⁴ × 年齢⁻⁰·²⁸⁷
女性では、さらに × 0.739
単位:mL/分/1.73 m²、血清Cr:mg/dL

G区分を円の目盛で整理する。境界は90、60、45、30、15。面積は患者数や数値の幅を表さない。

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図2 G区分の境界を、円の目盛で押さえる

60、45、30、15の境界で区分が変わります。60.0ならG2、59.9ならG3aです。15.0ならG4、14.9ならG5です。境界近くの小数値を整数に丸めてから区分を決めると、分類が変わってしまいます。

例えば76歳女性でCr 1.0 mg/dLなら、計算上のeGFRは約41 mL/分/1.73 m²です。数値の区分はG3bに当たりますが、この一回だけで慢性か急性かはわかりません。以前の検査、経過、画像などから慢性性を確かめて初めて、CKDとして位置づけられます。 Gの区分を決めることと、異常が慢性的かを確かめることは、別々に必要です。

発展:食事と腎保護薬も、目的と対象条件を分ける

血圧と体液量の管理は、薬と食事の調整を組み合わせて考えます。腎機能が低下すると食塩・蛋白質・カリウムなどの調整が必要になりますが、全てを減らすほどよいわけではありません。食事摂取不足で体重や筋肉が減れば別の不利益を生むため、エネルギーの確保も一緒に考えます。[1, 3]

表2 食事の「何を守るための調整か」を分ける
項目主な目的と判断材料
食塩血圧・体液量の管理。日本のCKD診療では1日6 g未満を基本に、低栄養や脱水も考慮する。
エネルギー必要量を確保し、体重・活動量・栄養状態で調整する。蛋白質制限と同時に不足させない。
蛋白質進行度と栄養状態で調整する。KDIGO 2024では成人G3〜G5で0.8 g/kg体重/日が目安だが、フレイル・サルコペニアでは一律の制限を避ける。
カリウム血清K、食事内容、薬、便通、アシドーシスなどを合わせて評価する。腎機能区分だけで全員同じ量に制限しない。

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例えばG4でKが高く、Kを多く含む食品を大量に摂っているなら、食事内容の調整は重要です。しかし「G4になったら全員、野菜も果物も一律に厳しく制限」とは言えません。高K血症の既往や現在値、利用されやすいKを含む加工食品、代替塩の使用などまで確かめます。[3]

ここまでは、血圧をどの薬で、どこまで下げるかを考えました。CKDの治療では、血圧の数字に加えて、腎機能低下や心血管病を減らす利益も確かめます。次の薬も「同じ腎保護薬」と一括せず、どの患者に、何の利益が示されたかで読みます。

SGLT2阻害薬は、血糖以外の利益と対象条件で読む

SGLT2阻害薬は糖尿病治療薬として登場しましたが、血糖低下だけでは説明できない腎・心血管への利益が示されてきました。例えばEMPA-KIDNEY試験では、一定のeGFR・アルブミン尿の条件を満たしたCKD患者を対象に、腎疾患進行または心血管死という複合評価項目が減少し、糖尿病の有無にかかわらず一貫した結果でした。[6]

このため「糖尿病がないから使わない」とは限りません。一方、「CKDなら全員、どのSGLT2阻害薬でもよい」とはなりません。eGFR、アルブミン尿、心不全、使用する薬の適応を確認します。脱水、性器感染、ケトアシドーシスなどに注意し、手術・重い急性疾患・長時間の絶食では休薬を検討します。低血糖はインスリンなどの併用も含めて評価します。[2, 3]

MRAは同じ仲間でも、根拠と適応を分ける

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は一つの薬ではありません。スピロノラクトンやエプレレノンと、非ステロイド型のフィネレノンでは、確認されてきた利益や対象患者が異なります。KDIGO 2024は、2型糖尿病を伴い、RAS阻害薬を最大忍容量まで用いてもアルブミン尿(ACR 30 mg/gCr超)が持続する成人について、eGFR 25 mL/分/1.73 m²超かつ血清Kが正常という条件で、利益が示された非ステロイド型MRAを提案しています。フィネレノンがその選択肢です。開始後もKを定期的に確認し、実際の処方では国内の薬剤ごとの適応・開始条件と照合します。[3]

心不全での使用経験を、そのままCKDの全薬剤へ移さず、薬ごとの対象と安全条件を確認します。共通して注意する害は高K血症です。

参考文献

記事の根拠や詳しい内容を確認できる資料です。

  1. 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」第1・2・3・8章。血圧目標は文献4で更新。
  2. 「CKD診療ガイド2024のエッセンス」日腎会誌. 2025;67:205–210.
  3. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of CKD. 第1・3章.
  4. 日本腎臓学会「慢性腎臓病(CKD)患者の血圧管理に関するステートメント」2026年6月25日.
  5. VA. Study guides treatment of high blood pressure in diabetic nephropathy. 2022年更新の研究紹介。原著:Combined Angiotensin Inhibition for the Treatment of Diabetic Nephropathy. N Engl J Med. 2013;369:1892–1903. PMID:24206457.
  6. EMPA-KIDNEY Collaborative Group. Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2023;388:117–127. 抄録.
  7. 厚生労働省. 第115回医師国家試験A51:問題(冊子34頁)および正答A051D。2021年。

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